mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

与謝野晶子和歌 【さくら草】

2014-05-26 08:47:30 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
この頃のわが衰へを美くしと見るすべ時にうち忘れつつ


水色とみどりと紅の三つの色ほのかに残る心なりけり


折ふしは他界を覗き折ふしは紅友染となれるたましひ


花かをり鼠ことこともの噛める春の夜明のなまめかしけれ


文書けながなが書けと促しぬうすくれなゐのわが桜草


やはらかきアカシヤの葉の思はるる小雨の日かな東京にして


金銀の虫の啼くごと音を立つるオペラ通りの秋の夜の靴


行く春の夜明に近き庭を吹く風は樺茶のつばさなるらん


紅鷺の三つ四つ立ちて水草の葉にしら雲のうつる夕ぐれ


皿に剥く林檎の色とアカシヤの若葉の色と似てかなしけれ

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