NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#148 V.A.「BLUES BROTHERS 2000」(UNIVERSAL UD-53116)

2022-04-11 04:51:00 | Weblog

2003年4月13日(日)



V.A.「BLUES BROTHERS 2000」(UNIVERSAL UD-53116)

今週も、ブルースの「現在(いま)」を伝える一枚。

98年公開の米映画「ブルース・ブラザーズ2000」は、もちろん81年作品「ブルース・ブラザーズ」の続編。本盤はそのサントラだ。

前作公開後、ジェイク役のジョン・ベルーシが急逝。続編の制作は難しいだろうと思われていたが、17年の歳月を経てついに復活。

今回はジョン・グッドマン、ジョー・モートン、J・エバン・ボニファント(子役)を新たなメンバーとして迎え、パワーアップした歌と踊りを見せてくれるのだが、本盤は映画とは関係なく聴いてもなかなか楽しめる。

まずはポール・バターフィールド・ブルース・バンド「BORN IN CHICAGO」からスタート。

ニック・グレイヴナイツ作のブルース・ナンバーだが、65年録音という「時代」をまったく感じさせないシャープなリズムがカッコよろし。バターフィールドのハープも、絶好調。

続くはマット・マーフィー「THE BLUES DON'T BOTHER ME」。「クロスロード」を下敷きにしたような濃ゆーいブルース・ナンバー。マーフィーのシブい歌、ファンキーなギター・プレイがたっぷり楽しめる。

「HARMONICA MUSINGS」は白人シンガー/ハーピスト、ジョン・ポッパーによるハモニカ・インスト。32秒と短めながら、ブルースのエッセンスがつまった演奏だ。

ポッパーは67年生まれ、「ブルース・トラベラーズ」なるバンドで90年デビュー。これからが期待される中堅白人ブルースマンだ。なにせ、この世界では40前なんて、ひよっこみたいなもんだからね。

「CHEAPER TO KEEP HER」はエルウッド役のダン・エイクロイドに、ベテラン・ブルースマンのロニ-・ブルックスジュニア・ウェルズが加わったナンバー。バックはもちろん、ブルース・ブラザーズ・バンド

ユーモアにあふれたヴォーカルもさることながら、ここでの聴きものはやはり、ウェルズ、エイクロイドふたりの吹くハープだろう。

続く「PERRY MASON THEME」はもちろん、TVドラマ「ペリー・メイスン」シリーズの主題曲。演奏するは、ブルース・ブラザーズ・バンド

おなじみの重厚なメロディが、彼らの達者なプレイによってよみがえる。

「LOOKING FOR A FOX」ジョン・グッドマンダン・エイクロイドの歌をフィーチャーしたナンバー。

グッドマンの声は、日本のべテラン声優、「タイムボカン」シリーズでおなじみの八奈見乗児サンによく似ていて、独特のとぼけた味わいがあって○。

「CAN'T TURN YOU LOOSE(おまえを離さない)」は、以前の「ブルース・ブラザーズ」でも十八番のナンバーの再録音。オーティス・レディングの作品。

ここではジョン・ポッパーブルース・ブラザーズ・バンドを従えて、超絶技巧のハープを聴かせてくれる。必聴。

「R-E-S-P-E-C-T」も、いうまでもなくオーティス・レディングの畢生の名曲。これをソウルの女王、アレサ・フランクリンブルース・ブラザーズ・バンドを率いて歌ってくれるんですから、何の文句もありませんです、ハイ。

3分ジャストの短い時間にこめられた無限大のソウル、これを聴いて心をゆさぶられることのないヤツは逝ってよし、です。

「634-5789」はスタックス・ソウルの立役者、エディ・フロイド、スティーヴ・クロッパーの代表的作品。これを御大フロイド自身、そしてウィルスン・ピケットが熱唱。それぞれのシンガーの微妙な個性の違いが出て、興味深い一曲。

そして注目は、若手白人シンガーのジョニー・ラング(当時なんと17才!)がギター・ソロを披露。これがメリハリのあるプレイで、結構カッコいい。

「MAYBE I'M WRONG」はジョン・ポッパー率いる白人バンド、ブルース・トラベラーズのナンバー。ポッパーの作品。

ポッパーのヴォーカルはやや線が細いが、なかなか「味」はある。そしてハープでも、見事なテクを披露してくれる。

「RIDERS IN THE SKY (A COWBOY LEGEND)」は、ブルーグラスの名曲中の名曲。ダン・エイクロイドジョン・グッドマンが、低音が魅力のヴォーカルを聴かせてくれる。

映画の中では、「ご愛嬌」として演奏される一曲だが、なかなか堂に入ったプレイだ。さすがブルース・ブラザーズ・バンド、引き出しが多い!

