象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

「女教師アニタ〜ただれた情事」に見る、北欧系エロサスペンスの妙

2023年09月02日 09時45分10秒 | 映画&ドラマ

 タイトルだけを見ると、3本100円で投げ売りされてるAVビデオの様にも思えるが、ノルウェー作品(2018年)という事もあり、サスペンスとして見れば、見れなくもない。
 もし日本人がこうした類の映画を作れば、ポルノ動画みたいに成り下がるであろうが、北欧サスペンスとなれば興味深くも映る。

 女教師と教え子の”ヤバい関係”という点では、南欧的な熱くてエロっぽい何かを期待したが、女教師がオバさん過ぎて、男子高校生も16歳にしては老け過ぎで、濡れ場のシーンは興醒めにも映った。一方で、2人の泥沼劇はあっさりとした展開で、不思議とストレスが溜まらない。
 ただ、映画の作りが(この手の作品にしては)不思議と上品で、学校の建築から教育の仕組みまで、それらを取り巻く環境が日本よりも上級で優雅に感じた。
 結論を言えば、呆気ないラストを除いてはだが、そこそこの及第点を与えてもいいと思う。


女教師アニタ

 禁断の果実に手を出した臨時の女教師アニタだが、高校生のマルクスに一瞬だが心を許してしまう。年増の女には16歳の男の肉体は心の隙間を埋めるに十分すぎたのだ。
 マルクスは遊び半分だったが、アニタはそうは行かない。本気になった彼女だが、マルクスに年齢の事をバカにされ、更に彼には若い同級生の彼女がいた。
 悶々と怒りをこらえるアニタだったが、マルクスを思う気持ちは本気だ。やがて、マルクスの彼女のスマホを勝手に操作し、彼女の半裸画像をSNS上で拡散させるという暴挙を犯す。
 以降はドロドロの展開になる筈だが、予算の都合か?スタッフにやる気がなくなったのか?呆気ない幕切れで、少し拍子抜けもした。

 恋に落ちたと言うより、若い肉体を狂った様に貪り食い尽くすアニタだが、オバさんの”ホスト狂い”にも似てて、少し気味が悪い。
 マルクスの母親が”今度息子に近づいたら殺すわ”と脅すが、確かに仕掛けたのはマルクスだ。しかし、獰猛な野生動物の様に執拗に追いかけ続けたのはアニタだし、半裸画像を拡散させたのは立派な犯罪である。
 結局、アニタの(金持ちの)旦那が間に入り、彼女は教室の前で謝罪する事で問題解決となるが、そこらの詳しい描写は省かれている。
 ただ、マルクスが彼女とヨリを戻し、アイスキャンデーを口にしながら”問題は解決したよ”と薄笑いを浮かべるシーンは、アニタにとっては最大の屈辱であったろう。

 若者にとってはSEXはお遊びである。
 しかし、年増の女にとっては肉体と魂と人生を賭けた大勝負である。だが、明らかに捕食者はマルクスであり、アニタはどうもがいても被食者に過ぎない。
 故に、この手の作品はその殆どが女の負け戦で幕を閉じるが、アニタが(一時にだが)マルクスを支配した至宝の瞬間があった事も知っておくべきだろう。
 男と女の関係は食うか食われるかの関係でもあり、が故に駆け引きが存在する。
 恋愛とSEX(肉欲)は別物で、女が拒まないと確信すれば、どんな女であろうと(勿論限度もあろうが)男は一気に攻め込む。

 理性が囁く様に、ヤバい関係は確実に身を亡ぼす。淡い夢の後に残るのは冷酷な現実だ。子供なら”じゃあね”って(罪の意識もなく)家に帰るが、女はそうは行かない。つまり、全てを賭けてしまったのだから・・・
 理性には限界がある。一方で、肉欲とは正常な身体が常に求めてるもので、その欲求を制御する筈の理性だが、いとも簡単に砕け散る。野球で言えば、ゾーンに来た相手に限らず、クソボールにでもバットが出てしまうのが(恋愛とは違い)肉欲でもある。
 男は常に、自らのホットゾーンに女が来るのを待ち構えている。勿論、理想の女性が来てくれれば万々歳だが、世の中そう甘くはない。故に、理性を尽くしてトラップを仕掛けるのは男も女も同じである。
 つまり、肉欲というエロチシズムはその単純さが故に、理性をも簡単に打ち砕き、更に恋愛という曖昧な要素が加われば、最悪は人生をも狂わす。

 因みに、原題は”An Affair(En affære)”で、Affairは出来事という意味があるが、An Affairで不倫とか情事という意味になる。
 ただ、情事と言うより”性の暴走”に近いが、原題からしても、あまり力が入った作品ではなく、逆にサスペンスに傾倒する事で、何とか映画としての体を成してたように思う。
 少なくとも、ポルノっぽくならない所が北欧(ノルウェー)のゆとりというか余裕を感じた。
 という事で、今時の北欧サスペンスでした。



2 コメント

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tokoさん (象が転んだ)
2023-09-02 17:39:31
この作品は
中途半端と言えば中途半端ですが、上手くサスペンスに逃げたとも言えます。
賞を穫れるような作品ではないですが、無難に纏まった作品ですね。

「罪と女王」
この作品は面白そうですね。
ヨーロッパの賞を総なめにしたそうで、かなりシリアスに特化した、エロ型サスペンスみたいですか。
アマプラでも配信されてるので早速、見たいと思います。
教えてくださって有り難うです。
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罪と女王 (tokotokoto)
2023-09-02 14:47:34
これと同じ様な作品かどうかはわかりませんが
「罪と女王」という映画を見たことがあります。
デンマーク産?でしたか
とてもシリアスでした。
若い男に恋し壊れていくさまは考えさせるものがありました。

でも向こうのオバさんって
よくここまでヤるなって感じで、SEXシーンはまるで五十路シリーズのAVを見てるようでした。 
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