maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

34-VWで遠乗り-1-U.S.A.1964-No.34(7/26)

2022-05-11 16:14:01 | 虚々実々-U.S.A.-1964

Montery

昨夜約束していた通りに、9:00にバタバタバタと VW の音をさせてトムがやってきました。
自分の車を持っている高校生は珍しくないのですが、彼にとっては、この VW が初めて手に入れた自分の車。
相当年式の古い中古で、まだ買って2ヶ月そこそこですて。
最初は先ずバラバラにして、大掃除。
気がついた不安なところは、中古の部品を漁って、交換したり、何とか修理したりして、最近、近場は安心して走れるようになったそうです。
今は色がはげて青灰色になってるけれど、前のフードを開けて退色していない所を見せてくれたら、元々は明るい空色だったみたい。

丁度いい相棒が出来たので、工具一式積み込んで、初めて、少々遠出をしようとやってきたんです。
その相棒と言うのが私。
「単車の修繕なら(といっても2サイクルしかわかりません)何とか出来そうな気がするけど、自動車はなぁ」といったら、
「自分では手に負えなくて、プロを探しに行く時に見張っててくれればいいのさ」
そのぐらいの事なら出来ますね。
「けど、鍵をかけておけばいいんじゃないのかな?」
「片一方のドァは鍵がかからないんだ」
レレレ、ちょっと不安。
「ガスはオレが買うよ」
「いいよ、ショート・ジョブで旅費を稼ごうとしているんだろ」
「車は君、ガスはオレ。それで even さ。五分五分でいこうよ(Let's go fifty-fifty.)」
「判った!じゃあ、疲れたら運転してもらえる?」
「サンマテオ・カウンティーの中ならね」
実は、ガソリンは日本の3分の1以下。
それに、何もかもおんぶに抱っこではねぇ。

音に似合わず中々良く走ります。
「Montery へ行こう!」
「それ、どの辺り?」
「南の方(Down south)、そんなに遠くない」

Free Way に入るとこれは大変。
周りはでっかいフル・サイズの車がビュ~ン。
ついて走るのにはアクセル踏み切り、エンジン音はバタバタでは無くてヴバァ~、グォー!
大声を張り上げても会話不能。
そこいら中がガタガタ、ビリビリ鳴ってます。
ルームミラーが振動でだんだん縦向いてしまうので、助手席はそれの押さえ役。
一般道路を走っているときは何の問題も無かったんですが、窓を閉めようとしたら、巻き上げハンドルが頑強に抵抗して廻ってくれません。
窓を閉めれば、騒音は幾らかはましなんでしょうが、無理をするとハンドルが折れそう。
何かの拍子に少し廻ってくれるんですが、閉めてしまうと今度は開けるのに苦労するのかな?
「窓が閉まりにくいけど、開けるのはどう?」
「開ける方が難しいよ。そのうち直そうと思ってるんだ」
閉める前に訊いて良かった!
クーラーが無いから、窓を締め切ると、背中のエンジンの熱気で熱いでしょうね。
ついに途中で、一般道路へ降りました。

「Country road!」と一列に並んだ道端の電柱をさしてトムが喚いています。
電柱の並んだ道は田舎の象徴なんだそうです。
例えば、映画のファースト・シーンでそんな道が映ったら、それだけで「あぁ、この映画は田舎が舞台か!」と判るんだそうです。
となると、日本なんてのは、何処も彼処も100%田舎ですね。

Santa Cruz が近づくと電柱とはお別れ。
目の前に Montery Bay がパァっと拡がっています。
海岸げ左に曲がって海沿いを南に下ります。
右手に拡がった海は見たことのないような綺麗な紺色。
波頭が砕けるとその白さと海の色が何ともいえない美しさです。
あんまり綺麗過ぎると現実感に欠けますね。
日本近海では決して見られ無い色ですよ。

急に道端に止めるから、何かと思えば「Look! Sea otter!」
カワウソ?海カワウソって何?
見たことのない、大きなシェパード犬くらいの動物が、ちょっと離れた海面でうねりに揺られています。
顔形が判然としませんね。
ん?上を向いて浮かんでるのが居るぞ、もしかしたらラッコか?。
「ラッコ?」
「もういいのかい?(enough?)」

Let's go と違う、らっこ! 「いやあの動物の名前。ラッコ?(No!that animal's name.ラッコ?)」
「ラッコ?what?」
え~、ラッコて英語と違うのかな、何語?

