父の日記 昭和17年

昭和17年の日記 
ようやく召集解除 神武屯を発ち東京へ向う

昭和17年1月31日

2005-01-31 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
31日 (土) 晴れ 暑し

正月も最后の日となった。敵が最后と頼むBataan
半島攻略戦もあと二十数粁の所だが未だに
陥ちぬ。
今日は又一日休養。13.00から射撃するとか言ってゐ
たがせず、今夕、18.00から射撃する事になる。
Ⅰ/SAは141i、142iに直協を命ぜられ今夕を期
して攻撃開始、右翼隊が前進したがおくれてゐるの
で十五榴が協力してやらぬと前進できないのだ。
午后○野中尉が放列へ来る。一時間許り話し
て行く。Bataan半島はまだ一ヶ月かゝるだらう
なんて言っていたがそんな事もなからう。今我々が
直協する141i,142iは元来は比島駐屯の為
の軍隊で攻撃戦はやらない筈だったのださうだ
が兵団長閣下が俺にも攻撃をさせろと
許りに戦闘を横取りしてやってゐるのだと。だから
此の兵団は召集兵ばかりであまり芳しくないのだ。
今17.30もう少しで攻撃が始まる。
昨日は二中隊はあまり前に出すぎて敵の銃砲
撃を受け損害が多かったので昨夜少し後退した
我々の右側方の方へ放列を布いたらしい。
18.30より射撃開始。19.30より突撃支援射撃
各門17発射撃、十五榴野砲十加等一斉に射
撃を開始し気持よく砲声インインと響いたが其の后
第一線は銃砲声はげしくなりしばらくその音が続いて
ゐた。歩兵の突撃がうまく成功したかどうか。
今夜はこれで射撃は終り、十一時頃弾薬100発
受領。今夜は満月らしい。煌々と冴え渡る月の
光、陣中にみる満月に感慨一汐。
昭和十七年の正月も終りだ。

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昭和17年1月30日

2005-01-30 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
30日 (金) 晴れ 暑し

今朝は六時頃起床。朝早く射撃するかと思ったら
しない。今日の情況は友軍第一線は左翼隊の9i
はずっと前進したが中翼隊の14i及右翼隊の
142iは前進芳しからずMt.Samatの敵の居ない
両側を前進した所その後方に敵がゐて前進
出来ず。今日はその敵の掃討ださうだ。今日は砲兵
は射撃しないからゆっくり休めと。例の如く141i
142i供に成績あまりよろしくないやうだ。
放列では今日は手紙を書かせる。軍事郵便所は
既にDinarpianに開設され一中隊なぞは十日
も前から郵便を出してゐるのに三中隊は活躍鈍い
ためにまだ出さぬ。中隊段列が数日前に一、二回出
したさうだ。戦砲隊の検閲者として僕の認印を郵
便所に届ける。僕も馬公以来始めての手紙を
書く。ハガキ二枚。
十五時砲声切りとなり、此の放列の近くに数発落
下する。我々も敵に知られたか。損害なし。
例の142iは今日昼頃又敵に逆襲*されたと。
昨日から又腹工合が悪い。下痢するわけではな
いが数回通じがあり腹が痛む。壕の中に寝て
ゐても例の如く昼間は蝿がウルサク、夜は蚊に攻め
られてゆっくりと休めぬ。此処の蝿のウルサイ事はものす
ごい。いくら払ったとて図々しく寄って来るし、食物をおけば
当然の権利のやうに真黒にたかるし。
大○隊の下士官が(○木伍長)が連絡に来ての話、我々戦砲隊
よりも段列の方が情況がよく分る。此の前ラヂオで聞い
たモロン占領のモロンはMt.Samatの傍のマロアンの
事ではなく西海岸にあるモロン港の事だった。迂回
隊が占領したのだった。数日前は支隊とかが
Bagac港に敵前上陸し続々南下戦果拡張中
とか。もう敵はMt.Marilolsの要塞に引こもって
最后のアガキをしてゐるわけだ。もう完全包囲の態勢
は出来てゐるわけだ。Singapoleはあと20kmと言っ
てゐるがこれではSingapleの方がもう近い。此方はま
だ4-50kmはあるだらふ。Ⅱ/1SAはGuaguaに集結
して軍規教練や諸検査に日を暮らし、戦線の
後方の戦場整理、死体収容等をやってゐるさうだ。
のんびりしてゐる事だらう。此処が終ると豪州に行く
らしいと言ってゐる。比島にも相当兵力を集結してゐるとか。
遂に今日は一発も射撃せず終る。月が又満月に
近くなった。もう十三日頃か。此の月が欠けて無くな
ってしまはない中に是非供Bataan半島の攻撃
を終へたいものだ。昨年暮れにリンガエン湾に
上陸して以来既に一ヶ月以上過ぎた。マニラは
陥ちても未だにBataan半島は落ちぬ。
今夕、前進Δで通信手二名死傷、上ト兵
頭部をやられて即死。上ト兵大腿部をや
られて負傷。可哀想に。今日のやうに射撃のない日
はΔもあまり出ない方がいいのだ。

