これだけ見ても分からんかもしれん。
もう3年くらい前に組んだ物だから、俺もよく分かんね。
今見ていると、どことなく「キノ」っぽいかも
こちら空想第七世界!
(〈オープニング〉 空想仁(ジジ)と五葉恭介との対話 戦乱を予期させる意味深な発言)
第一章 芸術家の世界
芸術家の国に住んでいる主人公――五葉(いつのは)陣は、芸術家の中でも画家を目指し、美術学校サイレスの絵画科に通っていた。しかし、学園長、兼絵画科コース担当官である空想ミミから「感情の無い、写真のような絵。ヨツヤ(抽象画家)を見習え」と批判されてしまう。それもそのはず、陣は幼い頃から感情と言うものを持っていなくって、表情は能面でも付けたかのように、ピクリとも動かないのだ。
このままでは留年が決まってしまう。陣はミミの眼の前で絵を描くが、彼の書き方は独特で、両手で鉛筆を握り、一度も紙を見ず、三秒足らずで仕上げてしまうのだ。ミミは驚嘆するも呆れ顔になり、「モノクロの設計士」と、陣の蔑称を口にする。去る陣を見て、ミミは「やはり奴の子か……」と呟く。
補修を受けるためサイレス(芸術学校)の屋上にある空中箱庭に閉じこもる陣。しかし、いくら描いても、〈書く〉になってしまう。陣は絵を放棄して、昼寝しだす。と、その時、空中箱庭中心にある水彩絵具の噴水の上に、金の装飾が付いた大きな旅行鞄が出現する。旅行カバンは陣が見ている前で、空中に静止すると、ふたを開く。中から女の子が出てくる。陣は絵具の噴水に落下した女の子を助け出し、人工呼吸する。(肩らへんにボディペイント※伏線)
眼を覚ます女の子。酷く錯乱していて、「私の鞄は!?」と陣に詰め寄る。女の子――空想七七七(ナナミ)は、鞄が噴水に落ちた事を聞いて潜ろうとするが、この噴水が塔を突き抜けるように地下から湧いていて、深さが五十メートル近くあることを知ると、泣き出してしまう。陣は混乱して「ミミに訊けば……」と口にする。七七七はそれに過剰反応する。この『世界』にはクリエイターが居るのかと。
そこに、黒衣を纏った男が現れる。男は不思議な銃を使って、陣と七七七を殺しにかかる。男の放った弾丸に触れた者は、何かに押しつぶされたようにして、ペッタンコになってしまうのだ。
完全に敗北ムードの七七七を連れて、陣は逃げようとする。その時、真っ白なキャンパスが眼にとまる。咄嗟に、陣は自分の自画像を描いてそれを身代わりにする。さらに、壁画を描きまくって入口を分からなくする。なんとか男から逃げ切って、陣は七七七から「世界が無数にある」事を知らされる。
世界は塔のように、上へ上へ石を積んだように出来ていて、それぞれに番号が振られている。この事を聞いて陣は「世界を見てくる」と言って旅立った父のことを思い出す。もしかしたら、父はまだ生きているかも……と、思いつつも鼻で笑う、そんなことはないと。そこに黒衣の男が現れる。男は陣達を殺そうとするが、間一髪、学園長の空想ミミが助けに来て、黒衣の男を捕縛する。
七七七は空想ミミが姉である事を暴露する。そして、〈創造主(クリエイター)〉と言う二つ名で呼ぶ。何故なら空想ミミは数多の世界の『生物』を作った張本人で、彼女の描いた絵は実態化するのだ。
ミミは七七七――ミミ曰く〈トラブルメーカー〉を異常に畏れており、さっさと違う世界に行ってくれと頼む。しかし七七七は、世界を移動するための鞄を失くしたと言う。ミミは、ならばと『扉』を使って違う世界へ行くように促す。
扉とは、その世界に一つだけある他の世界へ行くための門で、鞄とは、その扉を持ち運べるようにした道具だった。当然、陣の住んでいる世界にも扉はあり、それは学園サイレスの深層部に隠されているとのことだった。
