象が転んだ

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リーマン予想と素数の謎と”1の7”(20/7/23更新)〜ゼータの完備化とコーシー列と実数の定義と

2018年11月17日 05時52分36秒 | リーマンの謎

 ”その1”を”1の7”の8話で終わるつもりでしたが。急遽、最後に完備化と素点のお話を加える事にしました。ここである程度突っ込んだ方が、後々楽になると思ったからです。
 この完備化と次回の”1の8”で述べるカントールの対角線論法は、数論では非常に重要な位置を占めますので、少し丁寧に説明します。

 さてと本題に入ります。
 ”1の6”で触れた”完備ゼータ”ですが。paulサンから貴重なコメント頂いたので補足します。
 それと前にも言った様に、「リーマン教授にインタビュする」(小山信也著 青土社)を参考にしてます。縦書きですが、リーマンを学ぶにはオススメの一冊です。


完備化と有理数の収束と

 完備化とは、”(ゼータの)収束列の極限値を全て含む様に拡張する”事であると、前回”1の6”でも少し触れましたが、判り易く言えば全複素平面で収束するです。
 有理数体Qであるリーマンゼータを普通に拡張すれば、有理数体Qをはみ出し実数体Rに飛び出します。つまり、元々キレイな級数の和で表されるゼータ関数を普通に拡張すれば汚い級数になると。
 故に、無理数に収束する有理数列は実数では収束するのですが、有理数では収束しない。
 これは、√2に収束する数列{1,1.4,1.41,1.414,1.1412,,,,}を例に取ると判るんですが。
 この数列の全ての項は有理数体Qの元であるにも関わらず、極限値の√2のみがQの外にはみ出す(無理数)ので、有理数体Q内では完備ではない。よって、リーマンゼータを普通に拡張しても実数体Rになり、完備化出来ない。

 先程、収束する任意の数列の極限値を全て追加した、より広い集合を構成する事を”完備化する”と言いましたが。
 故に、実数体Rは有理数体Qの完備化として構成されます。そこで、収束有理数の極限を定義するのですが、上述した様に、√2に収束する有理数列は実数では収束するが、有理数内では収束しない。つまり、有理数の収束の定義が不完全なんです。


ゲオルク•カントールとコーシー列

 そこで、ロシア生まれの大数学者カントール(Georg Ferdinand Ludwig Philipp Cantor 1845〜1918)の登場です(イラスト右下)。
 1872年に彼は、収束有理数列を”コーシーの収束判定”を満たす有理数列に置き換え、実数を定義できる事を証明します。

 このコーシーの収束判定を満たす有理数列は”コーシー列”と言われ、”実数とは有利コーシー列の極限値である”と簡潔に定義され、今に至る。
 つまり、有理数列をコーシー列の様に有理数体上でも収束できる様に実数を定義した、リーマンに勝るとも劣らない凄い人です。
 因みにコーシー列とは、十分先の方で殆ど値が変化しなくなる(収束)有理数列です。判りやすく言えば、十分先にある任意の2元間の距離が限りなくゼロに近づく事ですね。
 上述した様に、コーシー列が全て収束する様な集合を”完備”とを言います。故に、”完備化=コーシー列の収束”という概念を頭に入れときましょう。

 前述した様に、有理数全体の集合Qの完備化とは、実数全体の集合Rでした。
 故に、実数とは有理数からなる収束列の極限点の事で、”全ての実数の集合は全ての極限点を含む”のですが。全ての極限点を含む様に、有理数全体の集合を広げる事こそが完備化なんです。何度もしつこいですが、とても大切な所ですね。
 そこで、収束列を正確に(都合よく)定義する為に、”収束列はコーシー列と同値である”というカントールの定理が必要だったんです。
 この”コーシー列(収束列)”の導入により、実数の定義を知らなくとも、有理数のみを使い、収束という概念を定義でき、実数の定義が可能になりました。
 言い換えれば、有理数の集合に対し、2つの数の距離をその差で定義し、その距離に関して完備化(収束化)したものが実数であると。カントールが登場する前は、実数の定義すら完全じゃなかったんです。