帰ってから某岩波の英和で調べたけど、出てない・・・。
コラリアの Webster のペーパーバックの辞書にも出て居ない。
何を調べてるのと訊くから 「Sea otter」 というとクローゼットをかき回して絵本を持ってきてくれた。
絵で見ると、ラッコに間違い無いみたい。 「海底2万マイル」でネモ船長がラッコの帽子をかぶって・・、と言うのを読んだ記憶がある。
何となくウサギか狸くらいかと思ってたけれど、あんなに大きいのか!

本当に海の色が持って帰りたいほど綺麗。
本州沿海の緑でも、琉球の空色でも、黒潮の濃紺でもない。
海を見ながら流して走っていると、月曜日のせいか車も少ないし至極快調。
Montery は海辺の観光地と言うよりも別荘地のような感じで人はまばら。
レストランの近くのおみやげ物やにはノコギリザメの鼻先の干物、貝殻などが並んでいる。
トムは貝殻に興味があるらしく、厭に熱心に手にとって眺めては「これはもっと南の海の貝だ」とか「こんな貝はアジアにしか居ない」とブツブツいっている。
土産物屋のお姉サンにお願いして、VW と一緒に記念撮影。
「メシにしよう!」とお互いのランチを取り出すと、彼は自分で用意したピーナッツ・バター・サンド、私はエフィが作ってくれたチーズ・サンド、果物は二人とも小さな桃。
お互い半分ずつ交換して、レストランを眺めながら昼飯。
どうしても女性が相手だと、何か気を使ってしまうんですね。
今日は本当に開放された気分がします。

「船乗りをしていたんだって?」
「うん、臨時雇いで小さな船だけどね」
「僕もそういう経験がしてみたいなぁ。1番したいのは、南アジアに行って、熱帯の貝の研究さ」
「それは費用が大変だろう?」
「自分のお金ではとても行けないよ。Peace Corps(平和部隊)で学術調査のプランが有るから、何とか参加したいと思ってるんだ」
「へ~、試験があるのと違う?」
「試験も有るけど、教授の推薦が必要らしい。相談したら master's degrees(修士課程)を終えないと無理みたい」
エ~ッ、こいつ勉強家ですね。
そう言えば賢そうな顔に見えてきました。
海風に吹かれながら、何やかやとシドロモドロながらも話していると、本当に良い奴です。
彼に会えたのは幸運としか言い様がありません。

植え込みに咲いている花の周りを、大きな蛾のようなのが飛んでいます。
良く見ると「オワァ~!ハチドリ」!。
まさかこんな物を我が目で見られるとは!
「ハチドリ!ハチドリ!」と声を殺してトムを突付くと「Yha, hummingbird」と珍しくも無い様子です。
カリフォルニアに「ハチドリ」がいてるんや!
子供の頃よく読んでいた講談社の「世界の珍しい鳥や獣」、あれに出てきたハチドリが目の前でキラキラと輝いて飛んでいるのです。
あわてて写真を写そうとしたら、プイとどっかに行ってしまいました。
ハチドリ、 hummingbird か。
感激していると、「Mexico にはもっといるんじゃないかな?」
物凄く外国に居るという実感がします。
動物園で北米原産と書いてある奴は、此処では野生でそこら辺にいてるって事なのか!
当たり前ですね。

2003/05/10:初出
2022/05/11:再録

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