N ’ DA ”

なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

十枚山 1,726m

2021年06月19日 10時44分40秒 | 深田久弥
名もなき山とはいえ、登りがいのある山であった。
高度差1,300m。たっぷりした登りの分量である。

無風快晴の頂上から、雪をおいた富士山がきれいに見えた。

大沢の崩れは今に始まったことではない。
昔から有名である。
ほっておくと富士山の美しい形が崩れるというが、笑止な話だ。
くずれるものはくずれしめよ。
それならばまた別の美観が生じるだろう。
自然の摂理はデタラメではない。
1つの美の崩壊のあとには、次の新しい美を用意している。
自然の美観をこわすのはむしろ人工である。

疲れた、実に疲れた。
しかし力を出し切ったあとの快感があった。
ほかのスポーツでは、身体が苦しくなるとゲームを放棄することができる。
ところが登山では、どんなにつらくても頂上まで登らねば終わりにならない。
それからさらに下りがある。
われわれの平生の生活で、全力を出し切るという機会はめったにない。
途中でやめてしまう。登山はそれを許さない。
しかし当座はいかにつらくても、力を出し切ったあとのなんという快さ!

読者登録

読者登録