機械の兵隊が、空中箱庭から現れる。ミミは「私が足止めするから陣は七七七を他の世界へ!」と、学園長らしい振る舞いを見せる。今が好機と、黒衣の男が檻を破る。陣は七七七と共にエレベーターで最深部へ。その間に、七七七は弱い一面を見せる。自分がトラブルメーカーと呼ばれるのは、来た世界来た世界でトラブルを巻き起こしてしまうからなのだと。蔑称を付けられている者同士、陣は強く共感する。
そこで、黒衣の男と再び対峙する。陣は誤って、七七七と共に扉から落ちてしまう……。
(挿入話 空想二と恭介の対話 姉妹についてをチョロンと出す)
第二章 魔女狩りの世界
深い森の奥で目が覚める。陣は元の芸術家の国に帰る方法はないのかと七七七に問うが、別の世界がある事をちゃんと認めたうえで(※通常、別の世界がある事は現地民に知らされていない。国政が厳しくなると移り住んでしまう可能性があるから)、世界を行き来する事ができるほど科学力が発達した国に行けば、帰る事ができる。と言う。
しかし、それが本当にあるかも分からない。陣と七七七は喧嘩する。そこに、わらわらと人が集まってくる。手には松明を持ち、眼は鋭い。彼らは陣達を神の遣いだと神格化する。そして、ある壁画を見せる。
それは紛れもなく、陣の父親――五葉恭介の絵だった。村人たちはこれまでのいきさつを説明する。数年前に現れた画家が、丘の上にある魔女の家へ行き、魔女を撃退した事……。七七七は、「そこに『扉』があるかもしれない」と、陣に相談する。
父がまだ生きていると言う事実を、真っ向から受け止められない陣、しばらく物思いに耽っていると、村人が「今、飢饉なのは魔女、空想碌(ろく)が生きているからだ。どうか、碌を殺してほしい」と相談する。魔女の名に聞き覚えのあった七七七は、渋い顔をする。空想の名に聞き覚えのある陣は、また姉妹かと七七七に訊く。七七七は「あの子は……特別な奴だ。付いてくるな」と、陣を村に残す。
館へ向かった七七七は碌と対面する。碌はちょっと狂った女の子で、人形を抱いている。七七七が碌の能力を心中で解説する。
碌は世界を作るために生まれた七人の中(ここでは明かさない)の、異質な存在で、ミミが作った生物(全世界の生物)を例外無く服従させてしまう。〈支配者(ドミネーター)〉の力を持っており、陣を連れてくると、陣さえも敵になってしまうのだ。
しかし、魔女本人である碌は、その力(眼が合うと、相手の心を思い通りにしてしまう)から人と接する機会がなく、孤独で寂しがっているのだ。(飢饉は偶然である事が判明)
唯一話す事が出来る七七七に、自分の話し相手になって一生傍にいてほしいと碌はお願いする。七七七はそれを断る。七七七は、陣を巻きこんでしまった事を後悔していたのだ。碌は七七七を幽閉してしまう。
村にいた陣は、いつまで経っても戻らない七七七を不思議に思っていた。陣は村人から「まだ魔女を殺せないのか」と訊かれて、「七七七の姉妹を殺したくない」と答える。村人うろたえるも、ここは撤退。
仕方なく、陣は付いてくるなと言われた魔女の屋敷へ行ってしまう。屋敷は廃墟のようで、陣は捕らえられている七七七を発見する。七七七は陣に逃げろと言うが、陣は構わず檻を壊す。そこに碌が現れる。碌と眼があっても平気な陣。
陣にはそもそも、感情を司る『心』がない事が判明する。碌に婚約を申し込まれる陣、それに嫉妬する七七七。そんなラブコメみたいなことをしていると、村人によって、館に火が付けられてしまう。
村人たちが集まって、碌を殺しにかかる。陣が庇うも、村人たちは碌を殺害。死ぬ寸前、碌は姉妹だけが持っている特殊なアイテム(七七七は鞄、ミミはペンを持っていた)。碌の名が入った首飾りを陣に託す。陣は自分に〈怒り〉と言う感情がないことを悔やむ、七七七は陣を救うため、館の中央に隠されていた『扉』へ飛び込む。
残された『魔女狩りの世界』の人々は、一向に飢饉が無くならない事を憂いて、今度は女子供のせいにする。次に、年老いた男性のせいにする。次に髪の短い……
