たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

思い出に残る山(36)八海山  新潟県

2019年07月28日 | 心に残る思い出の山

 H8年9月

六日町一帯は朝霧に沈んでいた。その霧の中に突入する様にICを降りるとさすが米所 

右も左も田園が広がり稲穂は黄金に色付き始め、もうそこは秋の訪れを見せていた

早く着きすぎてしまいゲート手前の駐車場で時間調整 待ちきれずに新開道を歩き始めている者もいる

背後にこれから登る恐竜の背の様な岩稜が厳めしく私達を見下ろしていた

7時にゲートが開き8時、やっと動き出したゴンドラで4合目へ

今日は降水確率0%の予報が出ている、そのせいか はたまたこの山の人気の高さかかなりの人出だ

  ゴンドラを降り階段を登りあげると樹林下の穏やかな道が暫く続いた

さすがこの時期、咲いている花も少なく紅葉にも届かない中途半端な季節に寂しさは有ったが

こんなに早く八海山に登る事が出来た事に浮き足立ち心は子供の様に嬉しかった

この辺は誰もが一番楽な所 先は長いぞ 慌てるな』←5合目である

しかし暖勾配だった道も此処まで  次第に勾配が増しゆっくり歩いても汗が噴き出した

段々登りがきつくなる 見晴らしいいから一休み』←頭を隠した越後駒中ノ岳が見えた時に

木に掛けられていた標語だ 私達は飴を口に含むと又、苦しい登りに立ち向かった

 女人堂 9時10分到着 女人禁制だった頃、女性は此処までしか入れなかった

時代は流れ今は誰もが登れる様になったが、それにしても女性を不浄者扱いは余りにも失礼な事である

真新しい避難小屋前には一際大きな石碑があり沢山の蝋燭を点す燭台が置かれている

白足袋姿で下って行った男女や鈴を付けたお遍路さんが居たりで今でも八海山は信仰の色濃い山であった

目の前にはこれから超えねばならない薬師岳がドッカと腰を据えている

駐車場から見上げた時に見えた一番左の円頂だ

標高差、優に300mは有りそうだ 一瞬、登るのを躊躇ってしまう様な高さである

 

 

 ー略ー

増々暑くなってきた中、意を決して腰を上げる 先ず祓川まで緩く登ると、いよいよ浅草登り

七合目、此処は誰でも辛い所 ここから意地の見せどころ』←標語が語りかける

私達は汗を拭いながら階段状の道を一歩一歩登って高度を稼いだ

赤土が剥き出しになった登路は良く滑る 岩稜の登りになるとなお始末が悪く備え付けられた鎖は泥だらけ

滑らない様に笹を掴み慎重に登って漸く薬師岳に着いた

行く手にはハツ峰の基部に建つ千本槍小屋が見えている

緩く下って登りあげると小屋前にはたくさんの登山者が浅草登りに疲れを癒していた

ここからが、いよいよ八海山の核心部だ

小屋から僅かで長い鎖を伝い稜線に出ると木々の丈も低くなり岩石だらけの景色に変わった

足元にはナナカマドの葉が色付き始め

この分だと10月に登る以東岳はいいかもしれないと嬉しい期待を持たせてくれた

左に大きな丸石が有り地蔵岳の標識を見たせいか別方向から眺めるとお地蔵さんの頭に見えなくもない

奥に地蔵さんが2体  いい顔をしている

私達はここでビールを飲みしばし安息の時を過ごした

 地蔵岳より相変わらず頂を雲に隠した駒ヶ岳を臨む

目を左に移していくと千本桧小屋の遥か下方にゴンドラ乗り場が

そのまた左には六日町の田園が有り魚野川が高速道路と絡み合いながら、うねうねと横たわっていた

それらを囲む山々は上越国境の山々、巻機山や谷川連峰もその中にあるはずである

行く手に次のピークが待ち構えている  そろそろお腹も空いてきた

「とにかく大日岳まで登ろう」と次のピークを目指す

しかし大日岳と思ったピークは不動岳  次こそと思って着いたピークは七曜岳

そこから先にまたピークが待ち構えている

 

 

(摩利支天の下り)

