2020年5月18日に発行された日本経済新聞紙の朝刊中面に掲載されたコラム「核心」の見出し「ウィズ・コロナ時代の備え」を拝読しました。
このコラムのサブ見出しは「『命と経済』両立戦略を」です。今の日本は、ここがあいまいなままです。
この話に入る前に、おそらく1週間後には、首都圏と関西圏でも緊急事態宣言が解除されそうです。「これを待っていました」という声も多いようです。
緊急事態宣言の解除は、今のままでは3月20日ぐらいの時点に単に戻るだけです。多くの方が“3密”を避けた成果によって、感染者数が下がっているだけです。
東京大学の試算では、すぐに感染者が増え始めます。
さて、本論です。このコラム「核心」の見出し「ウィズ・コロナ時代の備え」では、「ポストコロナの時代が一足飛びできるわけではない」との主張が始まります。
「ウィズ・コロナ時代」の局面は、5月4日に専門家会議の尾身茂副座長は「私たちのような公衆衛生や感染症のプロと経済のプロ」が政府に「両方を見た上で最終判断をしてほしい」と伝えたそうです。
感染症封じ込めだけを追いかけ、経済活動をいつまでも休止するわけにはいかないからです。倒産や失業が増えれば、経済的な困窮は国民の健康や命を損ねることになるからです。
命と経済の二兎(にと)戦略の代表例は米国ハーバード大学の倫理センターが公表した「パンデミックに強い社会への道」という提言です。
この中身を要約すると、1日当たりに(PCR検査や抗体検査などの)500万件以上の検査態勢を確立し、社会基盤を担う職場を順に正常に近づけていくという発想です。
第一段階では、エッセンシャルワーカーとして、医療従事者や食品スーパーの従業員、電気や水道などのライフラインを担う担当者、警察や消防などの担当者を挙げています。
こうした大量検査を軸に、マスク着用などの習慣と接触追跡アプリケーションなどの活用によって、「感染爆発を招くことなく、経済を来年8月には回復軌道に戻せる」とシナリオを語ります。
米国では、これに伴う経費を2年間で500億から3000億米ドルと見積もっています。
日本の慶応義塾大学の教授も「医療目的に加えて、社会の不安を取り除くためにも、大量検査と隔離態勢を活用すべきだ」と述べています。
日本政府は、大企業向けに政策投資銀行が1000億円を、中小企業には500億円規模の資本注入を計画しています。企業の事業不振・倒産を避けるのが狙いです。
でも、日本には中小企業は約160万社あるとみられています。資本注入も大事ですが、ここで働く従業員と経営者の感染防止策も不可欠です。
欧米に比べて、日本だけが「ウィズ・コロナ時代の検査態勢を確立への」プランは“原案”だけでも出ていません。日本はかなり遅れています。これは新型コロナウイルス感染と同程度に怖い話です。