大学を卒業して,通信機メーカーへ就職したのですが,その後公務員,そして郷里三重で高校の数学教師になって,その後予備校の数学教師に.そんな自分ですが,最初に就職を考えたとき,スポーツ新聞社への就職を密かに頭に描いたことがありました.大学での専門に拘らなければ,自分が一番好きなのはスポーツでした.小学校ではソフトボール,水泳など.中学では団体競技ではなく個人競技をと,卓球を選びました.そして大学まで卓球を続け,周りはあまりスポーツと縁のない仲間が多く,本格的にスポーツを話題にすることもない環境でしたが,根っからのスポーツ好きの自分の中では,スポーツに関する仕事ができれば,趣味と実益そのものという思いがありました.
結局転職して,高校の数学教師になったのも,部活の卓球部の監督として選手を指導したい,そんな素朴な思いがあったからです.そんな思いは時として,スポーツのノンフィクションに惹かれることがこれまでもありました.好きな作家には,山際淳司.私の本棚にも,何冊かその作品を見ることができます.
久しぶりに,スポーツのノンフィクションを読みました.最近,硬いものばかり読んでいたので,気楽に一気に二日で読めました.それが表題にもある,
です.落合監督の数年間を何人かの選手を通して,垣間見ながら,人間落合博満に迫る作品です.私より一つ年上の落合を,若手のスポーツ新聞記者が取材しながら,自らの成長の歩みを監督落合を鏡にしながら,必死にその真相に迫ろうとする作品ともいえるでしょう.ときには,私自身が卓球部の監督としての自らの生き様や姿勢に監督落合をだぶらせながら,そして若手の記者の成長を監督落合の取材という過程で伝えられる内容に感動してしまう自分でした.忘れてしまっていた何かを思い出させてくれる,そんな作品です.
読み手の生き様によって,この本の理解の仕方も変化すると思われます.ぜひ読みながら,自らの人生を照らしながら思い出してみると目に涙する,そんな時間を持てるかも.そんな本のように感じましたので,内容は各人の読み方,生きざまに依存して楽しんでほしいですね.