五丈岳白川岳摩利支天剣ヶ峰と鎖で登降を繰り返し漸く大日岳の基部に着いた

クライマックスは垂直の岩登り  先ずはアルミの梯子を登り次は鎖を伝い頂上へ

今までもそうであったが特にここは足場が悪く気を許すと下は千尋」の谷  

踏み外せば間違いなく人生の終わりだ

 ー略ー

周囲の景色に変化は無かったが対岸の駒ヶ岳との奈落に一年中消えない薄黒く汚れた雪が

今もなお残っている  そんな事はどうでもいいよとお腹の虫が催促し始めた

とにかく素晴らしいパノラマだ  

そんな景色を堪能しながら草地へ移動し最高に贅沢なランチタイムを取る事にした

そこへ女性二人が登って来て足元の草を引きちぎり匂いを嗅ぐと

「これ当帰だわ、ヒステリーに効く薬よ」と話している  私達もその匂いを嗅いでみた  

鼻を突く強烈な匂いだ  風呂に入れたり煎じて飲むと精神が安定するらしい

そんな説明を聞いている内、ずっと雲に頭を隠していた中ノ岳駒ヶ岳が全容を現した

それとばかりにカメラを向ける 撮り終えた所でフィルムが切れた

「ここは直角になっているので、ちょっと嫌な所だけど鎖をしっかり握って一歩降りたら

足場を確保する場所を見つける為にも怖がらずに体を岩から離して」と

先ほどの当帰の女性が連れの年配の女性に適切な指示を与えている声が聞こえた

そろそろ私達も帰る時間が近づいた様だ

全神経を集中して一歩一歩足場を確保し月日の池分岐まで戻った

最初は帰路も稜線歩きと決めていたのだが鎖の多さに飽き飽きした私達は此処から

千本槍小屋への巻道を下る事にした

稜線上からの眺めと違い円筒の塔が重なりながらそそり立つ様は他国の殿堂を思わせる

しかし、こちらの道を選んで良かったと思ったのも最初だけ 此方も鎖の連続だった

道の右側斜面に手向けられた萎れた菊の花が胸に沁みる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ー略ー

・・・・・・・・私達は快調に駆け下りゴンドラ乗り場にやって来た

たった今まで綱渡りして来た稜線が遥か高くになった

激しいピストンと鎖の連続・・・久し振りの緊張が嬉しかった

六日町に戻り町の人に聞き聞き私達は白百合荘の風呂で汗を流したのでした

 

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16 コメント

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八海山登山 (イケリン)
2019-07-28 18:07:28
たかさん
調べて見ると、この八海山は標高1778mと標高はさほどでもないようですが、
中々どうして、険しくて危険と隣り合わせの山のようですね。
特にこの鎖場の様子には、写真を見ただけでも足がすくみます。
ご主人とたかさんの余裕の笑顔。修羅場をくぐり抜けてきた人の自信の現れですね。
スリリングな岩場の連続に、こんな山もあるのだと驚きを隠せません。
山行きの記録を見ても、この山が簡単には登れない山であることがわかります。
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Unknown (錫杖)
2019-07-28 18:56:39
わあ〜!

思わず八海山だあと見ました。
摩利支天の下りの鎖場


私も写真撮りましたよ
私が登ったのは1999年でした。

銀塩の懐かしきアルバム
何もかも私の思い出と被ります。
泣けて来ました。
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いいな、いいな (Fs)
2019-07-29 01:34:18
越後駒と中ノ岳は登りましたが、八海山はとうとういけなかった(T_T)
行きたかったです。今も悔やんでます。
険しいし、鎖場の連続なので、今はもうあきらめています。