(挿入話 空想二と恭介の対話 姉妹についてをがっつり出す。世界を作るための七人。そして、今は亡き『一(はじめ)』の事を思い出す。空想一は五葉恭介と結婚したのだ。そして、二人の間にできたのが空想陣。陣の名は仁から取った。その頃は姉妹は仲良しで、バラバラではなかった)
第三章 科学と魔法の世界
次に二人が降り立ったのは、高い城壁の上だった。碌の死を、まだ受け止められない陣。七七七は、なんと声をかけていいのか分からず、お互い暗い気持ちになる。そこで突然槍が飛んでくる。その槍は陣の胸に突き刺さり、陣は城壁から森の方へ落ちてしまう。七七七はその後すぐにやって来た男たちに捕らえられる。
陣は落ちてきたところを、男の『魔法』によって助けられる。男は「空想ヨツヤ」と名乗り、陣と同じ、元芸術家の国出身だった。〈薬王(ドラッグ・キング)〉の二つ名を持つ空想ヨツヤは、一瞬で陣の傷を治す。ヨツヤの能力とは、傷ついた物を例外無く修復させると言う物だった。
科学の国に捕らえられた七七七を救うため、一度魔法族の族長の元へ行く。その際、ヨツヤは多くの人間に感謝され、色々な物を治すのだ。ミミがヨツヤが居なくって寂しがっていた事を伝えると、ヨツヤは「自分はこの世界で必要とされている」と、きっぱり言い放ち、ミミへの思いを切り捨てる。
族長の元へついた二人は、そこで科学会の会長と、魔法界の族長との口論を目撃する。そこへヨツヤが間を割って入る。二人が話していたのは、誤って殺してしまった少年についてだった。
ヨツヤはその少年――陣が生きている事を伝える。会長達は胸をなでおろす。ヨツヤの指示によって、陣は七七七と会う事ができるように手配され、陣は科学会の方へ転送される。
一方、七七七は自責の念から科学会の方で保護されている。そこに、姉である空想后が現れ、七七七を抱きしめる。空想后には「感情・自我を芽生えさせる、促進させる」と言う能力があり、七七七は一時の安息を得る。そこに、実は陣は死んでいなかったと言う知らせが出て、七七七は「泣いた事を陣に言うな」と后に口止めする。后はクスクス笑いながらも、二人の再会と遠くから眺める。
その日の夜、后は陣を呼び出す。そして、七七七が〈トラブルメーカー〉と呼ばれる由縁を説明する。七七七は姉妹最強の能力、《世界を壊す・リセットする》力を持っており、それ故に、数多の世界から忌み嫌われているのだと。
そして、后は一刻も早くこの世界から逃げるよう説得する。科学と魔法はお互い一人ずつの〈空想〉と言う名の現人神を持って吊りあって来た。そこに世界をリセットする、強力すぎる力を持った七七七が加わっては不味いと言う事だ。
陣は七七七と共に、夜、ひっそりと抜け出す。そして、扉のあるところまで行くのだが……。そこで、科学の人間に見つかってしまい銃で攻撃される。当たったかと思われた銃はヨツヤによって、止められている。ヨツヤは拳銃が当たった部分をすぐに直すも、血を出しすぎてしまい意識を失いそうになる。助けに行こうとする陣を、蹴り飛ばして扉に沈める。
ヨツヤは科学会によって監禁される。
后とヨツヤが話し合う。……科学と魔法の戦争が起きる、と。
(挿入話 五葉恭介が「そろそろ行く」と立ち上がり、仁の指輪を奪う。「そんな事しても無駄だ、一は喜ばない」と言う仁を余所に、恭介はもう一つの鞄――空想一の鞄を使って消えてしまう)
最終章 完全な国
段々〈トラブルメーカー〉の気持ちが分かって来た陣、電気が全くついてない部屋で、ヨツヤの安否を気にする、突然景色が開け、陣は自分と同じような〈無表情〉の女の子に迎えられる。
