象が転んだ

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ネタニヤフの誤算とハマスの勝算〜独裁者の破壊欲動はなぜ?なくならない

2024年01月05日 17時10分03秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘はパレスチナ自治区ガザ地区の全域に広がり、ガザ住民らの死者は1万8000人を超えた。イスラエル側が目標とするハマス指導者の殺害は未だ実現していないが、ハマスが戦闘を続行できるのはネタニヤフ首相が(カタール資金の流入を容認するなど)”イスラエル自らがハマスを育て上げたからだ”との見方が明らかになってきた。


ネタニヤフの危険な賭け

 「なぜハマスは戦闘を続けられるのか」によれば、ハマスが戦闘を持続出来るのは、カタールがハマスへ巨額の資金を送り続け、それをネタニヤフ首相自身が容認してきた事が背景にあると。つまり、イスラエル自らがハマスを強大な組織に育て上げたとの根拠である。
 NYや地元メディアによれば、全てはパレスチナとの”中東和平を潰す”為で、16年間も権力を掌握してきたネタニヤフ政権は、パレスチナ勢力が”和平交渉を要求しない”ようパレスチナの分断統治を画策していた。
 事実、ネタニヤフは”パレスチナ自治政府の対抗勢力として、ガサ地区のハマスを強いままに保つ事が重要で、2つの勢力があればパレスチナ独立に向けた交渉の圧力を弱めさせる”と語っていた。

 唯一の和平のチャンスとされたオスロ合意(1993)でも、自治政府は支持したが、(武力で対抗しようとする)ハマスは反対した。合意を反故にしたいネタニヤフにとってハマスの姿勢は都合の良いものだ。
 ”(ハマスは)ガザを統治できるほど強く、イスラエルに制御されるほど弱い”事を基本政策とした。事実、ネタニヤフ政権は2018年の閣議で、カタールが直接ハマスに月額1500万ドルの援助金を手渡す事を承認した(NYタイムズ)。
 これに反対した閣僚の1人は、この決定が今回のハマスによる”奇襲攻撃に繋がった”と指摘し、”ネタニヤフはどんな犠牲を払っても権力の座に留まろうとしている”と批判した。

 一方で、ネタニヤフ首相にとってカタールの資金をガザに入れる事は”両刃の剣”であり、”大きな賭け”だった。
 うまく機能すれば、和平交渉は頓挫し、パレスチナ独立国家を阻止できる。が、ハマスを管理できなければ牙を剥いてくる。しかし、首相の賭けを後押ししたのは甘い判断と過信だった。
 ネタニヤフ政権は”ハマスには大規模な攻撃を仕掛ける力はない”と誤った判断をし、仮に奇襲に出ても、阻止できるとの過信があった。
 だが、21年に援助額は倍に膨れ上がり、ハマスは十分な資金を蓄積し、イスラエル奇襲の爪を研ぎ始めていた。  
 結局、首相の賭けは失敗し、その代償はあまりに大きいものになったが、”ネタニヤフが唯一生き残る道は戦争を引き延ばすしかない”との地元メディアの見方が現実味を帯びてきた。

 以上、WEDGEからまとめましたが、よく出来た推論とも思えなくもないが、これだけでは”イランからの金の流れが説明できていない”との声もある。
 事実、イランのハマスへの資金援助は1992年にハマスの政治部のアブ・マルズークがテヘランでホメイニと合って作ったもので、年間3千万ドルの約束を取り付けた。 更に2006年には、当時のパレスチナ首相でハマスのイスマーイール・ハニヤがイランを訪問し、2億5000万ドルの資金援助を取り付けた。
 一方で、ネタニヤフによるハマス支持説は、ガザ地区のパレスチナ人のイスラエル国内での労働枠を増やした事が始まりで、ハマスの資金源になると右派から厳しく指摘されていたと。


最後に

 戦争がもつれる程に議論がもつれ、疑惑や陰謀論が飛び交うのは世の常ではあるが、戦争を長引かせる事で優位に立とうとするプーチン政権とダブらなくもない。
 つまり、ネタニヤフとプーチンという2人の独裁者の破壊本能による”権力への欲望”いや”権力の死守”こそが、戦争の本質だとしたら・・・ 

 かつてアインシュタインは、人間には本能的な破壊欲動があり、それが戦争の原因になっていると考えた。
 一方でフロイトは、人間にはエロス的欲動と死の欲動との2つの基本的欲動があるとし、エロス的欲動は生命を維持・結合させる力であり、死の欲動は生命を崩壊させ、無に帰そうとする力だが、死の欲動が外に向けられると破壊欲動(戦争)になると考えた。また、戦争を終わらせるには人間の本性を根本的に変える必要があるとも加えている。

 つまり、人間の破壊欲動が独裁者に渡ると、戦争に傾く。勿論、権力が長期に渡れば独裁者の破壊欲動は慢性的なものになり、アメリカや中国やロシアなどの超大国にとっては、独裁者が権力の座に長く居座る事で戦争が長引く傾向にある。
 しかし、独裁者の本性を変える事が可能なのか?戦争の形態や属性は変える事は出来ても、本質が変えられない様に、人の本性も簡単に変わるものでもない。
 人間の本能が不変であるならば、戦争が”喪失をもたらすだけの虚無に過ぎない”という認識も不変である。

 結局、戦争とは人が引き起こすものであり、時代が生み落とすものではないと見るべきなのだろうか・・・



2 コメント

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イスラエルを支持するアメリカ (平成エンタメ研究所)
2024-01-06 10:36:03
イスラエル・ハマス紛争。
世界中から「パレスチナに平和を」の声が上がっていますね。
イスラエル支持を表明しているのはアメリカのみ。
日本も石油確保で中東諸国を怒らせるわけにはいかないので国連では停戦決議に賛成しました。
フランスなどの欧米諸国も停戦に賛成。
ブローバルサウスの国々はイスラエル非難。
2024年はアメリカの求心力が落ちていくと思います。

人間の「破壊衝動」、アインシュタインはそんなことを言っていたんですね。
「破壊衝動」が自分に向かった時は「自死」になり、外に向かった時は「暴力」や「テロ」になる。
そして権力を持った者が外に向かった時は「戦争」になる。
特に今、人類は一瞬で世界を破壊できる力(核)を持っているから危ういですね。

人間には絶望しかありません。
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エンタメさん (象が転んだ)
2024-01-06 14:09:03
コメントいつもありがとうです。

元々、ハマスは福祉団体でしたが、イスラエルが軍事的圧力を掛け続けた事により、テロ団体に変貌しました。
ネット上では様々な推測がなされてますが、独裁者がいる所と時代には必ず戦争や紛争が勃発します。

特に、今回のイスラエル軍のやり方は、ハマスも民間人も一択にしたガザ地区壊滅で非人道的そのものです。
勿論、民間人を敢えて巻き込むハマスも悪いんですが、パレスチナ壊滅を目論むネタニヤフ政権のやり方には世界中からも非難轟々です。

プーチンの侵略戦争といい、イスラエルの空爆といい、独裁者の破壊衝動は留まる事を知りません。
言われる通り、絶望そのものですよね。
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