★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/クロエ・ジャオ
これほど米国国土の美しさを見せる映画が近年あったろうか。それがアメリカ社会から追い出された初老の女を通じて描かれるという皮肉。しかし、広大な自然に立つファーンの姿には住み慣れた土地を追い出された敗者の影はない。ノマドの友にひたすら耳を傾けるマクドーマンドが圧倒的。
誰しも己の生き方を自分で選べる訳ではない。しかし、それは悲劇なのだろうか。ファーンの生き様をケンローチ的なアプローチで描く事も可能だが本作はそうはしない。ここには否定も肯定も批判もない。それが実に清々しい。そしてミナリ同様アメリカで生きることをアジア系監督が描いているのが感慨深い。