maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

51-BARRAR-06-U.S.A.1964-No.51(8/3)

2022-06-04 15:18:39 | 虚々実々-U.S.A.-1964

人間綾取り

ED のけたたましい、フオ~、ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッに起こされて、Gray Squirrel がガサガサ駆け回っているのを眺めながら早朝の森を見ていると、こんなことでお金を貰って良いのかなぁ?と思います。
昨夜、食堂の方で光っていた眼はアライグマかなぁ?少なくとも3,4匹分の目玉があったような気がします。
その左手の森の奥の方に、明かりがチラチラしていたのは何なんでしょう。
サイトは全部廻って場所がわかっているんですが、あんな方角にキャンプサイトは無かった筈です。
アライグマもタヌキの親戚みたいなもんですから、人間を化かすのかな?

それはそうと、忙しそうに走り回っている Gray Squirrel を、食料に困っている訳でも無いのに、何も殺して食べなくても良さそうな物ですが、昨夜リックに聞いたところでは、あまり増えすぎると森が傷むんだそうです。
この森に何匹居るのか、どんな方法で調べたんでしょう?
そして、多すぎると判断する根拠は一体何なんでしょう?
こういう話になると、自分の英語力の無さが、大きな障害になってしまいます。
止むを得ず殺した以上はそのまま捨てずに、食料として食べるのが命を奪ったせめてもの償いかと思いますが、一番根本の殺す理由がスッキリと理解できません。

ともあれ、いくらデッカイとは言え、所詮はリス。
ウサギですら情け無いほどしか肉がなくて、中々捌くのが難しいのに、あんなネズミの兄弟分みたいなのをどうして捌くんでしょうね。
一体どうして料理するのかと思ったら、先ず皮を剥いで、頭と足先、尻尾を切って、内臓を出した状態で一旦煮るんですって。
煮えたところで少し冷まして、手が入れられるようになったら、煮た鍋の中で肉をほぐして骨を取り出して、野菜とルー、今までの残りのグレービー(Gravy)も入れて、後はぐつぐつ煮るんだそうです。
道理で肉が細切れになっていたはずです。
グレービーというのは今まで聞いたことが無くて、シチューとどう違うのか聞くと、シチューは一本立ちの料理なのに反して、グレービーというのはソースで、例えば豆とかポテトのグレービー添え、と言う風にあくまで脇役なんだそうです。
すると最初の夜の夕食はマッシュポテトが主役だったんですね。

ちなみに、リスの残骸や野菜屑は食堂から10mほどのところに有る、丸太の半割を並べた餌台に夕方置いておくと、夜の間にきれいサッパリなくなるそうです。
クマがよく出る地域では、餌につられたクマがウロウロして危ないから、そんな事は出来ないそうです。
このあたりもクマが居ない訳ではないんですが、夏はもっと高度の高いところで子育てをしていて、キャンプ場の付近には、秋にならないと滅多にあらわれないんですって。
「滅多」と言う事は「決して」ではないんですか?と訊いたら
「そりゃ相手は野生だからね。どんな理由でこちらに来るか我々には判らないさ。」
「万一クマが出没したら ED が大騒ぎをして、すぐわかるから心配無い。第一この辺にいるのは主に大人しいBlack Bearだから」って言うんですが、アメリカのクマって月ノ輪の何倍も大きいんですよ。
州の旗の図案になるぐらいですから、クマは名物?
灰色熊なんかにウロウロされるよりはマシでしょうが、しかし、あんまりぞっとしませんねぇ・・。

お茶を飲むと雰囲気が盛り上がってきたので、スコップと足場用の丸太の半割の切れッ端を持って朝のお勤めに出動。
あの談話室みたいなトイレばかりは馴染めません。

足場に丸太を使ったので、穴の縁も崩れず、中々快適。
明日のトイレは少し違うところにしようかと、スコップを担いで場所を物色がてら、朝のお散歩をしていると、アレッ?これは鹿の骨!
冬に木曽川からの中央アルプスへの登りの途中で、1坪ほどの所に鹿の排泄物が山盛りになったのに出くわした事が有るけれど、行き倒れは初めて。
何かが喰ったか骨の位置が乱れているものの、傍らに角も転がっていて、間違い無し。
1年は優に経っているらしく、きれいに骨だけになって匂いも何もしません。
キツネやタヌキはどうか知りませんが、アライグマ、例のバッジャー、スカンクなんかがご馳走にありついたんでしょうね。
最期のお掃除はオサムシ、ゴミ虫なんかの昆虫が綺麗に食べたに違い有りません。
森を透かしてみて、もう一度来れるように位置を覚えます。

一応鹿の霊に敬意を表して、少しはなれた藪で、することを済まして、この場所にかえって来れるようにしておいた方が良いでしょうね。
下生えが少ないし、石ころが転がっていないので、枝を少し折ったり、石を積む目印が付けられません。
無闇にナタ目をつけるのは気が引けます。
念のために自分のテントへの歩数も測って帰リました。