彼女はここが『完璧な国』であることを述べ、七七七は別室で待機していると言う。そして、国王が待っているから先にあいさつして来いとも言う。陣は謁見の間で国王、父――五葉恭介に会う。父との再会に言葉を無くす陣。父は「世界はどうだった?」と陣に感想を求める。
一方、時は戻り、先に目覚めさせられた七七七は、恭介と鉄格子を隔てて対面する。恭介は七七七に言う。空想一の真実を。
空想一は陣を産んで直ぐにどこかへ消えてしまった。鞄を残して。彼女はい亡くなる直前、姉妹に自分の欠片を渡した。
それが仁の指輪だったり、ミミのペンだったり、ヨツヤのコートだったり、后の王冠だったり、碌のペンダントだったり……。それらは一の心の一部だった。
そして、空になった心に、生まれた子である陣から『世界を壊す能力』を奪った。それが空想七七七の誕生だった。陣の能力を奪う際、陣の心さえも奪ってしまった一、こと七七七は、自責の念に苛まれる。
自分の世界に帰る事ができる機械があると知った陣、父からある物を渡される。それは「感情を作る腕時計」だった。それを付けた瞬間、陣は初め心と言うものを認知する。この感動を知ってほしくて、七七七にはしゃいで報告すると、七七七は「そんなの……機械の感情だ」と、ためらいながらも批判されてしまう。
突然冷たくなった七七七に対して困惑する陣。七七七と喧嘩のようになって別れる。父を残して、陣は自分の世界へ帰る。
芸術家の世界に帰った陣は早速学園長の元へ、ミミは無事かと掛け入ると。学園長が、絵を描いてみろと指示する。陣はこれ以上ないほど見事な絵を仕上げる。ミミはそれを破り捨てる。「無機質で写真のような絵。それがお前の『心のこもった』絵じゃないのか? こんなの、機械が描いたのと同じだ。全く進歩していない」と批判されてしまう。
ミミの背後から、黒衣の男が現れる。黒衣の男は「さっき、完全な国が滅んだ」と言う。黒衣の男は完全な国に住んでいた科学者で、恭介の謀略を止めるため七七七を破壊しにきていたのだ。
恭介は七七七を使って、一を復活させようとしていたのだ。最強の破壊兵器と化した七七七は、一個一個世界を潰しにかかっている。現在魔法と科学の国と交戦している。そして、既に王冠とコートが奪われたと言う。
あと一個、陣の持つペンダントが相手の手に落ちれば、七七七としての自我は消滅し、一としての自我を取り戻す。そして、はじき出された『世界を破壊する』力は、陣の元へ帰ってくる……。
どうすれば七七七の力を納めることができるのかと言う問いに、ミミは「七七七の腕にもう一度封印を描く事が出来れば」と口にする。
自分の特技である早描きがあれば……! 陣は黒衣の男からあの銃を奪うと、空中箱庭へ行く。そして、追って来たミミたちの前で自分に銃を撃つ。重さが何百倍にもなった陣はあっという間に噴水の最深部に到達。鞄を開けて科学と魔法の国へ。
辛うじて攻撃を食い止める両国。やって来た陣の発言により、二つの対立した国が力を合せることになる。一瞬でも七七七を止めることができれば、再び封印をする。
両国の総攻撃に、一瞬怯む七七七。陣は破壊神と化した七七七を封印するため、ペンを走らせる。描き終えたと思った時、陣の腹を七七七の腕が貫通する。陣は倒れる寸前、七七七にもたれかかり、感情を作る腕時計を外す。
こんなのは自分の心ではない。そして、七七七への思いを吐露する。「いつもの君に戻ってくれ」と。七七七は怒気を失う。陣もその場に崩れる。崩れる直前、恭介の姿を目にする。恭介は陣から腕時計を奪い、六つの心を――一(はじめ)の心を完成させる。しかし、蜃気楼のように現れた一に諭されてしまう。七七七を守ろうと立ちはだかる陣。今は見逃してやると、恭介が姿を消す。すぐにヨツヤや后がやってくる。
(エピローグ その後)
もう3年くらい前に組んだ物だから、俺もよく分かんね。
今見ていると、どことなく「キノ」っぽいかも
こちら空想第七世界!
