数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

高校卒業後

2024-01-24 14:58:53 | 読書
 同級生の友人の誕生日に「おめでとう」とメッセージを送ったら、お互い高校卒業して50年になると言われ、ふと時間を考えてみました。私の高校3年生の時点から50年前は大正時代で、アインシュタインが来日したころでした。書籍でしかその時代は知らなくて、終戦までの20数年だけでも日本の近代史の中で、激動の時代という印象があります。戦後の中で、私が生まれてから高校卒業時点までは、日本のいわゆる高度経済成長の時代です。「もはや戦後ではない」と経済白書で言われてから、第1次オイルショックまで。さらに高校卒業してから50年という時間の長さを思う中で、日本の戦後史も少し勉強してみたく思い始めました。
 自分が生きていた時代は、実体験として記憶があるので、歴史と意識はしていなかったのです。歴史とは自分が生きていなかった時代のことだと思っていましたが、自分が年を取ることで自分が生きていた時代も歴史として考えてみたくなりました。
 大学入試でも、いまだに自分の入試のことは記憶が鮮明ですが、一つの歴史としてとらえてみることも面白いと感じました。振り返ってみて、戦後史に関しては、あまり本も読んでいなかったので、今回少し読んでみようと買った本が、次の本です。
 駿台予備学校の先生が予備校の講義をベースに書かれた本で、大学入試を意識した本で、バランスが良く、また文化史などもきちんと書かれている本で非常に読みやすい本で、読み間違いやすい人名等にはフリガナが振ってあり助かります。同じ著者の本ではこの本の後に出版されてはいるのですが、以前に読んだことがある本に
がありますが、同じような理由でこの本も読みやすい本です。福井氏は駿台予備学校(予備校とは言わないのですね)で教鞭をとられていますが、同じ日本史で私の受験生のころには、
という本格的な日本史の参考書はありました。もっともこの本が出版されたのは私の受験が終わった時で、使うことはありませんでしたが、この著者の安達氏の学兄である金本正之氏は当時の駿台の日本史では人気のある講師の一人でした。
 ところで、この出版社の研文書院は今はなくなりましたが、私の受験生のころは俗に黒本とその後呼ばれることになる、「大学への新数学」という黒い表紙の本が本格的な数学の参考書として定評がありました。当時の本はありませんが、その後の黒本は、私が数学を教えるようになってからも参考にしておりました。

最初のころの著者は、数学では藤田宏先生、中田義元先生、根岸世雄先生でしたが、東大の学生サークルで「東大文化指導会」という名のもとに、東大受験生のための模試などを手掛けており、そのメンバーだった学生がその後大学の先生になって、この参考書の著者になっていました。藤田先生は東大理学部数学科の教授で、理学部長も務められた世界的な解析学の権威です。また、中田先生は東京理科大、根岸先生は東京薬科大学の教授でした。一方、中田、根岸両先生は、駿台で教鞭も取っておられ、私の受験生のころは、駿台の数学ではもう一人の野沢先生を含め中田、根岸、野沢の頭文字Nをとって、3Nと称して有名でした。最近出版された

にも、この駿台の先生に関する記述がありますので、参考になります。また、その後黒本の著者に名前を連ねている数学者の長岡亮介先生は、その藤田先生の弟子にあたります。
 私の受験生のころの参考書の著者は一般には名前だけで、実際の執筆者は別にいて、名前だけを貸している場合が多かったようでした。事実、当時チャート式数学の著者であった京大のある先生が、実は私の1回生の時の微積分の担当でしたが、実際にお聞きした話では、名前だけ貸していると、本人が言っておられました。しかし、研文書院の黒本はそこに書かれている著者が実際に書かれていた本である点でも、信頼のおける出版社であったと言えます。今は、大学の先生が受験参考書を書くことは少なく、予備校の先生が書くことが多くなってきていますが、本格的な参考書はほとんど見られなくなっているのは残念です。
 高校の参考書のチャート式に慣れ親しんできた受験生が大学に入って、急に本格的な数学書の書き方に戸惑うことから、チャート式のような書き方をした大学の数学書が出版されるようになり、結構売れています。それが以下の本です。
青い表紙の方が、受験参考書の青チャートを意識してその記述の仕方と同じスタイルです。白い方は、その理論的なところを補うスタイルで書かれた本ですが、著者の加藤文元(ふみはる)先生は執筆当時は東工大の教授で、現役のバリバリの数学者がチャート式を意識して書かれたので、びっくりしましたが、内容的にはレベルは低くはなく、その点でも青チャート式を意識しているかもしれません。青チャートを使いこなしていた受験生がそのまま大学に入って、大学1年生で習う微積分と線形代数の参考書という狙いになっています。大学数学の本が読みにくいと感じる大学生にはまさに助かる本だと思います。その点でも、著者の加藤先生は教育的な視点でも、これまでも啓蒙書もたくさん書かれており、その視点からも尊敬できる先生ですね。最近の本では
が一般読者向けに書かれていますが、これまでも、
などを書かれており、私より若い年齢の数学者で、啓もう活動にも積極的にかかわられており以前から注目していました。どうも定年前に東工大を退職されて、新しい仕事をされているようですね。加藤先生は大学の後半から生物から数学に転向されて、素晴らしい業績を上げられているようで、IUT理論の紹介にも積極的に関与されています。



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