象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

リーマン予想と素数の謎と、その1の9(20/8/1更新)〜素数の完備化である素点とP進距離と、完備ゼータの繋がりと〜

2018年12月14日 01時34分13秒 | リーマンの謎

 今日は、”P進距離”という聞き慣れないテーマです。これは、前回”1の8”で述べたカントールの無限大の考察に加え、完備ゼータにとって欠かせない概念です。
 とにかく数学とは”収束”という概念が前提になる訳で、完備化も素点もP進距離も収束というのが前提になります。
 結構ややこしく抽象的な話になりますが、収束という概念を頭に入れとく事が肝心です。今日も長くなりますが(悲)、宜しくです。

 因みに、この”P進距離”ですが、6千字を超えるので2回に分けます。


前回までのおさらい

 ”1の6”でも少し述べましたが。完備ゼータを語るには、素数よりも素点の概念が必要と言いました。つまり、”素数”の概念を拡張した”素点”という概念があり、この素点とは”体を空間として素数を完備化する方法”の事でした。

 この完備化の例として最初に挙げたのが、実数全体の集合Rでしたが、それは有理数全体の集合Qの完備化でした(実数も有理数も体になってる事に注意です)。
 実数とは有理数からなる収束列の極限点の事で、つまり、全ての実数の集合(実数体)が全ての極限点を含むように、集合を広げる事が完備化であると。上述した体の完備化”とはこういう事ですね。
 因みに、完備とは英語で”完全、完璧”と訳されますが、有理数は収束しないコーシー列が存在するから完備(完全)ではなく、その有理数を完備化したものが実数になります。つまり実数とは、有理数の不完全な部分を全て備えた完璧な存在なんですね。

 そこで”収束列”を正確に定義する為、カントールの定理(収束列はコーシー列と同値)を導入する事で、有理数のみで実数を定義する事が可能になったんですが。この最初の完備化こそが、素点の最初の例ですね(”1の7”参照)。”第一の完備化”として覚えときましょう


素数と素点との関係とP進距離と

 次に、素数と”素点”との関連ですが。前述の様に、素点とは素数を使った別の完備化の事です。そこで各素数ごとに”P進絶対値”を考え、”P進距離”を用い、有理数全体の集合Q(有理数体)を完備化出来るのですが。
 これこそが”第二の完備化”であり、素数を使った完備化という事です。

 でも、”P進距離”とは”P進絶対値”って何なの?よって。
 Pは素数ですが、1つ1つの素数に対し、何か距離を定める規則が1つ決まります。故にP進数とは、2進数、3進数、5進数、、、と素数ごとに決まる数の概念です。
 非常に変わった概念で混乱しますが。

 まず素数Pを例にとると、正の整数は必ず0以上P−1以下の整数からなる有限列{a₀、a₁、、、aₙ}を用いて、P進法表示であるa₀+a₁p+a₂p²+•••+aₙpⁿと書ける。
 故に、この和が無限に続いてるものと考える数こそが、”P進数”(P進展開)です。
 ここで頭を悩ませない様に、あくまでP進数の大まかな説明です。


P進数の概念とコーシーの収束列

 このP進数の世界では、”Pⁿと0とのP進距離をP⁻ⁿとみなす”から、nが大きいほどP進距離(=P⁻ⁿ)は小さくなり、上の無限和はP進距離の世界では収束するP進距離を使い、発散する筈の無限級数を収束させるとはこの事ですね。
 別の言い方をすれば、有理数の集合に対し、2つの数の距離を、”2数の差の分子がPⁿで割り切れる時、2数間の距離をP⁻ⁿ”と定義し、P進距離とします。つまり、Pⁿで割り切れるほどにP進距離は小さくなる。
 例えば、5と6の差は1、5と11の差は6、5と77の差は72で、5からの距離を考えると1<6<72となる。しかし、素数3からの距離(3で割れるほど近い)という概念で考えると、1は3で割り切れないが6は割り切れ、72(=2³3²)は3で2回割り切れるので、この”3進距離”は72<6<1と全く逆転する。これでも、まだピンとこないですかね。