(〈オープニング〉 空想仁(ジジ)と五葉恭介との対話 戦乱を予期させる意味深な発言)
第一章 芸術家の世界
芸術家の国に住んでいる主人公――五葉(いつのは)陣は、芸術家の中でも画家を目指し、美術学校サイレスの絵画科に通っていた。しかし、学園長、兼絵画科コース担当官である空想ミミから「感情の無い、写真のような絵。ヨツヤ(抽象画家)を見習え」と批判されてしまう。それもそのはず、陣は幼い頃から感情と言うものを持っていなくって、表情は能面でも付けたかのように、ピクリとも動かないのだ。
このままでは留年が決まってしまう。陣はミミの眼の前で絵を描くが、彼の書き方は独特で、両手で鉛筆を握り、一度も紙を見ず、三秒足らずで仕上げてしまうのだ。ミミは驚嘆するも呆れ顔になり、「モノクロの設計士」と、陣の蔑称を口にする。去る陣を見て、ミミは「やはり奴の子か……」と呟く。
補修を受けるためサイレス(芸術学校)の屋上にある空中箱庭に閉じこもる陣。しかし、いくら描いても、〈書く〉になってしまう。陣は絵を放棄して、昼寝しだす。と、その時、空中箱庭中心にある水彩絵具の噴水の上に、金の装飾が付いた大きな旅行鞄が出現する。旅行カバンは陣が見ている前で、空中に静止すると、ふたを開く。中から女の子が出てくる。陣は絵具の噴水に落下した女の子を助け出し、人工呼吸する。(肩らへんにボディペイント※伏線)
眼を覚ます女の子。酷く錯乱していて、「私の鞄は!?」と陣に詰め寄る。女の子――空想七七七(ナナミ)は、鞄が噴水に落ちた事を聞いて潜ろうとするが、この噴水が塔を突き抜けるように地下から湧いていて、深さが五十メートル近くあることを知ると、泣き出してしまう。陣は混乱して「ミミに訊けば……」と口にする。七七七はそれに過剰反応する。この『世界』にはクリエイターが居るのかと。
そこに、黒衣を纏った男が現れる。男は不思議な銃を使って、陣と七七七を殺しにかかる。男の放った弾丸に触れた者は、何かに押しつぶされたようにして、ペッタンコになってしまうのだ。
完全に敗北ムードの七七七を連れて、陣は逃げようとする。その時、真っ白なキャンパスが眼にとまる。咄嗟に、陣は自分の自画像を描いてそれを身代わりにする。さらに、壁画を描きまくって入口を分からなくする。なんとか男から逃げ切って、陣は七七七から「世界が無数にある」事を知らされる。
世界は塔のように、上へ上へ石を積んだように出来ていて、それぞれに番号が振られている。この事を聞いて陣は「世界を見てくる」と言って旅立った父のことを思い出す。もしかしたら、父はまだ生きているかも……と、思いつつも鼻で笑う、そんなことはないと。そこに黒衣の男が現れる。男は陣達を殺そうとするが、間一髪、学園長の空想ミミが助けに来て、黒衣の男を捕縛する。
七七七は空想ミミが姉である事を暴露する。そして、〈創造主(クリエイター)〉と言う二つ名で呼ぶ。何故なら空想ミミは数多の世界の『生物』を作った張本人で、彼女の描いた絵は実態化するのだ。
ミミは七七七――ミミ曰く〈トラブルメーカー〉を異常に畏れており、さっさと違う世界に行ってくれと頼む。しかし七七七は、世界を移動するための鞄を失くしたと言う。ミミは、ならばと『扉』を使って違う世界へ行くように促す。
扉とは、その世界に一つだけある他の世界へ行くための門で、鞄とは、その扉を持ち運べるようにした道具だった。当然、陣の住んでいる世界にも扉はあり、それは学園サイレスの深層部に隠されているとのことだった。