悔しいので、今は「八海山」を飲んでます。美味しいですね。我が家の近くの蕎麦屋さんで常備しています。

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おはようございます。 (ベル)
2019-07-29 09:25:29
見るだけで無理って思える場所です
車で行けるとこからの景色しか見たことの私にとっては未知の景色です
登った山手書きで細かく記録してるんですね
行ったとこぐらい書かなくても細かく覚えてるって
思ってた私は今になって後悔してます
行った場所すら記憶が薄れてます(笑)
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イケリンさん、こんにちわ (たか)
2019-07-29 09:42:07
そうなのです、標高は驚く程では無いのですが八つの岩峰が横にズラリ それを一つ一つクリアしていかなくてはなりませんので、まるでブロック崩しゲームをしている様な山でした。 とにかく飽きるほどの鎖の連続ですので気が抜けない事は確かです。
お終いから4枚目の写真は梯子の後、長い鎖に変わり頂上直下3m位からまた梯子が設置されているのですが、その最後の梯子が“さぁ着きました”と言う所でグラッと揺れるのです。鎖も補助に付けられていましたが、ビクッとしますよねぇ。

八海山は新潟方面に行く時には高速道から良く見える山です。今は“もう登れないね”が口癖となった懐かしく見上げる山になってしまいました。
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錫杖さん、こんにちわ (たか)
2019-07-29 09:55:51
1999年と言いますと私が登ったのが1996年でしたから、ほぼ同じころ登られたのですね。
当時、パソコンは有りませんでしたのでアルバムに貼っては登山記を添える事が私の楽しみでした。
アルバムの冊数も半端では無くそろそろ整理しなくては思った時に主だった山だけでもCDに残す事を思い立ち、始めたのが「思い出に残る山」でした。
その一つ八海山を錫杖さんも登られたと聞き何だかとても嬉しくなってしまいました。 その時のお写真、是非 見せて頂きたいですね。
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Fsさん、こんにちわ (たか)
2019-07-29 10:38:17
Fsさんも沢山の山を登られてますよね。
何時か登ろうと思っていてもチャンスを逸して残ってしまう山って誰でも有りますね。私にとって今でも残念に思う山の一つが剱岳でしょうか。

登れなかった山を一気に飲み込んでしまえと「八海山」とは(爆笑)
そこで私も「剱岳」を懸命に探しました、有りましたね! 八海山よりグッとお安く「剱岳」 さっそく←行かなくては
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ベルさん、こんにちわ (たか)
2019-07-29 12:18:01
記録をしておかないと確かにベルさん仰る通り記憶が薄れてしまいますよね。 「△△山ではこんな事が有ったよな」  「それは○○山に登った時の事でしょ!」 そんな会話が家では日常茶飯事です。記録する事も無い雄さんですので数十年、時が経過してしまうと出来事がゴチャマゼになってしまう様です。

ただ、今はパソコンの時代になり本人は記録として残しているつもりでも後で見る事は殆ど有りませんよね。その点アルバムは優れ物だとつくづく思います。
偶には書棚から出して開きますものね。ただそれも私達が生きている間の事で後はゴミ。ではどうするか、抜粋してCDに落すしかないと思ったのが「思い出に残る山」シリーズでした。
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素晴らしい記録✨ (越後美人)
2019-07-29 16:52:44
まあ~すごい山登りですね~💦
ちょっと間違えれば転落の危機が!
すごい、すごい!の連続です。
よくこんな所を登って来ましたね。

八海山はよく聞く山ですし、上越新幹線から見える山ですね。
要所要所の標語に励まされますね。
七合目の「此処は誰もが辛い所、ここから意地の見せどころ」
こう言われては、後には引けませんね(笑)

こうして大変な思いで登った山の記録は宝物ですね。
私には到底出来なかったことなので「羨ましい!」の一言です。

無事下山されて白百合の湯がさぞ気持ち良かったでしょうね(^_-)-☆
返信する
越後美人さん、こんばんわ (たか)
2019-07-29 20:51:02
丁度、あのころ雄さんの仕事の関係で予定していた東北の山が潰れ、その後 友人に誘いを受けた雲の平も駄目になり、それから数日後
漸く一日休みが取れましたので、それでは日帰りできる面白い山をと探したのが八海山でした。八海山はずっと憧れていましたので、もしかして山の神様のお導きだったのかもしれませんね。
何方が書いたのかあの標語、登山者にとって大変、励みになります。 なかなか上手い表現だなと感心してしまいました。
そうですね、稜線がギザギザの八海山が上越新幹線の車窓から良く見えますね。 今では私達にとって二度と登れない宝の山となりました。
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