披露宴も愚かな程シンプルに限る

　今から､20年程前ですか。隣組の結婚式です。新郎は同級生なんですが。それ程仲良くもなかったんです。近所付き合いという事で､渋々参加したんですが。これが実に素晴らしい披露宴だった。もう､披露宴の究極の完成形がそこにはあったんです。

　
　それまで､披露宴というと､農耕族の大宴会という味付けで､最初だけが盛り上がり､最後は悪酔いという､安直で雑なパターンが殆ど。カネ包むだけ無駄っていうイメージしかなかったんですが。

　でも､コレに限っては違いましたな。先ず､料理がとても美味しかった。握り寿司にステーキにデザートに､全てに完璧だった。勿論､料理に金かけてる分､引出物はそれなりですが。

　それに､シンプルでとても良かった。田舎のホテルで行われたので､式場を専有出来て､居心地も実に良かった。ホント､披露宴の理想形がそこにはあったんです。

　余計な装飾や出し物や派手な演出を省く事で､従来の形骸化し､超マンネリ化した披露宴が､これ程までに素晴らしいものになるとは。式場スタッフの着飾った音頭取りも､新郎新婦の友人の馬鹿丸出しのスピーチもないから､実にストレスなくスムーズに進んだ。

　全ては”間”なんですね。都心のホテルの披露宴みたいに､次の組を意識し､急ぎ過ぎてもいけないし､ド田舎みたいに無秩序にダラダラだと､一生に一度の祭典が全くの台無しとなる。

　それに､引出物に鍋とかバスタオルとかブランドものの皿を用意するバカがいますが。これはアカンです。それと､披露宴の帰りにそのまま風俗店によるスケべ親父。二次会に､行きつけのスナックに行く馬鹿。披露宴の完成度が高く､充実してたら､二次会や風俗嬢は必要ないのだ。

　とある上司が､部下の披露宴が続き､家計を圧迫したお陰で､ブチ切れした妻から刺殺されたっていう悲劇があったけど。披露宴の後､ホロ酔い気分で刺殺されたら､堪んないだろうな。
　
　そう考えると､日本の披露宴はお金と時間が掛かり過ぎて､式場側だけが儲かる仕組みに成り下がってる。お祭り好きな農耕族の弱点を付いた商売なんだけど。

　余計な演出や引出物をなくすだけで､結構な経費が浮く筈。こういう事を言うと､一生に一度の結婚式？だから､ケチる事無いだろうって言われそうだが。招待される方は､不特定多数の披露宴の一つに過ぎない。人の数だけ披露宴がある訳で､余程親密でない限り､断るのも手ではある。

　披露宴においても､人間関係も人生においても､全てにおいても､”愚かな程シンプルに”なんですね。