象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

ルースの呪いとマリスの不遇と、そして”逃した鬼才”大谷の鼓動と〜されど大谷”その18”

2021年07月02日 04時34分57秒 | ベーブルース

 かつて、ベーブ・ルースは吠えた。
 ”この地球上に、60本を超えるホームランを打った人類がいたか?もしいたとしたら、オレ様が聞きたいくらいだ”
 MLBの長い歴史で、シーズン60本というルースの偉大な壁を打ち砕いたメジャーリーガーは4人いた。
 ロジャー・マリス(61本、1961)、マーク・マクガイヤ(71本、1998年)、サミー・ソーサ(66本、1998年)、バリー・ボンズ(73本、2003年)の4人だけだ。
 但し、マリス以外の3人はステロイド剤によるもので、伝説からは大きく外れる。
 つまり、ロジャー・マリス(写真)だけがルースの牙城を、34年ぶりに砕いた事になる。


ロジャー・マリスの悲運と伝説

 そのマリスも”ルースの記録を塗り替えてから野球が苦痛になった。NY?あんなイヤな所はなかったよ”と漏らした。
 まるで、ルースが呪ったかの様に、マリスは地元NYのファンからの罵声や嫌がらせを受けた。酷い時にはスタンドから椅子が投げ込まれた。というのも、ルースの記録はNYでは、”聖域”とみなされてたからだ。

 それに、1961年は8球団から10球団に拡張され、投手の質が低下していた。
 愚直で無口な中西部気質の彼は、”真のヤンキースの一員ではない”などと揶揄され続けたた。その上、フェンスギリギリの本塁打が多く、打率も2割7分前後と平凡だった事もあり、”ルースの記録を破るに相応しい人物じゃない”と酷評された。
 大記録を達成しても、ルースは154試合で60本を量産したが、マリスは現行の162試合だった事もあり、当時のコミッショナーは”参考記録”扱い(1991年公式記録)にした。
 しかしそんな不遇の大打者も、皮肉な事にマクガイヤやボンズらのステロイド使用疑惑により、マリスの偉大なる記録は再評価される事になる。

 私的な意見だが、ステロイド疑惑の3人の記録は公式記録から外すべきだと思う。それくらいしないと、ステロイドはともかく飛ぶボール疑惑すらなくならない。


ルースの呪いと逃した鬼才

 まるで、ルースの呪いに押し潰されるかの様に、大谷は僅か1回も持たずに撃沈した。
 本塁打王争いのトップで先発マウンドに上がるのは、長いMLBの歴史の中でもベーブルース以来、実に100年ぶりの事だった。
 それも、”ルースの建てた家”と称されるヤンキースタジアムでの記念すべきマウンドである。
 しかし天国にいるルースが、今や”鬼才”と評されるこの若造を、大人しく眺めてる筈がない。

 ”ルースの呪い”とは、地元では”バンビーノの呪い”として有名である。
 1918年にルースを放出したボストンは、86年(~2004)もの気の遠くなる間、ワールドシリーズでは勝てなかった。
 そこで、ルースのニックネームをとり、”バンビーノの呪い”と謳われた。
 因みに、このルースの呪いを解き放ったのが、代走のデーブ・ロバーツの盗塁だったのは有名な伝説だ。

 今から3年前の2018年4月、ヤンキースは大谷翔平獲得に全力を注いだが、最終面接にすら進めなかった。
 地元紙「NYポスト」は、大谷を”逃したフリーク(鬼才)”と称して大特集を組んだ。
 地元メディアは一時”大本命”とまで報じていたが、まさかの落選。
 しかしその衝撃は凄まじく、”大谷は大都市NYを恐れた”と決めつけ、”チキン野郎だ”と過剰反応するメディアも登場した。
 事実、この時の様子を多くのメディアは、”オオタニはNYと面談すらせず、地味なエンゼルスを選んだ”と振り返っていた(Full Count)。


大谷の躍動とスタントンの執念

 大谷がメジャーデビューした3年前の4月も絶好調だった。当初から、”フリーク(鬼才)に相応しい”能力を示してはいた。
 そして今年、”逃した鬼才”は更なる飛躍を見せつける。流石のNY地元紙も、”大谷を獲得できてれば、スタントンを獲得する事はなかった”と嘆いた。
 事実、2017年オフに大谷獲得に失敗したヤンキースは、仕方なく?スタントンと契約する。
 この契約が無謀だったのは誰の目にも明らかだった。事実、その後のスタントンは故障続きで、冴えないシーズンが続いている。

