象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

たかがAI、されどAI〜「AI崩壊」に見る子役の限界とAIの限界と〜

2020年09月14日 04時02分11秒 | 映画&ドラマ

 ”2030年、高齢化と格差社会が進展し、人口の4割が高齢者と生活保護者となり、その上、医療AI「のぞみ」が全国民の個人情報等を管理する時代。
 そんなある日、AI「のぞみ」が突如として暴走した。人間の生きる価値を選別し始め、殺戮を開始する。
 警察は、「のぞみ」を暴走させたテロリストがその開発者である天才科学者(桐生=大沢たかお)と断定し、逃亡する桐生を今度は監視AIが追跡する”

 サスペンスやホラーには、子役がメインになる傾向が強い。この映画も主役は、暴走するAIでも大沢たかおでもなく、”子役”だった。
 それでも前半の、医療AIが暴走する展開と監視AIが追跡するシーンは、それなりに見応えがあった。
 しかし後半になり、医療AIの暴走で閉じ込められた小娘が主役になった所で、緊張感のある展開が間延びしてしまう。
 個人的には、AIが暴走し、それを同じAIが追跡した時、どれだけの衝撃とパニックを引き起こすのか?人類はどれほど冷静に柔軟にAIを制御できるのか?
 つまり、医療AIと監視AIの駆け引きと、人間とAIとの三つ巴のせめぎ合いを、延々と眺めていたかった。


AIの可能性と限界と暴走する脳

 そういう私はAIに対し、肯定的でも否定的でもないし、悲観的でも楽観的でもない。
 AIはあくまで補助的なツールであり、メインなツールで使う事自体に無理がある。

 生身のアナログの脳神経と、それらを形成する微細なシナプス回路こそが、最強のAIな筈だ。
 脳の働きの基本は、ニューロン(神経細胞)で繋がる神経回路にあり、その配線がシナプス(伝達装置)を通じ、きめ細かく精密に形成される事で、脳の高度な働きを可能にする。
 ニューロンが筋肉だとすれば、シナプスを関節に置き換えると理解しやすいですね。

 人間は色んな経験をし、様々な学習を積み重ねる事で、アナログな脳の高度な神経回路が構築されるとも言われる。 
 つまり、ガリ勉や受験マシンでは、よくても脊椎反射系エリートしか生み出さないのか。
 故に、この湯豆腐みたいに温かく柔らかい脳みそも、自由度を持ち、幅広く正確に鍛えなければ、条件反射系の人工知能に呆気なく駆逐されるであろうか。
 しかし、この人工知能も条件反射系であるが故に、暴走すると止められない。”オッペンハイマー””陸の三馬鹿”じゃないが、暴走する脳は悪害の何者でもない(暇な人はClick参照です)。 

 AIには自動学習機能というものがあるが、この機能はコンピュータだけの特権ではない。人間にも当然、その機能は備わってる。
 私は今、”リーマンの謎”ブログ復活の為に、毎日少しずつだが、リーマンの書物を眺める様にしている。すると、夢の中でもリーマン的思考が自分を支配する様な幻想を覚える。
 アインシュタインを書けば、夢の中でも同じ様なブログを書いてる。つまり、学習は学習を生み出し、そして更に高度な学習を創造する。

 多分、偉大な数学者は寝てる時も、脳みそは必死で難題を追いかけてたのだろう。
 20世紀最高の数学者の一人であるエルデシュがそうであったように、彼の脳みそもまた、”24時間年中無休”だったのだ。

 一方でベルンハルト•リーマンは、1859年の論文の中で、ある”予想”を仄めかした。以降、その予想は難関不洛の難題と呼ばれる様になる。
 そこで1953年、”人工知能の父”アラン•チューリングは自ら開発したチューリングマシン(後のコンピュータ)を駆使し、”リーマン予想”の化けの皮を剥がそうと試みたが、反例すら割り出せなかった。
 その後もスーパーコンピュータを使い、反例を割りだそうとするも、10兆個まで正しい事が判明しただけで、スーパーAIが70年近く掛かっても、リーマンの領域には達してない事が証明されただけである。


融通の利かない頑固な脳?