機械の兵隊が、空中箱庭から現れる。ミミは「私が足止めするから陣は七七七を他の世界へ!」と、学園長らしい振る舞いを見せる。今が好機と、黒衣の男が檻を破る。陣は七七七と共にエレベーターで最深部へ。その間に、七七七は弱い一面を見せる。自分がトラブルメーカーと呼ばれるのは、来た世界来た世界でトラブルを巻き起こしてしまうからなのだと。蔑称を付けられている者同士、陣は強く共感する。
そこで、黒衣の男と再び対峙する。陣は誤って、七七七と共に扉から落ちてしまう……。
(挿入話 空想二と恭介の対話 姉妹についてをチョロンと出す)
第二章 魔女狩りの世界
深い森の奥で目が覚める。陣は元の芸術家の国に帰る方法はないのかと七七七に問うが、別の世界がある事をちゃんと認めたうえで(※通常、別の世界がある事は現地民に知らされていない。国政が厳しくなると移り住んでしまう可能性があるから)、世界を行き来する事ができるほど科学力が発達した国に行けば、帰る事ができる。と言う。
しかし、それが本当にあるかも分からない。陣と七七七は喧嘩する。そこに、わらわらと人が集まってくる。手には松明を持ち、眼は鋭い。彼らは陣達を神の遣いだと神格化する。そして、ある壁画を見せる。
それは紛れもなく、陣の父親――五葉恭介の絵だった。村人たちはこれまでのいきさつを説明する。数年前に現れた画家が、丘の上にある魔女の家へ行き、魔女を撃退した事……。七七七は、「そこに『扉』があるかもしれない」と、陣に相談する。
父がまだ生きていると言う事実を、真っ向から受け止められない陣、しばらく物思いに耽っていると、村人が「今、飢饉なのは魔女、空想碌(ろく)が生きているからだ。どうか、碌を殺してほしい」と相談する。魔女の名に聞き覚えのあった七七七は、渋い顔をする。空想の名に聞き覚えのある陣は、また姉妹かと七七七に訊く。七七七は「あの子は……特別な奴だ。付いてくるな」と、陣を村に残す。
館へ向かった七七七は碌と対面する。碌はちょっと狂った女の子で、人形を抱いている。七七七が碌の能力を心中で解説する。
碌は世界を作るために生まれた七人の中(ここでは明かさない)の、異質な存在で、ミミが作った生物(全世界の生物)を例外無く服従させてしまう。〈支配者(ドミネーター)〉の力を持っており、陣を連れてくると、陣さえも敵になってしまうのだ。
しかし、魔女本人である碌は、その力(眼が合うと、相手の心を思い通りにしてしまう)から人と接する機会がなく、孤独で寂しがっているのだ。(飢饉は偶然である事が判明)
唯一話す事が出来る七七七に、自分の話し相手になって一生傍にいてほしいと碌はお願いする。七七七はそれを断る。七七七は、陣を巻きこんでしまった事を後悔していたのだ。碌は七七七を幽閉してしまう。
村にいた陣は、いつまで経っても戻らない七七七を不思議に思っていた。陣は村人から「まだ魔女を殺せないのか」と訊かれて、「七七七の姉妹を殺したくない」と答える。村人うろたえるも、ここは撤退。
仕方なく、陣は付いてくるなと言われた魔女の屋敷へ行ってしまう。屋敷は廃墟のようで、陣は捕らえられている七七七を発見する。七七七は陣に逃げろと言うが、陣は構わず檻を壊す。そこに碌が現れる。碌と眼があっても平気な陣。
陣にはそもそも、感情を司る『心』がない事が判明する。碌に婚約を申し込まれる陣、それに嫉妬する七七七。そんなラブコメみたいなことをしていると、村人によって、館に火が付けられてしまう。
村人たちが集まって、碌を殺しにかかる。陣が庇うも、村人たちは碌を殺害。死ぬ寸前、碌は姉妹だけが持っている特殊なアイテム(七七七は鞄、ミミはペンを持っていた)。碌の名が入った首飾りを陣に託す。陣は自分に〈怒り〉と言う感情がないことを悔やむ、七七七は陣を救うため、館の中央に隠されていた『扉』へ飛び込む。
残された『魔女狩りの世界』の人々は、一向に飢饉が無くならない事を憂いて、今度は女子供のせいにする。次に、年老いた男性のせいにする。次に髪の短い……
