伝説の1047球だ!第59回全国高校軟式野球選手権大会は31日、兵庫県明石市の明石トーカロ球場で行われ、中京(東海・岐阜)は4日目に入った崇徳(西中国・広島)との準決勝を延長50回の末に3―0で勝利。2時間28分後に始まった決勝でも三浦学苑(南関東・神奈川)を2―0で破り、2年ぶり7度目の優勝を飾った。準決勝で50回を完封したエース松井大河投手(3年)は決勝でも好救援。72回2/3連続無失点で締め、球史に残る快投を演じた。
決勝で最後の打者を空振り三振に仕留めた1球は、今大会1047球目だった。「ヨッシャ~!」。中京の松井は、右の拳を天に突き上げると、絶叫した。歓喜の輪の中心には涙で両目を腫らした背番号1がいた。
「苦しい試合が続いていた。心が折れそうだった。仲間からの“いつか助けたるからな”という言葉を信じた」
あまりに長く、そして過酷な戦い。28日に始まった崇徳との準決勝は壮絶を極めた。0―0のまま3日連続のサスペンデッドゲーム(一時停止試合)となり、4日目に突入したこの日は午前9時に延長46回から始まった。
平中亮太監督は「怖かった。松井をこれだけ投げさせていいものなのか」と葛藤を抱え続けた。しかし、松井はマウンドに上がった。相手の先発も1人で投げ抜いてきた石岡。負けるわけにはいかなかった。
延長50回。ついに均衡が破れた。無死満塁から主将・後藤が右翼線へ2点二塁打を放ち、さらに1点を追加。その裏、松井は最後の力を振り絞り、2死一塁から35個目の三振で10時間18分の激闘を締めた。準決勝だけで709球。「(頑張れたのは)石岡君がいたから」。689球を投げたライバルと試合後は抱き合い、言葉を交わした。
松井 ありがとう。
石岡 絶対優勝しろよ。
松井 任せろ。
決勝の試合開始まで2時間28分。松井ははり治療とマッサージを10分受けた。「腰とケツがカチカチ。右腕と左腰も痛い…」。先発は2年生の伊藤に譲ったが、0―0の4回1死二、三塁のピンチで救援した。ここをしのぐと、味方が6回に先制し、7回は自らのバットで追加点。最後は「残っている体力を全て使った」と6者連続三振で2年ぶり優勝をつかんだ。
今大会、75回2/3を投げて1失点。1回戦の3回に1失点した後は72回2/3連続無失点だ。硬式では06年夏の甲子園を制した早実・斎藤佑樹(日本ハム)の69回&948球が「伝説」となっているが、それをいずれも上回った。「この記録をつくりたくてつくったわけじゃないけど、記憶と歴史に残ってくれるならうれしい」と感慨を口にした。
名前の「大河」の由来について、父・志修さん(47)は「生まれた頃にNHKの大河ドラマがはやっていたから」と明かす。松井が生まれた96年は平均視聴率30・5%を記録した「秀吉」。世界最長の延長戦を制し、「天下」を取った真夏のドラマは完結したが、続きはある。崇徳とは10月の長崎国体で再戦の可能性もある。石岡とともに軟式野球の注目度を高めた松井は「やりたいですが、今度は早く終わりたいですね」とクールに締めくくった。
スポニチアネックス 9月1日(月)7時1分配信
凄い試合で、両チームのエースが共に凄い
準決勝で敗れた崇徳の部員、保護者が決勝では中京応援団と一緒に応援
これだけ戦ったら敵というより同志
その光景に感動
記録にも記憶にも残る試合でした