昭和17年1月29日

2005-01-29 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
29日 (木) 曇り

七時起床、中隊長は陣地偵察に行く。十時
頃から陣地進入、この辺は適当な陣地
がなくものすごい不斉地へ放列布置を命
ぜられる。凹凸の激しい僅かな凹地で各分
隊大工事をしてやっと進入。放列布置したら
今度は牽引車が出られなくなるやうなものすごい
悪い陣地だ。午后三時頃迄かゝってやっと射
撃準備が終る。Mt.Samatはすぐ目の前に
見え、左の方にMt.Orionがみえる。(放列か
らは見えないが)始めはMt.Orionの方向へ
準備せよと言はれたので其処へ準備した所
途中から今度は700も右のMt.Samatの方
向へ準備と言ふ。放列陣地が狭小なので
700許りの方向移動にも苦労する。二分隊
などは砲車位置を動かして方向移動する。
大体夕方迄に準備完了する。
敵もまだ砲兵健在らしく今日も射撃して来
る。我々の左方にゐるらしい十加の陣地が盛
に砲撃されてゐたやうだ。十加も随分射撃
してゐたやうだった。Mt.Samatには敵は居
ないやうだとか。今夜か明朝から攻撃開
始とか。今日も珍しく敵機が3機現れた
が慌ててすぐに引返してしまった。
夕方から射撃開始。第四分隊で試射i53陣地の
諸元を保留しておく。電話不通になり、前方で盛に銃
砲声が始まる。30分もすると電話が通じ直に53陣
地諸元トし、一分二発三分間集中射を実施、一分
前と言って来る。放側は慌てて準備したが一分間で
は準備出来ない。約一分おくれて実施、途中から
一分間急射と言って来るので三発連続各個射をや
る。此れで第一線歩兵は突撃に成功したと。例の
142iであまり芳しくないさうだ。此の射撃間は
Δは猛烈な集中射を受けて危険きはまりなかったと。
敵は主としてMt.Orion附近にありなかなか
頑固な縦深陣地を構築してゐるやうだ。
愈愈此れが最后の抵抗陣地だらう。
今夜射撃は此れで終る。第一線の銃砲
声は其の后も切りに聞えてゐた。敵砲兵は
一夜中撃ってゐた。十時頃寝る。
夜中一時頃弾薬100発到着。

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昭和17年1月28日

2005-01-28 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
28日 (水) 朝の中小雨、后 晴れ

今日もまだ待機らしい。午前中は又貨車の徴発
に出かける。昨日みに行った敵のΔ附近。フォード
の貨車があったがFuelポンプとハンドルが鍵
がかゝってゐてなかな鍵がこわれない。やっとこ
わして中隊の位置迄引張って来る。Fuel Pump
を他の車のと交換してみたがどうも工合が悪い
岡本と小島が一日かゝって直してどうや
ら動くやうにする。
今夕出発となる。畑の中の土煙のものすごい中を
一、二中隊の後を続○。Balangaから数粁
南進してMt.Samatを近く眺められる位置
まで来る。放列陣地が二ヶ中隊分きりないとかで
三中隊は今夜は放列を布置せずに露営。中隊
長のやうに功をせいて、いつも先頭に出たい人が
三中隊だけ放列布置しないなんて珍しい。
今日拾ったフォードは出発の時になって動かな
くなってしまい置いて来てしまふ。明日でも暇をみ
て取りに帰るつもり。昨日二小隊でWhiteの
貨車を一輌拾って修理する。機関は調子
はいゝ。水○がやる事にする。これで戦砲
隊も又車輌が増えた。昨日のフォードが
直って使へれば積荷の苦労はしないですむ
のだが。小島の貨車がどうも力がなくて
夜行軍の時は実際心配する。今夜も○
中で一回坂を上り切らず四輪起動で
引張る。Internationalの新車なのにどうも
調子が悪い。操縦手の小島もあまり技量*は
よくないやうだ。消防車の操縦手ではあまり上
手ではない。
二小隊の星野がやってゐる四輪起動と今
度拾った一小隊の四輪起動とはダッヂ
の貨車で実に工合がいゝ。積載量はあまり
ないが牽引力は相当にある。なかなか便利
ないゝ車だ。

昭和17年1月27日

2005-01-27 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
27日 (火) 晴れ 暑し

朝、陣地変換と言ふので放列を撤去して
前進の準備をしておく。一、二中隊が来たらその
あとを続○せよと言ふので道路上まで出て待
ってゐると、今日は陣地変換せず、此処に待機
だと。Mt.Samatには敵は居ないで友軍第一線
は相当前進してゐるらしい。今第一線は戦線を
整理し兵力集結中とか。
又、自動車の徴発に行けと言はれる。昨日も
午后みつけに行ったがみつからぬ。前の放列の
近くにあったのは中隊段列が持って来てしまった。
今日又みつけに行く。西の方へMt.Natibuの中腹
迄行く。四輪起動の前にみつけたのと同じの
を○村軍曹がみつけてそれを持って来る。機
関はすぐかゝったがタイアが三本パンクしてゐる。
ずっと奥の方へ行って同じ車輌の破壊され
てゐるのから車輪を外して来て取りかへる。此
の時に前の射撃で我々が射撃したと言ふ
敵のΔをみる。歩兵が射撃したらしく相当
の屍がある。臭い事。
今夜は又自動車の修理に十二時迄かゝってそれ
から寝る。中隊は全部此処へ終結した。何や
彼やとウルサクてゆっくり休養も出来ない。