僕はたかが愛に迷い
そしてたかが愛に立ちどまらされても
捨ててしまえない
たかが愛
傷つきあったさよならだけが
形に残るものだとしても
たしかにあった
あのときめきが
いつか二人を癒してくれる
あぁ この果てない空の下で
独りでも寂しくない人がいるだろうか
たかが愛(抜粋)
詞:中島みゆき
俺は、その言葉を待ち構えていた
てぐすねひいて
「戻って来られたら連絡するね」
未練たっぷりの甘い台詞を並べたてた後で女が言った
特に鎌倉を選んだわけではなかった
紫陽花を見たいという女の希望を受け入れただけの事
それが東慶寺だった
映画のように雨が降り白い傘で顔を隠した女は別れ道を歩いていった
女の思いが錯覚を起こし妄想に変わったのだろう
俺を穽に嵌まらせたかったのか
たかが愛に佇んだのか
寂しさを演ずるには十分過ぎる美しい女優だった
その後、女は
この世
の幸福を手に入れ幻想のなかで死んだらしい
二年が過ぎた
俺に
その時の傷痕はない
俺のなかには何年もまえから俺の女が棲みついていて
時折
狂気の如く暴れ深い蛇の痕跡を残す
愛など受け入れない魂が蝕まれて崩れていく肉体を待っているのだ
他の傷などかすり傷なのだろう
二年どころか白い傘を見送る時間に消えていた
今宵は月が綺麗だ
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画像:一部@BIackMagicさんより
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