 つまり、”Pの何乗で割れるか”を用いて”P進距離”を定義するんですが。
 この”P進距離”を基準に、コーシー列すべてが収束列になる様に、集合を広げた世界(完備化)がこそP進数の世界です。
 このP進数の概念はコーシー列と共に、現在では数論の非常に多くの分野において用いられ、とても基礎的で不可欠な概念ですが、数の基本は実数にあるという常識を打ち破るのが、P進数の奇怪な世界とも言えます。

 
完備化と収束と”P進”距離の概念

 まず、完備化の定義では収束の概念が必要ですが、収束とは極限値との距離が限りなく0に近づく事でした。
 コーシー列の定義で言い換えれば、任意の2点間の距離が限りなく0に近づく事が完備化です。つまり、距離の概念が定まれば、収束の概念も定まるんです。数列を距離とみなすんですね。

 因みに、私達は有理数を数直線上で考える事が多いですが、それは無意識に有理数を実数の一部とみなしてるからです。故に、2点の距離を考える時、どうしても数直線上で考えてしまう。
 しかし、”P進”とはそういった無意識の習慣を排除し、純粋に数学的な絶対値の定義を使って得られる概念です。
 この”P進絶対値”を使えば、有理数全体Qを実数Rとは違った形で完備化出来ます。こうして出来る第二の完備化を、”P進体=Qp”で表します。
 つまり、”P進絶対値”から”P進距離”が定義され、”P進収束”の概念が生まれ、有理数体Qの新しい完備化である”P進体”Qpが構成できると。益々頭が混乱しますな。


P進絶対値の定義

 上述した様に、この”P進絶対値”は”Pの何乗で割れるか”で定義します。つまり、1つの素数Pだけに注目し、サイズ(距離)を測るんです。
 つまり、素数を数ではなく距離という概念で捉えるんですね。
 でも”P進絶対値”って、実際どんな数なの?って。Pの高いべき乗で割れる程にゼロに近い数とはどういう意味なの?って。
 確かに、0自身はどんなに高いべき乗でも割れるのですが、ここから、P進絶対値の説明に入ります。

 ここで、整数nがυ(n)乗で丁度割り切れる時、nのP進絶対値を|n|ₚと表し、|n|ₚ=p^(−υ(n))と定義します。
 例えば、p=2の時、n=2,3,4,5,6,7,8に対し、2は2の1乗で割り切れるからυ(2)=1。同様に、3は2の0乗(2⁰=1)で割り切れ、υ(3)=0。4は2²で割り切れ、υ(4)=2。5は2⁰で割り切れ、υ(5)=0。6は2¹で割り切れ、υ(6)=1。7は2⁰で割り切れ、υ(7)=0。8は2³で割り切れ、υ(8)=3。
 故に、|2|₂=2^(−υ(2))=2⁻¹=1/2、|3|₂=2^(−υ(3))=2⁰=1、|4|₂=2^(−υ(4))=2⁻²=1/4、|5|₂=2^(−υ(5))=2⁰=1、|6|₂2^(−υ(6))=2⁰=1/2、|7|₂=2^(−υ(7))=2⁰=1、|8|₂=2^(−υ(8))=2⁻³=1/8、となります。
 確かに、2ⁿで割り切れる程にゼロに近くなってますね。こうして実際に書いてみると、理解出来るのが数学の摩訶不思議なとこなんです。

 
P進整数からP進有理数へ

 次に、これを整数から有理数に拡張します。有理数m/nのP進絶対値は、|m/n|=|m|/|n|=p^(υ(n))/p^(υ(m))=p^(υ(n)−υ(m))と定義できます。
 つまり、分母nがpで割れる時、”負のべき乗−υ(n)で割れる”とみなします。 
 例えば、p=2に対し、|2/1|₂=2⁰⁻¹=1/2、|4/5|₂=2⁰⁻²=1/4、|8/9|₂=2⁰⁻³=1/8、となります。”2数の差の分子がpⁿで割り切れる程に収束する”とありましたが、全くその通りになりますね。
 故に、”pⁿと0とのp進距離をp⁻ⁿとみなす”とはこの事で、”2数の差の分子がpⁿで割り切れる時、2数の距離をp⁻ⁿと定義”するとはこの事です。