 故に、有理数体Qであるリーマンゼータを完備化しても、有理数体Qで定義できる。
 paulサンのコメントを借りれば、無理数を適当な所で打ち切って有理数とみなし、有理収束数列と見れば、コーシー列と一緒ヤンてとこですかね。つまり、前述した√2(無理数)の極限を途中で打ち切って、収束値とみなすと。
 結局、大暴れする淫乱な?ゼータ関数を収束させ、完備化すれば、こっちのモンよってとこか。


最後に 

 数学の世界では収束する事が基本なんですね。しかし現実世界では、発散する物事が殆どです。でも数学の世界では発散したら困るんです。定義も定理も法則も公式も全て成り立たなくなる。
 数学が世間外れの学問であるのは、こういう所からも来てんでしょうか。つまり、数学的に考えるという事は、恐ろしく捻くれてる事でもある。

 次々回のp進絶対値”でも述べますが、現実世界と数学の世界があまりにもかけ離れてるんで、数学と音楽のセンスがない人は、全く混乱するでしょうか。でも慣れるしか他に方法はない。

 ”天才とは99%の努力と1%の閃きだ”とエジソンは言いましたが。”数学も1%のセンスがなければ99%の努力は報われない”と言えるかもしれません。



6 コメント

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わざわざブログにしていただいて (paulkuroneko)
2018-11-17 11:21:26
有難うございます。わざわざブログにしていただいて。
結局、完備化って、転んださん言うように収束させる事で。無理数を適当な所で打ち切って有理数とし、有理収束数列と見れば、コーシー列と一緒ヤンてとこですね。少し強引ですが(^-^;。

カントールの対角線論法も、実数の最小単位を持ってきて、加算無限よりもデカい事を逆説的に証明するんですが。イメージ的には当たり前ヤンてとこですが。

カントールは1つ1つパズルを埋める様にして、これを証明したんです。これも転んださんの"有理数と無理数"ブログを理解してれば、スンナリと入れそうですが。補足になってませんかね(-_-;)。
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何時も有難うです (lemonwater2017)
2018-11-17 14:15:11
paulさんのコメントの方がずっとわかり易いですね。

 出来るだけバカ正直に忠実に説明したつもりですが、少し回りくどくなったみたいです。反省反省。

 カントールの対角線論法は、もう少し丁寧に説明しようとも思ったんですが、字数が5000字を超えそうになり、少し省略しました。

 paulさん言うように、実数が加算無限を大きく超える事は、イメージ的にも把握できそうですが、カントールはそれを1対1の写像を使い、格子に埋め込む様にして1つ1つ解き明かしたんですね。

 遠回りこそが近道である事を教えられたような気がします。これからもアドバイス宜しくです。
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リーマンの謎シーズン1 (hitman)
2018-11-18 03:17:38
リーマンの謎シーズン1もそろそろ終了ですか。

なかなかついていけませんでしたが。リーマン予想の外郭は何とか掴めたかと思いますが。強がりかもしれません。

ゼータ関数という得体の知れないものを、解析接続で一つ一つ丁寧に組み立てて拡張していったというとこですか。少しアバウト過ぎますか。

そして、今日はそれを完備化したんですが。発散するやつを収束させるという点では、解析接続と同じなんですね。
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収束=数学 (lemonwater2017)
2018-11-18 09:48:39
hitmanさんお早うです。

いいとこ突いてますね。完備化も解析接続も収束が前提となってんですね。収束するが故に定理が定義が公式が成り立つんですが。

数学のセンスというのはそういう所だと思うんです。数字に強いとか、数学が得意とか、勉強ができるとか、そういう普遍的なものじゃなく。

そういう意味では、hitmanさんの数学指数というのは相当に高そうですね。

これからも宜しくです。
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私も昔は数学好きだったんですが (びこ)
2018-11-19 05:45:14
最近は全くです。それで、この記事を読ませてもらってもチンプンカンプンです。年を取っただけでなく頭も悪くなったようです。トホホ

しかしこういう難しい記事にも読者がいるのはさすがですね。
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ビコさんコンニチわです (lemonwater2017)
2018-11-19 12:57:48
 数学は世間ハズレしてる所があるので難しく感じるケースは多々ありますが。実際に難しいのは半端ないですが(笑)。

 数学の世界は絵画とよく似てて、意外にも自由な発想と幅広い柔軟な思考が必要になってきます。数学バカがホントに馬鹿になるのも頷けますね。
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