今年の冬の最大の話題作であろう「ノルウェイの森」を観てきました。
いつも映画を観た際につける★ですが、この作品に関しては、付けようがない。
映画だけで言うと★★☆程度かなぁと思うのですが、
やはり原作の個人的な想いがあるせいで、やはり★を付けたくないのです。
原作に関しての思いは後にして、まずは映画の話。
まず、前半は本当にバンバン話を飛ばしていきます。
原作を細部まで覚えている身としては、
ちょこっと出てくる同居人が、あぁ突撃隊ねぇとかクスッと分かるわけですが、
読んでない人、覚えていない人からしたら???でしょう。
そして配役の奇妙さ。
これは原作に思い入れがある場合は、往々にしてあるのですが、
菊池凛子は直子よりも緑向きだと思う。
菊池凛子で緑をやってほしかった。
直子は、もっと影のある女性なようなイメージでした。
さらに原作の独特のしゃべり方をそのままで撮っているせいで
非常に気持ち悪い会話になってしまっている。
ワタナベ(主人公)の言い回しをはじめ、独特の会話体が村上春樹のクールさを
出しているのだと思うのだけど、それをそのまま映像にすると
やはり気持ち悪くなってしまう。
学芸会の劇のような、観ているこちらが恥ずかしくなってしまうのである。
そんな原作を僕が初めて読んだのは小学校6年生の時。
塾の先生が紹介していたので、文庫版を買って読みだしました。
それはそれはいろんな意味(生について、死について、性について)で新鮮だった。
少し大人の世界を覗いた気分にもなった。
それは明るい未来とかではなく、深く濁った闇の中に、
少しの明りが見える、そんな光景。
どこか魅かれるものがあり(おそらく直子の存在)が繰り返し読み返すように。
幸い、当時、小学生だった僕にとって彼の文章は、非常に読みやすかった。
村上春樹の特に初期の3部作から「ノルウェイの森」までの主人公に漂うクールさが
僕のカッコいいの基準になった。
ひとりでいても全く気にしない。本を読む。音楽に詳しくなる。
世の中をちょっと斜めから見るけれど、実はもろい。
そんな人間。
そういう人間がカッコよく思えていた。
残念ながらこういう人間は、大衆受けしない。
小説の中でもそれは同じ。でもカッコいいと思っていた。
思春期にこの小説をはじめ村上春樹作品を多く読んだことが、
僕という人間の形成に大きくかかわったことは間違いないと今思う。
そういう人間が良いか悪いかは別にして。
追記:タイトルについて。
「ノルウェイの森」はビートルズの曲をタイトルにとっているのだけど、
原題は、「Norwegian Wood」。
「ノルウェーの森」ではなく「ノルウェイの森」にしたあたりが、
村上春樹の凄さだと思っていしまう。
「ノルウェーの森」だったらこんなに売れていなかったでしょう。