NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#142 マディ・ウォーターズ「KING BEE」(BLUE SKY ZK 37064)

2022-04-05 05:06:00 | Weblog

2003年3月2日(日)



マディ・ウォーターズ「KING BEE」(BLUE SKY ZK 37064)

(1)I'M A KING BEE (2)TOO YOUNG TO KNOW (3)MEAN OLD FRISCO BLUES (4)FOREVER LONELY (5)I FEEL LIKE GOING HOME (6)CHAMPAGNE & REEFER (7)SAD SAD DAY (8)(MY EYES) KEEP ME IN TROUBLE (9)DEEP DOWN IN FLORIDA #2 (10)NO ESCAPE FROM THE BLUES

<制作データ>

マディ・ウォーターズ、BLUE SKYレーベルでの三作目。81年リリース。

プロデュースは一・二作目同様、ジョニー・ウィンター。

83年に亡くなるマディの、最後のオリジナル・アルバムである。

録音メンバーは、マディ、ウィンターの他、ボブ・マーゴリン、ルーサー・ジョンスン(ともにg)、カルヴィン・ジョーンズ(b)、ウィリー・スミス(ds)、パイントップ・パーキンス(p)、ジェリー・ポートノイ(hca)と、前二作とほぼ共通の顔ぶれ。

<ジャケット>

ジャケ写自体は何の変哲もないマディのポートレートだが、ライナーの写真が面白い。

マディ一家、かなり年下の奥さん(もちろん再婚だ)、前の奥さん、それぞれとの間に出来た子供8人、総勢11人が写っている。いやー、壮観。

さすが元祖フーチー・クーチー・マン、御年66才にしてこのお盛んぶり、うらやましいとしかいいようがない(笑)。

アルバムの内容も、老いてなおギラギラとしたマディの個性を反映したものであるのは、いうまでもない。

<聴きどころ>

本作では(6)を除く全曲で、プロデュースのジョニー・ウィンターがギターもプレイ。

そのソリッド、シャープな音で、マディ・バンドのサウンドをうまくまとめあげている。

特にいい雰囲気をかもし出しているのは、(5)における彼のアコギ(ドブロかな)でのスライド・プレイ。

ロックン・ロール・ギタリストとして捉えられがちな彼ではあるが、見事にダウン・ホームな響きを紡ぎ出している。

他のプレイヤーも、とりたてて派手なプレイはないが、実に堅実で力強いビートを繰り出している。

ハープのポートノイの演奏もなかなか。要所要所、たとえば(6)などで、切れ味のいいソロを聴かせてくれる。

ベテラン中のベテラン、ピアノのパイントップも、ほとんどソロらしいソロは取らないが、バンド・サウンドの要として、なくてはならない存在といえそうだ。

このふたりの働きにより、サウンドに奥行き、深みが大いに増しているのは、間違いない。

<曲についてあれこれ>

本作も先行の二枚同様、往年のブルース・スタンダード的な曲のカヴァー、そしてオリジナルでも過去にレコーディングした曲の再演が多い。いわばマディの「原点回帰」だな。

タイトル・チューン、スリム・ハーポがオリジナルの(1)(単に「KING BEE」とも題される)は、初録音のようだが、マディ自身のオリジナルと称しても違和感がないくらい、彼にしっくり合ったナンバー。(そういえば昔、「HONEY BEE」という曲をやっていたなあ。)

もちろん、ハーポのロー・テンションぶりとは違って、こちらはあくまでも雄々しく「俺は王様蜂だ」と歌いあげとります。

他人のカヴァーはこのほかに、アーサー・クルーダップの(3)がある。BB、クラプトンらもカヴァーしている有名曲だ。

こちらも初録音なれど、まるで昔からやっているナンバーのように聴こえる。こういう、昔ながらのスタイルの曲だと、マディの歌は実にイキイキとしている。

(8)もカヴァーものだが、詳細はよくわからない。くわしい方、ご教示を乞う。

マディのオリジナルは、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(9)、(10)。(10)は共作だが。

(2)は「MORE REAL FOLK BLUES」で収録された曲の再演。(4)は初録音。(5)は71年の「THEY CALL ME MUDDYWATERS(II)」の再演。(6)は初演。(7)は「LONDON MUDDY WATERS SESSION」の再演。

(9)は77年の「HARD AGAIN」でもやっている。(10)は初演。

ということで、新作・旧作とりまぜてやっているものの、スタイルはまったくといっていいほど(笑)、変化していない。

あくまでも十年、いや五十年一日のごとく、骨太のマディ節を貫いているのだ。

マディというブルースマンの真の面目は、いってみれば、どこでレコーディングしようが、農場生活時代の泥臭さ、いなたさを死ぬまで失わなかったという点にあるだろう。

還暦を過ぎて、いよいよ一徹ぶりに磨きがかかってきたようで、それもまたいかにもマディらしいね。

<アーティストのその後>

前述したように、マディは2年後の83年に亡くなる。

本盤の制作とほぼ同時期にライヴにも出ているが、その模様を収めたDVD「MUDDY WATERS LIVE AT THE CHICAGO BLUES FESTIVAL」がPIONEER ARTISTSから出ているので、ご興味のあるむきは、ぜひ観てほしい。

彼が「シカゴ・ブルース・フェスティヴァル」に出演したときのライヴで、ゲストとしてジョニー・ウィンターも登場。

マディはさすがに足腰の問題からか、椅子に座ってのプレイが多いが、その力強い歌いぶりは、往年と変わっていない。

とても、60代なかばのジイサマとは思えないパワフルさであります(笑)。

意地悪な言い方をすれば、やっている音楽が超ワン・パターンでもあるのですが。

それは本作品についても言えていて、皆似たような曲調、やや平板で変化に乏しい構成なんですが、ファンにとってはそれもまた良しということでしょうか。

録音の質、バランス等は良好なので、聴きやすい一枚ではあります。BLUE SKYの他の二枚がお気に召したかたは、こちらもどうぞ。

<独断評価>★★★