Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

パッチギ!

2006-05-23 | 日本映画(は行)
★★★★ 2004年/日本/119分
監督/井筒和幸 主演/塩谷俊、沢尻エリカ

「日本人としての自分を省みて」

1968年の京都。松山康介(塩谷瞬)はモテたい一心で、“キノコカット”にしている府立東高の2年生。そして、府立東高空手部と争いが絶えない朝鮮高校の番長アンソン(高岡蒼佑)たちは、修学旅行で京都に来ていた海星高校とケンカになり、バスを横転させて大騒ぎに。次の日、康介の担任は、“バス横転事件”の新聞を見せながら、朝高とのサッカーの親善試合を提案。たまたま試合の申込にいった康介はブラスバンドの音色に誘われるままに音楽室をのぞき込み、フルートを吹くキョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れするが、彼女は番長アンソンの妹だと知らされる…。

康介は、良くも悪くも人のいい日本人の象徴。一目惚れした朝鮮学校の女の子に猛アタック。そこには民族の壁も、両国の歴史も関係ない。というか、知らないし、考えてない。彼について「無知をいいことに勝手に行動しているバカ男」と考えるか、「無知だけど相手を知りたいと思う気持ちは人一倍なピュア男」と考えるか、その捉え方によって、ずいぶんこの映画の感想は変わってくるのだろうと思う。もちろん、無知な康介は、手痛いしっぺ返しをくらいます。朝鮮人の友人の葬式中「何も知らん、日本人のおまえには、いて欲しくない」と親戚のおじさんに言われ、帰されるのです。それでも彼は日本で流すことを禁止されている「イムジン河」を生放送で熱唱し、自分の思いを伝える。朝鮮高校と東校の学生たちが鴨川で繰り広げる壮絶な喧嘩のシーンをバックに、ここは劇中最も盛り上がる場面。でも、私の頭の中には「それでも日本人のおまえにはイムジン河を歌って欲しくない、と思っている朝鮮の人たちだっているんじゃないのか」という冷めた考えが頭をよぎってしまいます。

でも一方、康介ほどの行動力、相手を知ろうという熱意が自分にないこともまた、痛感させられる。康介というひとりの若者を通して、自分の朝鮮や朝鮮の人々に対する思いやスタンスを改めて認識させられる、それがこの映画のすばらしいところなのでしょう。だから、この映画を観終わって、なんだよ、康介なんてただのバカ男じゃないか、と感じたっていいのです。じゃあ、自分はどうなんだ、と振り返って考えてみる。それが大事なのだ、と。相手のことを何も知らないからといって、なかなか一歩を踏み出せずぐずぐずしている人間と、康介はあまりに対照的なのです。

できれば、康介の「イムジン河」への思いがもう少し伝わってくればなあ、というのが率直な思い。なぜ、彼はあれほどまでに「イムジン河」という曲に魅せられたのか。好きな彼女が演奏していた、ただそれだけではないはず。グループサウンズ全盛のこの頃、隣国の哀しい調べに心を奪われ、どうしても弾けるようになりたい、と彼を駆り立てたものは何だったのか。もしかしたらそれは、1968年という時代背景が関係しているのかも知れませんね。全共闘がゲバ棒振り回しているのに、キノコカットしてチンタラしている俺のハートに「イムジン河」がぐさっと突き刺さったのでしょうか。

最後に、朝鮮高校の番長役の高岡蒼佑くん。男前です。私の、要チェックリストに入りました(笑)。


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2 コメント

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Unknown (N)
2006-05-23 20:09:38
パッチギ見ました。

映画の出来の悪さには辟易しましたが、

それよりもこんな映画が賞を取っていることを思うと、

邦画のこれからが思いやられて暗澹たる気持ちになしました。
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>Nさま (love_train)
2006-05-23 21:05:59
コメントありがとうございます。

「日本人と在日朝鮮人の恋を描く」ということではかなり突っ込みが甘いなあ、と私も率直に思いました。あのラストも、非常に安直だし。ただ基本的に長々とレビューを書く以上、なるべくその映画のいいところを書こう、というスタンスでやっておりますので、少々甘くなってしまう部分はお許しください(笑)。



確かに昨年の賞を総なめしましたね。無冠の井筒に賞を、みたいな雰囲気が変に盛り上がってしまったのかも。いずれにしても、私は日本の映画賞をあまり信用していません。最近はキネ旬のベスト10もかなりミーハーになってきましたもんね。でも、基本的に邦画は好きなので、またいろいろレビュー書きますのでよろしかったらまたお越しくださいませ。
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