 一方で、”逃した鬼才”である大谷は、故障やトミージョン手術もあったが、順調にパワーアップし、今年は超次元の活躍を見せつけている。
 ヤンキースタジアムでの初安打が自己最速188キロの豪快弾となり、辛辣な地元メディアも大谷に対しては、”ベーブルースの領域”と最高の賛辞を送った。次の試合でも、2本のアーチを放ち、世界一の大都市のNYも静かにどよめいた。
 こんなヤンキースタジアムの雰囲気は初めてだった。静かな躍動と異様な興奮がNYと球場全体を覆っていた。
 (作られた感のある)9-11の衝撃も凄かったが、追い詰められた大谷の鼓動の方がリアルな迫力を感じたのは、私だけではないだろう。

 それに比べれば、野茂の快投もイチローの安打世界記録も霞んで見える程だった。
 何しろ、”神様”ベーブルース以外では世界中の誰もがやってない事を、大谷は淡々とこなしてるのだから・・・
 勿論、ルースは悲鳴をあげながらも、5年間”リアルな二刀流”をこなした。
 それに比べれば、大谷の躍動と鼓動は今始まったばかりだが、それにしても衝撃が凄すぎた。
 3戦目こそ、皆が期待するような結果にはならなかったが、”ルースの呪い”としては優しいものだったかも知れない。
 それ以上に、大谷のお陰でコケにされてたスタントンの執念が大谷を打ち砕いたとも言える。
 でも、こういう試合なら延々と眺めていたいもんだ。天国にいるベーブルースも流石に興奮して、ヤンキースタジアムに降り立ったのかも知れない。
 

伝統を打ち砕く大谷伝説

 ヤンキースは、大谷が”カネで動く”と勘違いした。事実、過去の大物メジャーも球団が大金をチラつかせれば、喜んでついていった。
 読売時代は”カネで動かなかった”ゴジラ松井も、同じ様に契約に拘り、墓穴を掘った。
 世界のイチローはマリナーズを追い出された挙げ句、チンケな年俸でヤンキースに逃げ込んだ。それも代打要員という屈辱をも受け入れ、ヤンキースを”特別なチーム”と称賛したが、それに見合う評価もギャラも手にする事はなかった。
 大型契約をしたスーパースター達は、その大半が惨めな思いをし、消える様にして去っていく。かつてのベーブ・ルースもロジャー・マリスも例外じゃなかった。

 大谷は、イチローや松井を超える鬼才いや天才である筈だ。天才と契約するには、その人の性格や理念や価値観をも含め、慎重に事を進める必要がある。つまり、天才とは気難しのだ。
 ビジネスで成功するにはお金だけ事足りるが、天才は存在するもので育てるものではない。故に、天才に必要なのはお金ではなく、大きく羽根を伸ばせる豊かな土壌なのだ。

 でも大谷が失脚するのは、過去の例にもれず、エンゼルスいや(もしかしたら)ヤンキースと大型契約を交わした瞬間だろうか。
 つまり、天才を腐らすのもこれまたお金なのである。

 まだまだ続く、大谷狂騒曲
 多額の血税を掛けなくとも、余分なインフラを整備しなくとも、オリンピックよりもずっとずっと盛り上がるじゃないか。
 伝説に彩られた伝統は、その伝説によって打ち砕かれる。
 そう、伝統とは打ち砕かれる為にある。
 大谷の咆哮と鼓動が、数々の偉大な伝説を生み続けてきたメジャーリーグの伝統を自らの伝説により打ち砕くとしたら?
 たとえそれが叶わなくとも、夢としては十分すぎるだろう。



10 コメント

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スタントンの執念と眼光 (tomas)
2021-07-02 08:05:12
が半端じゃなかったですね。
それに敵将ブーン監督も大谷の弱点を見抜いてました。
闇雲に振り回すんじゃなくよくボールを見極めれば自ずと四球で崩れると
実際にその通りになったんですが
アホみたいに振り回してるだけじゃ大谷を攻略できないことは明らかですよ。

特にルメイヒューの四球選びはさすがでした。あれで大谷は一気に追い詰められた。
一昨日は球場内がどよめいてましたが、昨日は冷笑に近い歓声が響いてましたね。
それでもNYのメディアは<2021年のベーブルース>と紹介してました。

状態としては決して悪くはなかったので
次に期待しましょう。
今日の雨天中止は神様ベーブルースが与えてくれた休養と思いましょう。
でも大谷の鼓動は夢であってほしくない。
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大谷選手ひとりいれば (平成エンタメ研究所)
2021-07-02 13:11:12
>多額の血税を掛けなくとも、余分なインフラを整備しなくとも、オリンピックよりもずっとずっと盛り上がるじゃないか。

