波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

世代交代と歴史認識

2005-06-29 12:31:35 | 雑感

 最近,日本の保守系の網誌を覘いていると,韓国,北朝鮮,中共,台湾等から繰り出されてくる日本の歴史認識に対する情報調略に憤慨しているものが目に付く.思うに,日本がこのような批判の乱れ打ちを受けるという事態は数十年前から或る程度予想できたのではないか,と.戦前の支那大陸,朝鮮半島,台湾,そして戦時中の南方等での体験を持った世代がこの世から消え去る頃,即ち,当時の出来事を体験者として証言できる人々がほぼ鬼籍に入る時,此れらの人々のより正確な証言記録と次世代の絶え間ない真摯な継承努力があれば未だしも,双方の点において努力不足であった日本の場合,敵対する側から在らぬ嫌疑をかけられた際,反論に支障を来たす事はそれなりに予測できた筈である.
 更に日本側の問題だけでなく,日本批判国側の状況も日本に対して不利に働くと予想されたはずなのだ.戦前・戦後日本から便益・恩恵を受けた上記各国の関係者いたとしても,その事実を主張することが戦後の当該各国の体制において不利益を被るような状況が出来していたならば,戦前の日本と当該諸国の関係から考慮すると,このような関係者から事実に即した日本弁護の証言なされるはずはない.事実,韓国独立後,大統領李承晩が確立した国是の一つとしての反日教育,北朝鮮における日本統治下の協日派の粛清,台湾における1947年の2.28事件による本省人粛清とその後の長期にわたる戒厳令下の国民党外省人による台湾の情報・文化機関の独占等を見れば,日本を自由に弁護できるような状況ではない.中共共産党に至っては,日本を敵国と見做す共産党独裁体制である以上,問題外である.今日におけるような日本批判が1952年の日本の主権回復後,直ちに出来しなかったのは,当該国の政情が不安定であり,かつ,日本の経済力が強力ではなく,強請れるような状況ではなかったことも十分想像される.其のほかにも,今のような言い掛りを当時繰り出したとしても,日本側に十分反証できる証言者達がいたため,それを恐れて控えていたとも考えられる.その他,当該諸国の指導者達には,自国民向けの建前とは別に,直接・間接的に日本に感謝するものが少なからずあったのではないか.特に旧日本軍が自国の空軍創建に貢献した中共の場合など,満州を日本がロシア・ソ連より一時的に捻り取って置いてくれたことで,満州が旧外蒙古のような親ソ傀儡国あるいは沿海州のようにソ連の領土に組み込まれなかったため,戦後の漢民族の実質的な版図拡大に繋がったことを心中感謝せざるを得なかったであろう.
 そのような内心日本(の愚行)に感謝するところが幾ばかりかあった指導者達も鬼籍に入り,新体制建設のための反日教育を受けた世代が各国で指導者の地位に就くようになった.韓国の現大統領は,日本語が話せた前任者達と違い,日本語が全く出来ない.韓国の政治体制は間接民主主義かも知れないが,日本文化を排除する現在の国策は,言論等の自由が認められた英米型の自由民主主義ではない.このような防日政策が続く限り,当該政策による洗脳の犠牲者は後を絶たないであろう.台湾は,今本省人と外省人との間でせめぎ会いが続いている状況であり,本省人が今後安定して権力の座を占め続ければ,今までと違った状況が出来するかもしれないが,60年近くにわたる外省人が積み上げてきた反日史観・教育の成果は簡単に消え去るものではないだろう.中共の場合は,共産党独裁国家である以上言論の自由などあるはずが無く,正統史観が虚構の抗日戦に基づいている以上,土用の虫干し同様,折にふれて戦前日本の帝国主義という悪役に登場を願わなくてはいけない構造なのだ.よって,今後共産党独裁体制が崩壊し,新たな建国の物語が生まれ,反日的要素が薄まれば,今のような粘液質的反日調略は弱まるかもしれないが,全く無くなることは無いと覚悟することが必要ではないか.我々日本人が数百年経った今でも元寇を語り継いでいるように.
 日本人の「過去の事は水に流して」というような価値観を他国人も共有できるはずなどと努々思い込んではいけない.万が一,相手がそのような素振を見せたとしても,相手を確り見続ける冷静さが必要だ.世の中には,相手の美徳を踏み台にして自己実現を謀る人間もいるのだ.

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