(挿入話 空想二と恭介の対話 姉妹についてをがっつり出す。世界を作るための七人。そして、今は亡き『一(はじめ)』の事を思い出す。空想一は五葉恭介と結婚したのだ。そして、二人の間にできたのが空想陣。陣の名は仁から取った。その頃は姉妹は仲良しで、バラバラではなかった)
第三章 科学と魔法の世界
次に二人が降り立ったのは、高い城壁の上だった。碌の死を、まだ受け止められない陣。七七七は、なんと声をかけていいのか分からず、お互い暗い気持ちになる。そこで突然槍が飛んでくる。その槍は陣の胸に突き刺さり、陣は城壁から森の方へ落ちてしまう。七七七はその後すぐにやって来た男たちに捕らえられる。
陣は落ちてきたところを、男の『魔法』によって助けられる。男は「空想ヨツヤ」と名乗り、陣と同じ、元芸術家の国出身だった。〈薬王(ドラッグ・キング)〉の二つ名を持つ空想ヨツヤは、一瞬で陣の傷を治す。ヨツヤの能力とは、傷ついた物を例外無く修復させると言う物だった。
科学の国に捕らえられた七七七を救うため、一度魔法族の族長の元へ行く。その際、ヨツヤは多くの人間に感謝され、色々な物を治すのだ。ミミがヨツヤが居なくって寂しがっていた事を伝えると、ヨツヤは「自分はこの世界で必要とされている」と、きっぱり言い放ち、ミミへの思いを切り捨てる。
族長の元へついた二人は、そこで科学会の会長と、魔法界の族長との口論を目撃する。そこへヨツヤが間を割って入る。二人が話していたのは、誤って殺してしまった少年についてだった。
ヨツヤはその少年――陣が生きている事を伝える。会長達は胸をなでおろす。ヨツヤの指示によって、陣は七七七と会う事ができるように手配され、陣は科学会の方へ転送される。
一方、七七七は自責の念から科学会の方で保護されている。そこに、姉である空想后が現れ、七七七を抱きしめる。空想后には「感情・自我を芽生えさせる、促進させる」と言う能力があり、七七七は一時の安息を得る。そこに、実は陣は死んでいなかったと言う知らせが出て、七七七は「泣いた事を陣に言うな」と后に口止めする。后はクスクス笑いながらも、二人の再会と遠くから眺める。
その日の夜、后は陣を呼び出す。そして、七七七が〈トラブルメーカー〉と呼ばれる由縁を説明する。七七七は姉妹最強の能力、《世界を壊す・リセットする》力を持っており、それ故に、数多の世界から忌み嫌われているのだと。
そして、后は一刻も早くこの世界から逃げるよう説得する。科学と魔法はお互い一人ずつの〈空想〉と言う名の現人神を持って吊りあって来た。そこに世界をリセットする、強力すぎる力を持った七七七が加わっては不味いと言う事だ。
陣は七七七と共に、夜、ひっそりと抜け出す。そして、扉のあるところまで行くのだが……。そこで、科学の人間に見つかってしまい銃で攻撃される。当たったかと思われた銃はヨツヤによって、止められている。ヨツヤは拳銃が当たった部分をすぐに直すも、血を出しすぎてしまい意識を失いそうになる。助けに行こうとする陣を、蹴り飛ばして扉に沈める。
ヨツヤは科学会によって監禁される。
后とヨツヤが話し合う。……科学と魔法の戦争が起きる、と。
(挿入話 五葉恭介が「そろそろ行く」と立ち上がり、仁の指輪を奪う。「そんな事しても無駄だ、一は喜ばない」と言う仁を余所に、恭介はもう一つの鞄――空想一の鞄を使って消えてしまう)
最終章 完全な国
段々〈トラブルメーカー〉の気持ちが分かって来た陣、電気が全くついてない部屋で、ヨツヤの安否を気にする、突然景色が開け、陣は自分と同じような〈無表情〉の女の子に迎えられる。
