父の日記 昭和17年

昭和17年の日記 
ようやく召集解除 神武屯を発ち東京へ向う

昭和17年4月25日

2005-04-25 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
25日(土) 晴れ 暑し

朝食事運搬の車輌で本部へ帰る。相川中尉は
愈々工合が悪く昼頃行李へ下がる。
今日は珍しく指揮班長自ら情報会報に行く。
昨日は田中少尉が行ってゐた。
午前中は押収自動車の書類整理、各隊へ
許可標識を配布する。
午后、敵が射撃して来てR本部の左前の方へ大きな
爆煙が上る。皆壕の中へ避難する。両大隊に射
撃を命じたが通信線の切断等で連絡がうまくとれず
R長イライラする。Ⅱの4中隊が射撃をする。
夕方浜辺の砂の上に夕涼みがてら寝転んでそのまゝ
眠ってしまふ。一時間程経って眼がさめる。風邪を
引きさうになる。慌てて将校室へ帰って寝る。

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昭和17年4月24日

2005-04-24 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
24日 (金) 晴れ 暑し

朝、食事運搬の時、自分で押収車輌を操縦して
本部へ行き隊長に連絡事項を話し、押収車輌
の一時使用願の書類の印を貰って又軍参謀
部へ出かける。行李から兵一名を借りて同乗させて
行く。Rstへ寄り、昼食を食べてからBalangaへ行
く。軍司令部参謀部第二科の右田少尉に会ひ、許
可証54枚此方の希望通りを貰って来る。Rstへ
三時半頃帰る。途中で故障、行李へもう少しと言ふ所
で故障、バッテリーのアース線がクサッてしまって機関
がかゝらないのだ。汗と泥だらけになってどうやら修理
しやっと行李迄帰る。夜九時。本部へ帰らず、行李
へ泊る。今日行李長鈴木大尉は入院したと。毎日数
名の入院患者で渋谷兵長が行李長代理だ。
マニラへ行った江波戸主計等が今日帰って来てお土産
のブドウ酒、ビール等を御馳走になり、すっかり酔って
寝る。
今日、一月に入院した洗い中尉と山元中尉が
退院してくる。R本部はΔ掛相川中尉が又身体の工合
が悪いと言ってゐるし野淵少尉がフラフラしてゐるやうな
状況で何時僕が指揮班の重要任務につかねば
ならぬかも分らぬ状態に一人でも丈夫な将校が増え
ると言ふ事は非常に心強い。新井中尉が一人来たヾけで
一安心だ。

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昭和17年4月23日

2005-04-23 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
23日(木) 晴れ 暑し
 
各隊の押収車輌の調査報告が集ったので
整理して今日軍兵器部へ連絡に行く。全部で
95車輌もある。大したものだ。
朝起床同時に行李に行って自動車で連絡に行か
うと思ったが本部行李共熱発患者が多くて操縦手が
不足し車が出ない。ぐづぐづしてゐる中に十時頃になって
しまった。丁度砲兵司令部へ行ってゐた僕の車が連絡に
行李に来てゐたので其れで行く事にする。Rstへ行き中食
を貰ってから佐藤中尉と一緒にBalangaの軍自動
車廠に行く。兵器廠にはウルサイ物のわかない将校が
ゐると言ふので敬遠して自動車廠に先づ連絡する。丁度
軍参謀部の将校が居合わせて簡単に話がつく。希
望通り作戦間車輌を貸与するから書類を以って
申請せよと言はれ、明日又来る事にする。
帰りに聯段に寄って夕食を御馳走になり六時頃
帰途に着く。砲兵司令部へ寄って帰らうとしたら司令部
の例の広場の所でブレーキに故障を生じおそくまでかゝっ
て修理したがどうしてもなほらず、あきらめて行李から車
を呼んで帰り、今夜は行李に泊る。時間は10時頃。
今日の聯隊本部だけの入院患者数が41名と、大した
数だ。これではコレヒドール島攻撃迄に全滅してしまふかも
知れない。困ったものだ。