 普通の絶対値とは趣がかけ離れ、奇異に感じますが。以上の例を見て、まず大きな違いは、”P進”の値がPのべき乗しか取り得ない。つまり離散的な飛び飛びの値をとる。2つ目の違いは、”Pで割れれば割れるほど0に近い”という事。
 一方簡単な例で、2進数の時、公比2の等比数列、{2,4,8,16,32...}を見ます。
 通常の絶対値では無限大に発散するこの数列は、2進絶対値では0に収束します。その上、p以外の他の素数を掛けたり割ったりしても、0に収束する。割り切れるほどゼロになるとはこの事ですね。


P進有理数からP進無理数へ

 では、上述した”P進体”Qpに属する数で、有理数に属さない数字、つまり”P進無理数”にはどんなものがあるの?って。 
 例えば、”2乗して−2になる数”、つまり、複素数に相当する数√-2は、3進体Q₃に属するんです。実数でいう無理数√2やπに相当する数です。これには2つの例があるんですが。

 α=1+1・3+2・3²+0・3³+0・3⁴+2・3⁵+・・・を考えます。通常の絶対値であれば当然無限大ですね。
 しかし、これを2(3−1)以下の整数からなる有限列{1、1、0、0、2、、、}の3進法表示と見ると、収束するんです。一般項の3ⁿの3進絶対値は3⁻ⁿですから、nを限りなく大きくすれば0に収束するので、αも収束する。 
 でも、収束した時の極限値が有理数でない事は明らかですね。2乗して−2になる様な有理数なんて存在しません。

 故に、αに収束する”有理数列”を見つける事が出来れば、そのαは複素数ではなく”3進無理数”である事が理解出来ます。
 つまり、”1の7”で、無理数√2やπを有理数に付け加え、集合を広げ、(第一の)完備化した様に、今度は、αの様な数(3進無理数)を加える事で、P進有理数列をP進無理数に収束させ、新たな”第二の完備化”が得られます。

 これは、αの定義式のうち、最初のn項の和をaₙと置くと簡単に説明出来ます。つまり、a₁=1、a₂=1+3=4、a₃=1+3+18=22、、、です。
 この数列がαに収束する事は、各項とαの差の3進絶対値を1つ1つ順に計算して示していきます。
 まずα−a₁は、第2項の3から先だけが残るので3で割り切れる。次にα−a₂は、第3項の9から先が残るので9で割り切れる。α−a₃は、第4項の27から先が残るので27で割り切れる。
 これを一般項で表せば、各項とαの差の3進絶対値は、その定義(2数の差がpで割り切れる時、このP進距離は|α−a|p=p⁻¹)により、|α−a₁|₃=1/3、|α−a₂|₃=1/9、|α−a₃|₃=1/27となり、任意の自然数nに対し、|α−aₙ|₃=1/3ⁿが成立。
 故に、lim(n→∞)|α−aₙ|₃=0で、lim(n→∞)aₙ=αとなり、αに収束する”有理数列”を見つける事が出来ました。


第ニの完備化と完備ゼータ

 勿論、このαは有理数ではないが、3進有理数列の極限値である事が判ります。第一の完備化の様に無理数を小数展開の極限値と見なした状況と同じですが。
 ここで、αは実数ではない新しい数です。このαの様に、P進絶対値による極限値として現れる数を”P進数”と呼びます。
 一般には複素数であっても、P進絶対値に置き換えると”P進数”(P進無理数)という極限値になる。つまり、P進数全体がP進体Qpとなるという”第二の完備化”ですね。

 通常の有理数もP進数の一種であるが故に、有理数全体の集合Qの完備化として、実数全体の集合RとP進体Qpの2種類が得られました。有理数の完備化と素数の完備化です。
 後者は”素数をP進距離に置き換えた完備化”といえば判り易いですかね。
 以上より、素数pの完備化であるP進体Qpは全ての素数pに対してそれぞれ存在するので無限個ある。故に有理数体Qの完備化は、これで全てである事が証明されてます。

 つまり、距離自体は様々な定め方があるが、距離を用いて完備化して現れる集合はこれで全てという事ですね。
 例えば、距離を別モノで定義しても、その距離を使って完備化すれば、元の完備化と同じ集合しか現れないと。
 つまり、完備化で得られた素点は、距離の定義の仕方には依存しないんですね。