食堂でクリスに「鹿の骨を見つけた」と話すと
「オーッ、それは良い!子供達に見せてやろう。最高の自然学習じゃないか。リックが素的なストリーを考えてくれるぞ。その前に案内してくれよ、見に行こうぜ」
と大乗り気です。
朝飯もソコソコに、鹿の行き倒れ現場にリックとスタッフをご案内。
骨の脇にしゃがみこんだリックがほんの少しの毛を見つけました。
バッジャーの毛だそうです。
午後は予定変更でここに全 Troop が集まって、この鹿の骨を素材に森の物語をするんだそうです。

「一体どうしてこんな所を歩いてたんだい?」
「朝の散歩ですよ」
「君たちも Honey で駄弁っていないで、サイトをもっと歩か無きゃ」と他のスタッフはとんだ所でご注意をされてしまいました。
「Yep!」と答えているけれど、連中は事情を知っているから、私の方を向いてニヤッとしています。

Troop 7 に行くとサン・マテオ Troop 45 が吊橋見物に来ていました。
この Troop は白人系の子供ばかり。
Tanaka さんが人間綾取りの話をしたらしく、一緒にやろうと何だか大々的な事になりました。
そうなるとキャンプサイトでは手狭です。
カーパークでやろうとリックの許可を貰いに Honey に行くと、何をしようとしているのか最初は判らなかったみたいですが、説明すると大笑い。
「日本人は奇妙なことを考え出すなぁ。午後の準備が済み次第見物に行くよ!」

サイトに引き返して、先ずは Troop Master 2人と役割分担の打ち合わせ。
各 Troop の世話は Troop Master にお願いして、私は綾取の見本を見せる役。
Cat Cladele では面白くないので、課題をハシゴに変更。
壮絶でしたね・・。指役も伝令役も皆へとへと。
ハシゴの真中が細くなってしまって、ハシゴらしくならいんです。
やっと何とか出来たところに、リックと何と大ボスが見にきてくれた。
子供達が「次は何か!」とせっつくので、アメリカで習った Pitching a tent をすることにしました。
日本の箒に似ていますが、ずっと簡単。

両手の親指と小指に糸をかけます。
右手の人差し指で左手の平の糸を下から取って、
二回捻ります。
右手人差し指の掛かっている輪に、左手人差し指を上から入れて、右手の平の糸を下からすくい、両手の間隔を開きます。
右手の親指と小指の糸を外して、パッと両手を引けば出来上がり。

実は、これが難物でした。
最終段階の1っ歩手前までは何の苦も無く出来るんですが、それからが大変。
手でするときは、右手の親指と小指に掛かっている糸を外して、パッと開けば箒の出来上がりなんですが、指の1っ本、1っ本が人間ですから、パッと引くのが至難の業。
指役は途中で6人、最終仕上がりの形では4人。
指役でない子供達も手伝って、ああだ、こうだと騒がしい、騒がしい。
子供達の息が揃っていないと上手く行かないんですね。
何度も挑戦してやっと出来た時には嬉しかったですね。

御大の Leverend さんも一緒になって大歓声が起こりました。
サン・マテオ Troop 45 もヘトヘトになりながら頑張りました。

汗だくになったので、皆でプールに水浴びに行くことに決まりました。
予定は未定とはこの事で、よく言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりバッタリ。
川の水を引き込んだ、幅こそ4,5mと狭いですが、長さは20mくらいの立派なプールが有るんです。
腰ぐらいの深さですから、先ず溺れる事は有りません。
「充分体操してからゆっくり入れよ」と一緒にきたクリスが怒鳴っています。
水に手をつけると、まるで氷水。
これでは言われなくてもゆっくりしか入れません。
それでも我慢してジリッ、ジリッと入ってしまうと、気持いいですね。
身体が火照っていたんで、一層冷たく感じたんでしょうね。
50人近くの子供が一度に入ったので、プールというよりも風呂屋気分

「頭を洗うと気持が良いだろうなぁ」とクリスに言うと、あそこにシャンプーを置いてるから、好きに使ってくれよ、大きく名前を書いてあるからすぐにわかるよ」と指差したプールの傍らに細長い小屋が有ります。
「あれは何の建物?」
「エッ、あれはシャワーさ。水しか出ないけどね。リックに聞かなかった?昨夜何でシャワーに来ないんだろうと思ってたんだ」
聞いたのか判りませんが、全く記憶に残っていません。
午後は子供達が交代で使って、スタッフはミーティングの後、寝る前に来るんだそうです。
寒いのを辛抱するなら朝浴びても構わないんだそうです。
ボスは朝にシャワーを浴びるのが好きなんですって。

ははーん、昨夜明かりが見えていたのは、アライグマが人間をタブラかしていたのではなくて、此処だったんですね。

2003/06/10:初出
2022/06/04:再録

52-ED BARRAR-07-U.S.A.1964-No.52(8/3)
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