建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

家は沈んで当然?

2015年03月08日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

この仕事をしていると、家(戸建て)が沈んだ、傾いた、という事件を扱うことが非常に多いです。
自嘲気味に「沈む弁護士」とか言っています。

地震による液状化や擁壁転倒など、事故に当たるようなものだけでなく、
新築から何年かでジリジリと…といった類のものも多いものです。

地盤は、圧密沈下といって、
盛土や建築など新たに荷重をかけることによって、土中の水分が徐々に抜けるなどし、
数か月から数年に渡り少しずつ沈下が生じると言われています。

均等に沈下する「等沈下」であれば、あまり問題になりませんが、
地中の土質分布も建物の形状も均一ではありませんので、不均等に傾くことが多い。
いわゆる「不同沈下」です。

液状化の話の時にも書いたように思いますが、
5/1000辺りから住んでいて傾斜を感じるようになり、
10/1000程度の傾斜に至ると、めまいなど身体の不調を訴えるようになるそうです。

品確法の告示との関係から、3/1000以下の傾斜で瑕疵を認定されることは少ないですが、
6/1000を超えると、ちょっと「瑕疵ではない」とは言い難い。
瑕疵担保期間を超えている場合でも、不法行為責任を問われることもあります。

こうした沈下が生じないために、幅広の布基礎やべた基礎にしたり、
地盤補強(柱状地盤改良、鋼管杭)を行うのですが、
なにぶん、戸建て住宅で行うSS試験(スウェーデン式サウンディング試験)では、
あまり細かいことまでわからず、沈下リスクが残ることが多いようです。
(SS試験のやり方にも問題があるという指摘もあります)

さらに、地域の特性として、沈下が避けられないような場所も少なくありません。
既存の住宅地であれば問題はあまりありませんが、
傾斜地、水田、川の近く、埋立地…地盤に問題がありそうな場所は、日本国中限りなく。

先日訪れた場所も、海から広がる見渡す限りの水田地帯でしたが、
地中20mくらいまで支持層がありません。
水田を埋めて造成する盛土の段階でも相当量沈むそうで、
しかも造成の中心(重心)に向かって沈むので、外周部分はどうしても傾いてしまうそうです。

そうなると、家が沈まない、ということはもはや「当たり前」ではなく、
確率の問題という気もしてきます。

そういえば、昔の家…おばあちゃんちとかは、普通に傾いていたような気もします。
パチンコ玉を転がして文句をいうのは、少なくともテレビとかでは止めて欲しい。
(せめてゴルフボールですね)

戸建ての地盤問題については、「建築技術」3月号の特集をご覧ください。
なかなかスゴイ特集になっています。
豆蔵もちょびっと参加させてもらってます。
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