 何度も語った様に、”素数全体に渡るオイラー積”が元来のゼータ関数でした。故に、これに無限素点を付け加え、”素点全体に渡るオイラー積”をとったものが完備ゼータになるんです。
 つまり、オイラーが発見したゼータ関数に、ガンマ因子”Γ(s/2)π^(−s/2)”を掛けたものがリーマンが発見した完備ゼータ関数ですから、この完備ゼータこそが”素点全体に渡るオイラー積”になる。
 事実、オイラー積を形成する各素数pに関する因子(1―p⁻ˢ)⁻¹は、P進体Qp上のある定積分として表されるんですが、それと類似の積分を実数R上で計算したものがガンマ因子となります。
 故に、ガンマ因子は”無限素点に関するオイラー積”と意味づける事が出来ますね。

 ”完備ゼータの方が普通のゼータよりも纏まった意味を持つ、それ自体が意義の深い概念である事は関数等式の簡潔な形を見れば明らかだ”と、小川博士も語ってます。

 
最後に

 以上で見てきた、この素数の完備化とP進体については、かなり抽象的で気難しいですが。大まかな概念だけは理解できそうですかね。
 でもこれだけじゃ、とても理解出来そうにないので、後日”補足版”を乗せる予定です。  
 ウエブ上では、”P進”に関する説明が多く出回ってます。自分に合ったものを探すのが、理解を深める一番の近道でしょうか。

 特に数論に関しては大の苦手で、勿論書いてる本人も十全に理解してる訳でもないのでご心配なく(悲)。



4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Re:p進数って (lemonwater2017)
2018-12-18 06:29:40
tomasさんお早うです。

ここで言うP進数とは、P進法とは別物と考えた方が誤解はないですかね。あくまで収束させる為の特殊な定義を持つ数の概念と言うか。

でも、tomasさんの言いたいこと痛い程解ります。だから数学は誤解が多いんです。統一され標準化されるべき所がバラバラですもんね。

ただ収束という概念が数学の全てなので、頭を空っぽにして、P進数という特殊な数を受け入れるしかないですかね。

答えになってなくてスンマセン。
返信する
p進数って (tomas)
2018-12-17 16:23:59
久しぶりですが。p進数って、p毎に上の位にくりあがる2進法みたいな数字ですよね。

しかし、転んだサンのブログでは全く意味合いが異なるようでチンプンカンプンですが。

それに、リーマン予想とp進数の関係もよくわかりませんが。わからない尽くしで失礼します。

でも、ゼータ関数の完成形をリーマンが発見し、ゼータの世界を大きく押し広げたと理解していいのでしょうか。そのゼータを完備化する過程でのp進数の概念ということでしょうか。
返信する
只今、更新&補足中 (lemonwater2017)
2018-12-16 06:03:43
paulさんのご指摘のお陰で、土曜日は一日中リーマンブログの更新に潰れましたよ(笑)。

結構説明不足の所が多く、間違ってたり曖昧な部分も多いです。故に、補足版を別途立てようと思ってます。

これからも貴重なアドバイスを宜しくです。
返信する
素点とP進距離と完備化 (paulkuroneko)
2018-12-15 10:43:16
とうとう一つの山を越えましたね。アッパレです。

P進法までは理解できるが、P進距離を理解するとなるとキツいですね。カントールの収束列までは何とかクリア出来るんですが。

2つの数の距離がPの何乗で割り切れるかで、P進距離を定義するんですが。この距離をP進数を使って収束させ、完備化を計る。これこそが2つ目の完備化ですね。

この素数Pの距離に注目し、数に対し距離を持ってくる事でP進距離、つまりP進絶対値の概念を持ってくるんですが。このP進絶対値の定義がこれまたややこしいんですね。これで皆挫折するんですよ。

これ以降の転んださんの力業には頭が下がりますが。P進整数からP進有理数へ拡張する時の定義がまたまたややこしい。ここで初めて、Pのn乗のP進距離がPの-n乗と定義出来るんですが。P進数の数列が0に収束する事が言える訳ですね。

最後に、P進無理数をP進有理数に収束させて、第二の完備化つまり、素数の完備化(素点)を得るんですね。

今回だけは、私も転んださんついていくのにイッパイイッパイでした(*_*)。
返信する

コメントを投稿