そうなんですよ。
大谷翔平ひとりがいれば十分なんですよね。

アスリートが「夢と勇気を与えたい」と発言するのは、僕には思い上がりときれいごとにしか聞こえません。
お金のため、名誉のため、その後の人生のためと言ってくれた方が、よほどスッキリします。
日本の代表選手で、オリンピックについて発言がないのも残念です。
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tomasさん (象が転んだ)
2021-07-02 18:11:27
審判の判定も多少辛かったんですが
大谷の4シームにもバラツキがありました。スライダーも肝心な所では浮いてましたし・・・
わずか2本ののシングルだけでしたが、三振が思う様に取れなかっただけに、5つの四球が全て失点になりました。
言われる様に、ルメイヒューの四球が痛かったですね。
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エンタメさん (象が転んだ)
2021-07-02 18:17:24
言われる通り
”日本の代表選手にオリンピックについて発言がない”のが、本当に不思議です。
逆に、錦織や大坂なおみらのプロのアスリートらは、堂々と五輪開催の是非について意見を述べてます。
結局、五輪アスリートってIOCの奴隷みたいなもんで、IOCの腐った資金のおこぼれを啜って生き延びるゾンビみたいなもんですね。
コメント有り難うです。
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意地の2発 (tomas)
2021-07-03 18:11:49
雨天中止のお陰で
NYY戦のKO負けから見事に復調しました。
毎日がアンビリーバブルすぎる展開ですが
ゴジラ松井の31本にあと1本と迫りました。
ここ7試合で6発と
7月に入っても疲れによる心配はないみたいです。
まるで転んだサンのご心配をあざ笑うかのような展開ですねぇ〜
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tomasさん (象が転んだ)
2021-07-04 01:55:15
シーズン終了まで、romasさんとの付き合いも長く密になりそうですね。
投げる方で10勝すれば、神様ルースを抜きます。時代もレベルも違うんですが、アメリカでは誰もやった事ない快挙。

大谷も最初からこの記録を狙ってたんでしょうか?だからDHでの二刀流を模索してたと。というのも、ドジャースとの面談の時には外野を守る事をやんわりと拒否したらしいです。
但し、2頭負うものは1頭をも得ずとの諺もありますが、今の勢いからすれば、3頭くらいは捕まえますね。

トラウトがベンチにいましたが、主役を大谷に完全に奪われたせいか、全く元気がなかったです。でも今の時点で既にトラウトを超えちゃいました。
毎日が大谷劇場で、流石に疲れますね。
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祝4勝目 (tomas)
2021-07-07 18:08:19
今シーズン一番の安定したピッチングでした。
こういった投球をしてれば疲れや怪我の心配はない。
NYY戦での初回KOの後で中5日だったから心配したけど全然大丈夫でした。逆に大きな休養となり投球に余裕があった気がした。

転んだサンはもっと心配でしたでしょうが
7回を無四球でわずかに89球。そのうちストライクが65球(75%)とまるで精密機械でした。
この調子で行けば、ベーブルースの30本10勝はもちろん50本?10勝も夢ではなくなった。
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tomasさん (象が転んだ)
2021-07-08 03:44:15
東地区を独走するBOSの強打線がマジ顔でしたね。少し表情が引きつってるようにも見えます。それにエース同士の投げ合いは殺気すら感じました。
こんな緊迫したゲームを見たかったんですよね。まるで日米開戦そのもの。

でもラガーレスのHRキャッチがなかったらヤラれてたね。それに強打相手に7回まで投げきったのは大きい。6回までだったらウッチャられてた。
今日は珍しく興奮したよ。50本はどうかわかんないけど、いい線行くんじゃないかな。但し怪我さえなければですが。
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ここ10戦8発!とうとう松井超え (tomas)
2021-07-08 08:45:54
毎日がオリンピックの100M決勝みたいで
毎朝の興奮が日常になりつつあります。
転んだサンの正夢?から更に突然変異したような気もするんですが
このままで行けば50本どころか60本も見えてきます。

怪我さえなければの話ですが
今の大谷ならそんな不安の微塵も感じさせないですね。
でも気のせいか
大谷の通訳の態度がどんどんでかくなってるような・・・
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tomasさん (象が転んだ)
2021-07-08 12:02:06
その松井選手も大谷のことを”唯一無二の選手”と脱帽のコメントを贈ってます。
このままの調子で行ったとすれば、HR王争いはゲレーロJrが少し諦め感が漂っってますから、HR王も視野に入ってきた様な気もする。

後は何度も言うようですが、肩と肘のスタミナだけですね。これさえクリアすれば・・・
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