「JOHN THE REVELATOR」は、サン・ハウスの歌で知られるニグロ・スピリチュアル風の一曲。ジョンとはもちろん、聖者ヨハネのこと。

これを歌うは、タジ・マハールサム・ムーア(サム&デイヴの片割れ)、ジョー・モートンシャロン・ライリーザ・フェイス・コーラル。なんとも豪華な顔ぶれだ。

バック・コーラスには、おなじみクリオファス牧師役のジェイムズ・ブラウンまで加わり、もうゴージャスの一言。

聴いているだけで、映画の教会でのシーンがまぶたに浮かんでくるはず。

「LET THERE BE DRUMS」は、ザ・カール・ラフォング・トリオによるインスト。日本でも昔人気が高かったドラマー、サンディー・ネルスンの作品。(「ドラム!ドラム!ドラム!」のシリーズ、皆さん、覚えてます?)

シャドウズ風といいますか、ティンパン風といいますか、トレモロ・アームをきかせたギター・プレイがなかなかイケてます。

「SEASON OF THE WITCH(魔女の季節)」はご存じ、ドノヴァンの代表曲。

これを歌うは、ドクター・ジョン。あのダミ声が、ミョ-にはまって、おどろおどろしさ百倍であります。

「FUNKY NASSAU」ジョン・モートンダン・エイクロイドジョン・グッドマンポール・シャッファーエリカ・バドゥによるラテン・ビートのナンバー。

名手ラルフ・マクドナルドがコンガ等のパーカッションで参加、サウンドをビシッとひきしめております。

「HOW BLUE CAN YOU GET」は、ブルース・ブラザースのライバル・バンド、ルイジアナ・アリゲイター・ボーイズによる演奏。この顔ぶれが、ハンパでないスゴさ。

B・B・キングを筆頭に、ジェフ・バクスター、ゲイリー・U・S・ボンズ、エリック・クラプトン、クラレンス・クレモンス、ジャック・ディジョネット、ボ・ディドリー、アイザック・ヘイズ、ドクター・ジョン、ルー・ロウルズ、ココ・テイラーにジミー・ヴォ-ン…。まだまだ続きますが、このへんで割愛。とにかく、ブルース、ジャズ、ロック界の一大サミットなんであります。

「HOW BLUE~」はもちろん、BBの歌とギターをメインに、ECがギターで絡むというスペシャルおいしい構成。

ま、作品の出来うんぬんはともかくとして、一種の「お祭り」として、一見・一聴の価値はあり、といったところかな。

「TURN ON YOUR LOVE LIGHT」はジョー・スコット&ディアドリック・マローンの作品ということになっているが、実は100%ボビー・ブランドのオリジナル。

これをジョー・モートンダン・エイクロイドジョン・グッドマンJ・エバン・ボニファントの四人が勢揃いで歌いまくり、(映画では)踊りまくる。本映画の、まさにハイライト的一曲。

声変わり前のボニファント少年が、往年のマイケル・ジャクスンばりの大活躍。とにかく、ノリノリの演奏が楽しめます。

ラストの「NEW ORLEANS」は、宿命のライバル(?)、ルイジアナ・アリゲイター・ボーイズブルース・ブラザーズが、ブルース&ジャズの聖地、ニュー・オーリンズで一堂に会しての大合奏。

ゲイリー・U・S・ボンズのヒット、いかにもN.O.らしい陽気なR&Bナンバーを、総勢30名以上のスーパー・ミュージシャンたちが歌い、プレイするさまは「壮観」のひとことですな。

本盤におさめられた18曲は、スタイルもさまざま、現代的なアレンジを施されているものもあるが、いずれもブルースのスピリットを強く感じさせる曲ばかりだ。

10代のボニファントから70代のBBまで、世代・人種を超えた最強の「絆」、それはブルース。

ビギナーから、コアなマニアまで楽しませてくれる一枚、おススメです。


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