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昭和17年4月22日

2005-04-22 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
22日(水) 晴れ 暑し、夕方雨あり、夜中風ひどし

今日は一日本部にクスブル。
午前はΔへ行き、敵情視察等、情況を頭に入れやう
と砲隊鏡でみるがテンで頭に入らぬ。一寸位見たので
はなかなか敵情は頭に入らぬものだ。午后は本部の位
置に下がって弾薬の現況を調べる。砲兵隊命令、聯
隊命令等が弾薬に関し明瞭に出てゐないのでわか
らぬ。夕方命令録をみにΔに行ったが命令録は
本部にあった。見たけれども弾薬準備に関しては不明
瞭。
夜は波際へ出て夕涼み、夕方敵が射撃して来て本部
の近くへ一発来た途端、本部の幹部連の慌てた
避難のしやうに腹を抱へた。弾丸がヒューッと音をたて
たヾけで慌てて壕の中へとび込んでしまふ。
浜辺へ寝やうと毛布を砂の上に敷いて寝たが十時
頃から雨が降りだしたので引き上げて将校室へ寝る。
今日昼頃青木大尉が西川准尉を散々に叱る。
命令通りに将校室の準備をしないとか、何とか、西川
准尉は散々だった。青木大尉も少し鼻が高すぎる
やうだ。相手は兵隊ではなし、もっと言ひ方がありさうな
ものなのに。意地が悪い。R本の団結の悪い点は
其処にあるのだ。午后から西川准尉は熱が出た
とか言って寝こんでしまふ。
熱発患者が日増しに増える一方だ。田中曹長
坂東伍長、其の他兵数名熱発して行李へ引込ん
だり本部で寝込んだり。

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昭和17年4月21日

2005-04-20 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
21日 晴れ 暑し

七時起床。朝の中に連絡事項の連絡をすます。朝
食のうまい事。Rstはやはり何でもうまい。内地米で、汁
も粉ミソなんかでないほんもののみそだ。
Rstから帰り際に手紙が来る。妹より三通、
叔父より一通。2月から三月の便り。東京の便りを聞く
と猛烈に帰心をそゝられる。妹は、僕のレコードを鑑
賞してゐると。久しく音楽を聞かないので内地が恋しくなる。
同じに召集された将校でもRstや大隊段列でのんびり
服務してゐるものもあれば、本部で苦労してゐるものもあ
るし、要領の悪いものは全く損をすると考へてしまふ。
まあ、お国のためだ。もう少しと思って我慢する。
十一時頃R本へ帰る。Δは2/3休養とか言ってΔへ
は将校一と下士官兵が1/3残って他は本部の位置
に下がって休養する事になってゐると。昼食后Δへ行って
みる。情報会報に各将校交替で行って貰ふと指揮
班長が言ふので僕も少しは情況を知っておかねばならぬ
し、困ったものだ。指揮班長が自ら情報会報に行
くのが当然なのに、他の将校に行けなんとは以ての外だ。
コレヒドールを眼鏡で眺めてから本部へ帰る。
今日は本部は病人は続出、指揮班長の機嫌悪
く西川准尉はデュデュに叱られ気分悪い。兵隊が
数名発熱、田中曹長マラリア、西川准尉も発熱
で全く処置ない。益々患者続出の模様。これでは
とても戦闘が出来ない。各隊共発熱患者続出
で困ってゐるやうだ。石井大尉入院、上島 崎山
市川中尉等も発熱。これではコレヒドールの攻撃
に差支へがありはしないかと心配される。
今夜は十時頃迄海辺で夕涼み、九時からヱ兵を
たてる。要員がゐないので不寝番指揮に一名宛二時
間交代の勤務。十時頃通信主の所に田中少尉と
一緒に寝る。

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