
★★★★
スタジオジブリ 高畑監督作品。
日本人ならみんな知っている竹取物語というネタのチョイス。
予告編で観たあのタッチでの長編映画。
多くの人が「山田くん」のような予感もあったと思います。
しかし監督自身が、これで2時間、魅力的にかぐや姫を描けると断言した通り、
素晴らしい出来の映画でした。
今まで刷り込まれてきた誰もが知っているかぐや姫像に
これほどまでに感情移入できるとは思っていませんでした。
古典には古典になるだけの理由があります。
例えば、翁が姫をより品位の高い人物と婚姻を持たせようと
頑張れば頑張るほど姫を苦しめる姿は、現代風に言うとベクトルの違いが生む悲劇を表していて、
鑑賞者に如何ともし難い感情を味合わせます。
また、それでも最後の別れの箇所では、育ててもらった両親に感謝を泣きながら訴えます。
その姿は、結婚式の新婦から両親への手紙のような感動を生みます。
人の心を掴むというのは、こういうことなのでしょう。
そうした古典にもともとある魅力を存分に引き出した作品でした。
かつて芥川龍之介が「羅生門」「鼻」「芋粥」など古典を題材に描き直したような、
古典を踏まえて、さらに現代の表現者としての見解を加えた姿を見ることができます。
例えば、ジブリらしいメッセージの要素が多分に加えられています。
「生きるために生きるのです」
「愛や楽しみや怒りや憎しみが溢れているこの世に中だけど、
それでも月の世界よりもこの世界に生きたい」
というメッセージは、多くのジブリ作品にある「生きることへの肯定」を
かぐや姫が心情を吐露させることで十二分に鑑賞者に伝わってきます。
今年は、ジブリ作品が2作品も公開される年でした。
宮崎監督はその芸術人生からの得たメッセージ的な映画「風立ちぬ」を作りました。
そしてこの「かぐや姫の物語」の高畑監督ももう70歳を超えています。
こちらもその集大成にふさわしい作品です。