mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

与謝野晶子和歌 【さくら草】その二

2014-05-26 08:48:50 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
その恋は横堀川の柳よりつばめの出づる趣に似し


四月来ぬ紺のはんてん着るつばめ憎きことなど云ひそなつばめ


紺青のわがかきつばた夕ぐれを深く苦しくいたましくする


うす色の牡丹の花のちるけはひ身に覚えつつ文かくわれは


水草に春の小雨のそそぐかな忍びてわらふ人のごとくに


散らす時桜はあまりましろしと寒げに云へる夕ぐれの風


大ぞらの灰がかりたる下に散る身も世もあらずかなしき桜


春の朝春のまひるも夕ぐれも淋しさつづくおのれとなりぬ


かろやかに羅のごと君はまつはりぬ腕の上に心の上に


わが君に恋のかさなる身のごとし白き薔薇も紅きさうびも

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