彼女はここが『完璧な国』であることを述べ、七七七は別室で待機していると言う。そして、国王が待っているから先にあいさつして来いとも言う。陣は謁見の間で国王、父――五葉恭介に会う。父との再会に言葉を無くす陣。父は「世界はどうだった?」と陣に感想を求める。
一方、時は戻り、先に目覚めさせられた七七七は、恭介と鉄格子を隔てて対面する。恭介は七七七に言う。空想一の真実を。
空想一は陣を産んで直ぐにどこかへ消えてしまった。鞄を残して。彼女はい亡くなる直前、姉妹に自分の欠片を渡した。
それが仁の指輪だったり、ミミのペンだったり、ヨツヤのコートだったり、后の王冠だったり、碌のペンダントだったり……。それらは一の心の一部だった。
そして、空になった心に、生まれた子である陣から『世界を壊す能力』を奪った。それが空想七七七の誕生だった。陣の能力を奪う際、陣の心さえも奪ってしまった一、こと七七七は、自責の念に苛まれる。
自分の世界に帰る事ができる機械があると知った陣、父からある物を渡される。それは「感情を作る腕時計」だった。それを付けた瞬間、陣は初め心と言うものを認知する。この感動を知ってほしくて、七七七にはしゃいで報告すると、七七七は「そんなの……機械の感情だ」と、ためらいながらも批判されてしまう。
突然冷たくなった七七七に対して困惑する陣。七七七と喧嘩のようになって別れる。父を残して、陣は自分の世界へ帰る。
芸術家の世界に帰った陣は早速学園長の元へ、ミミは無事かと掛け入ると。学園長が、絵を描いてみろと指示する。陣はこれ以上ないほど見事な絵を仕上げる。ミミはそれを破り捨てる。「無機質で写真のような絵。それがお前の『心のこもった』絵じゃないのか? こんなの、機械が描いたのと同じだ。全く進歩していない」と批判されてしまう。
ミミの背後から、黒衣の男が現れる。黒衣の男は「さっき、完全な国が滅んだ」と言う。黒衣の男は完全な国に住んでいた科学者で、恭介の謀略を止めるため七七七を破壊しにきていたのだ。
恭介は七七七を使って、一を復活させようとしていたのだ。最強の破壊兵器と化した七七七は、一個一個世界を潰しにかかっている。現在魔法と科学の国と交戦している。そして、既に王冠とコートが奪われたと言う。
あと一個、陣の持つペンダントが相手の手に落ちれば、七七七としての自我は消滅し、一としての自我を取り戻す。そして、はじき出された『世界を破壊する』力は、陣の元へ帰ってくる……。
どうすれば七七七の力を納めることができるのかと言う問いに、ミミは「七七七の腕にもう一度封印を描く事が出来れば」と口にする。
自分の特技である早描きがあれば……! 陣は黒衣の男からあの銃を奪うと、空中箱庭へ行く。そして、追って来たミミたちの前で自分に銃を撃つ。重さが何百倍にもなった陣はあっという間に噴水の最深部に到達。鞄を開けて科学と魔法の国へ。
辛うじて攻撃を食い止める両国。やって来た陣の発言により、二つの対立した国が力を合せることになる。一瞬でも七七七を止めることができれば、再び封印をする。
両国の総攻撃に、一瞬怯む七七七。陣は破壊神と化した七七七を封印するため、ペンを走らせる。描き終えたと思った時、陣の腹を七七七の腕が貫通する。陣は倒れる寸前、七七七にもたれかかり、感情を作る腕時計を外す。
こんなのは自分の心ではない。そして、七七七への思いを吐露する。「いつもの君に戻ってくれ」と。七七七は怒気を失う。陣もその場に崩れる。崩れる直前、恭介の姿を目にする。恭介は陣から腕時計を奪い、六つの心を――一(はじめ)の心を完成させる。しかし、蜃気楼のように現れた一に諭されてしまう。七七七を守ろうと立ちはだかる陣。今は見逃してやると、恭介が姿を消す。すぐにヨツヤや后がやってくる。
(エピローグ その後)