数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

東京時間旅行

2020-10-22 17:33:28 | 読書
 以前、東京旅行の手記を書いたが、未完のまま今に至っている。鹿島茂「東京時間旅行」を読みながら、自分の東京旅行を振り返りつつ、自分が東京に持っているイメージを再確認したのです。

著者の鹿島氏は、私より5歳年上の、いわゆる団塊の世代の最後の世代かともいえます。東大紛争をもろに経験した世代で、私の世代からすると「すごい世代」という印象があります。何がすごいというと、そこまで国を考え自らをある意味犠牲にして国の将来を考えていたというか、今の時代、自己を顧みずそういう行動を起こせる人は少なく、特に若い世代、大学生にはその意識や気概も見受けられないことに、この国の将来に何かしら不安を覚えるのは、私だけでしょうか。

 最も著者はノンポリと自称してはいるものの、そんなノンポリでもデモに参加していることが、隔世の感があります。面白いのは、東京のいろいろな側面からその歴史的な考察から始まり、東京の流行のラーメン考まで、多様なジャンルにわたり、私の嗜好に刺激を与えてくれる内容です。

 著者の心の地元の神保町と東京オリンピックから始まり、丸善のことなど私の思いを共有させてくれるテーマに引きずられます。同じ趣味の先輩から東京旅行を指南される感じで、どのテーマの底辺でも共通項がある印象です。読み始めると引きずり込まれる、その内容と読んでいるというより、話を聞いてしまうという印象で、毎回新しいテーマに新鮮味を感じます。書かれたときから10年以上時間はたっていますが、私の世代からすると生きてきた時間からしても、10年は長い時間ではないので、十分視野に入る範囲であり、逆にちょうどいいくらいの熟成期間を過ぎての味わいある文章という感じです。