maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

観梅の妄言-4 承の巻

2006-02-05 21:07:11 | 支離滅裂-迷想迷夢-観梅の妄言

<お断り>
例によりまして、記事の内容は特定の団体や個人とは全く関係ございません。
たまたま同名団体や個人が実在しておりましても、全くの偶然です。
アレレ?と思い当たられる方があってもそれは思い過ごし、決して貴方がモデルでは有りません。
まさかとは思うけれど、どんな勘違いをされるやも知れんのでお断りして置きます。
話の都合上一人称を使っておりますが、これは現実の私のことを書いてるんやおまへん。
あくまでも虚構、フィクションでございます。
ハックション!誰か噂してるんかいな?
</お断り>


さてピントを合わせて写そうとするんやけど、老眼のせいか中々ピントが決まらん。
よし合ったと思えば日差しが弱まって、改めて露出に頭をひねってるうちに又日が差して。
今度こそとファインダーを覗いたら、風で花が揺れてますねん。

風が治まったのに何時までしつこうに揺れてるねん?と思ったら花やのうて自分の身体が揺れてるんですわ。
ファインダーの中の揺れている花を、シャッター半押しで息を殺して見ていたら眩暈がして来た。
この「芳流閣」と名付けられた梅、緩い坂の途中に生えてまして、周りには春を待ってるギシギシやタンポポが生えてるんです。

他の花を傷めんように、枝の間に頭を突っ込んで不自然な格好で頑張ってたんで、つるっと足が滑ったんですわ。
アッと思った瞬間、写真機を放り投げずに庇ったのは天晴れケチの鏡。
それはええけど己の身を庇う事をコロッと忘れてた。
ズッデ~ンと物の見事に仰向けに引っくり返ってしもたんです。

一瞬目をつぶったらしく、目を開くと梅の枝越しの青い空が見えて「大丈夫?」という声。
柔らかい草の斜面やったんで別に痛いところも無し、どっこもどうも無い。
「うん、大丈夫、大丈夫。」
しかし、あの声はカミさんにしてはエライ若いで?
此処一番の緊急時用に若い頃の声を保存してたんかいな?

やがて視界に入ってきた顔を見て胆を潰した。
以前肝臓をいためて入院した前科があるから、人一倍胆が潰れやすいんですよ。
何で胆を潰したて、初めて会うた少女の頃のカミさんが心配そうに覗き込んでますねんで。

こらイカン、打ち所が惡うて胆や無しに脳味噌が潰れたか?
気を失うて幻覚を見てるんかも知れんぞ。
さもなければ、あっちゃ岸に渡ってしもたんかもなぁ。
何れにせよ、こういう時はともかく落ち着かんとイカン。

気を失うて夢を見てるんならばよし、もしも死んでしもてるんやったら、今更落ち着いてもしょうが無いねんけどね。
うろたえて三途の川にはまって、もう一回死んだりしたら、念が入り過ぎててアホらしいですやんか。
先ず落ち着くにはタバコでも一服して、とポケットから取り出して口に咥えたんですわ。
即「こんな所で煙草を吸うな!いうて相手に聞こえんように文句言うてたんは誰やったん?」とやられたね。

素直やから煙草をポケットに戻して、空を眺めてたんです。
「ほらほら、あそこ見てみ飛行機雲や!」
「ちょっと、そんなとこで呑気に納まり返ってんと、ええかげんに起きたらどうやのん?」
相も変わらず三つ編みのお下げを揺らしたカミさんが容赦なく言うんですわ。

ひょっとしたら、カミさんだけや無しに自分も若返ってへんかいな?ほんなら例え夢でも儲けもんや。
淡い期待で手を見たけれど何の事はない、還暦過ぎたオジンの手のまんまですわ。
「おい、オレを誰か判ってるんか?」
「しょうも無いこというてんと、早よう起きんと人が変に思うやんか」

寝っ転がってるんと、突然四十数才若還ったんとでは変の桁がちゃうわいな。
兎も角起きて手近な床机に腰を下ろし、家から持参のお茶を飲んだらちゃんと味がする。
もっとも、しょっちゅう総天然色テクニカラー、味付き匂い付きの夢を見るから、これだけでは夢や無いとも決められへん。