 しかし今や、その数学の領域で、AIの活用が積極的に進められている。特に、数理科学ではAIの活用は必須である。と同時に、AIエンジニアには数学は不可欠とされる。
 実際に、2045年にはAIが人間の能力を超え、そのAIが、数学の研究でもコンピュータとは比べ物にならない程の大きな影響を及ぼすとの声もある。
 確かに、数学を極めて”計算バカ”になるくらいなら、AIに頼った方が学習効率とパフォーマンスはずっと良い筈だ。

 アナログの脳を効率よく鍛えるには、生身の多種多様な経験が必要だとされる。そうする事で高度で自由度の高いシナプスが形成され、高次で柔軟な伝達処理を可能にする。
 脳みそが創り出すアナログのシナリオは無限である。しかし、AIが作り出すデジタルのシナリオは、たかが有限である。しかも、そのAIは暴走する確率が高い。
 勿論、人間の脳も暴走するが、”温かい脳”である情緒を鍛える事で、抑え込む事は可能である。
 つまり、AIの”冷たい脳”は、一方通行型で条件反射系の不可逆な、不安定な時限爆弾を持つ硬直した回路に過ぎない。
 一方で、人間の脳(シナプス)には可塑(かそ)性があるとされる。つまり状況に応じ、思考を柔軟に自由に変形できる回路なのだ。

 映画「AI崩壊」を見て、子役をメインにするシナリオ”展開”に限界がある様に、AIをメインにするにも、シナプス”回路”に限界がある事を教えられた様な気がする。

 結局、AIも脊椎反射型の頑固な”冷たい脳”に過ぎないのか? 



8 コメント

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脊椎反射系AI (tokotokoto)
2020-09-14 06:12:25
理屈っぽくまとめまたね
AIもここまで叩かれたら黙っておらへんでしょう😱

暴走する冷たい脳に頼ってるのは紛れもなく温かい脳を持つ人間で、どこまで利用してどこで切り捨てるか?その塩梅が難しいとこですが
しかしAIは積極的に活用すべきと思うね。ただ暴走した時に物理的に遮断する方法がないと映画のようにパニックになるのかな〜ようわからんけど
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AIに頼りたい気も (TOITA)
2020-09-14 07:20:20
おはようございます。
政治の世界を見ていますと、非論理的で、その目的も政治家と言う名の利権屋そのものとしか思えず、有権者も自分がどれだけ大変な事をされているのか気が付かづ、気が付いていても、一瞬にして忘れさるのが現実の様です。(一瞬にして忘れさるのは、日本人だけかもしれません)。AIに多くの人間にとって良い政策を導き出させるのがい一番では、ないかと考えたくなります。ある種の人が突出して良ければ、その陰で苦しむ人がいる。その人達は、人の死させ自分の為なら平気でいる。世界は、どの様にコントロールされれば良いのか?
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tokoさん (象が転んだ)
2020-09-14 10:31:40
少し叩きすぎましたかね。
別にAIが嫌いなわけじゃなく、むしろ自然科学の領域では、AIとの融合で大きく飛躍できそうな気がします。
でも世間が騒ぐほど、AIは熟成してんですかね。小池バアは自らをAIナントカと言ってますが、AI信者なのかもです。
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TOITAさん (象が転んだ)
2020-09-14 10:43:11
コメントとても参考になります。
前のコメントにも書きましたが、自然科学などの純粋で潔いな領域だと、AIが活躍する場は沢山あると思いますが。

ドロドロの世界の中で、AIが政界の汚職を払拭する何らかのきっかけになればとも思いますね。
AIは権力とカネにも無縁ですし、芸者遊びもしない。忖度や改ざんとも多分無縁です。意外にもAIは政治家向きかもですね。
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好きだね〜転んだも (腹打て)
2020-09-14 18:37:16
AIを強引にリーマンと結びつける辺りは
好きなんだよな・・・リーマンが

24時間年中無休のエルデシュにも笑ったが、AIがごく普通に身の回りの日常生活で使われるようになるにはどれくらいかかるだろ?
AIは情緒を持たないといったけど、計算され尽くした情緒らしきものはインプットできるだろうし、逆にそっちのほうがずっと怖いような気がするが。
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腹打てさん (象が転んだ)
2020-09-14 19:25:43
好きなんですよね〜
この映画を見た時、どうやって数学と結びつけようかそればかり考えてました。
しかし、子役ばかりが目立ってて、げんなりだったんですが。

計算され尽くした情緒ですか、まるでサイコパスインサイドの世界ですね。
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AIブレインチップ (paulkuroneko)
2020-09-14 21:32:38
なるものの開発も進んでるみたいです。
知能を高めるのではなく、障害を抱えた人をサポートするAIチップらしい。

詳しくは読んでないんですが、視覚障害や聴覚障害をチップを介し、サポートするAIみたいです。メインで使うのではなく補助として使えば、大きな未来が開けそうですね。
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paulさん (象が転んだ)
2020-09-15 00:56:58
そうそう、私もこれ何かで読んだことあります。
AIに全てを任せるんではなく、補助的な機能として利用すれば、とても良い仕事をすると私も思います。
ワクチンと同じで、全てに万能を求めるのは危険すぎますよね。
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