恥ずかしながら死んだ経験も無いねんから、死んだんかどうかの確かめようも無いんですなぁ。
しげしげと眺めても、やっぱり15歳のカミさんが目の前に居てますねん。
奇妙な事に着ている物は変わってない、体型が変わってないとこういう時は便利ですなぁ。
私はそうは行かんよ・・・。

改めて自分を見直したら、五体の感覚はあるし冷とうもなってない、どう考えても全く普通。
ま、感覚が有って、しかも苦しい事も無いんやから、仮に死んでたとしても一向に不自由は無いんですがね。
そうや、子供の頃によう見てた夢の中で、空中を平泳ぎみたいにして飛ぶというか泳ぐのんが出来たら、これは夢に決まりや。
高くも無く低くも無く、床上1.5mくらいの所をス~ッと夢で飛ぶのは快感でしたねぇ。
長らくあの快感を味わってないが、成長期にしか見られへん夢なんやろか?

まだ成長し切ってない部分があるんやけど、とんとあの夢を見せて貰われへんねぇ。
もしも夢ならもっけの幸い、一つ久し振りに飛んでみたろか?
立ち上がって幾ら手で掻いても、身体は温もったもんの残念な事に浮かびもせにゃぁ進みもせん。

横でその様子を見てたカミさんが、いかにも心配そうに「どうしたん、ホンマに大丈夫?」と聞いてくれるんです。
しかし、声に気色の悪い物を見ているような響きが混じってるで。
自分でも事態がどうなってるのかよう判らんのに、ホンマに大丈夫?と訊ねられても答えようが無いやんか。

しかし、周りの人はおばさんが突然少女に変身したのに気付いてないんやろか?
これがモスラにでも変身してたら、否応無しに気がついて大騒ぎになるんやろなぁ。
カミさんモスラに乗せて貰って、インファント島無料観光てぇのはよろしいなぁ。

いやいや、そんな気楽な事を考えてる場合や無かった。
「チョッと手ぇ見せてみ」
「何やのん急に?」と出した手は指の付け根にえくぼの出来る、忘れもせん初めて握ったあの頃の手やんか。
えっ、待てよ!結婚指輪してるがな。

「どうしたん?妙な顔して。顔色悪いよ、気分が悪いんやったらもう家に帰ろか?」
「おい、この指輪・・・」
「指輪が何?何時もの結婚指輪やんか」
え~!こら又何と、意識はそのまんまで身体だけが若返ってるのんか?
本人が気付いてないみたいなんが気に掛かるけれど、こんな嬉しいことがあってもエエもんかいな?

片一方だけが若返ってるというのんは不公平てな贅沢いうたら罰が当たる。
もぉ、こうなったら何でもええわ。
夢なら夢、死んだんやったら死んだで上等やんか。
45年間の思い出を共有してる幼な妻てなもんは、絶対手に入らんよ。
そう思えば儲けもん、一挙に気分がようなってしもたやんか。

どんな拍子で元に戻るやも知れん、そうなってから悔やんでも手遅れ。
自分の姿が自分で見えんのを幸い、せめて今の内は気持だけでも16歳の積りになって楽しもう。
死んだんやったらよもや生き返らんから安心(?)やけど、夢なら醒めんといてや、ムヒヒ、、、。

「そろそろ川の方に行こか?」
「もうエエのん?大丈夫?」
「大丈夫や、気分ようなった。」
大丈夫か、大丈夫でないか、どっちか判らん時には「大丈夫!」ということにしとこ。

しかし、カミさんやと判っててもドキドキするねぇ。
是だけ見た目の歳が離れていると、マゴを連れてるように見えるやろうねぇ。
そやけど、話してる内容や、仕草は夫婦やねんから、ドエライ狒々ジジイに見られてしまうかも知れんぞ。

そりゃぁまぁ、私にも狒々とまでは行かんにしても、ブタオザルかクモザルくらいの助平心は無いとはよう言わん。
いや、この際ハッキリしとくけど、ありまっせ、あらいでかいな。
そない力んで宣言する事も無いねんけど、いうても根が正直やからねぇ。

正直爺さんポチ連れて、敵は幾万ありとても、桃から、カラスが鳩ぽっぽ♪
と鼻歌混じりに竹林に差し掛かったんですわ。

2006/02/05

観梅の妄言-5


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