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◆会社法 企業防衛 敵対的買収への対策

2005年03月14日 19時02分09秒 | 企業法務学習日記
 ライブドアによるニッポン放送の敵対的買収の提起により,日本でも敵対的買収事例が増加する可能性が出てきました。現在の経営体制を維持するという単純な目的ではなく,株主価値の増大を図るための健全な企業統治を促進するという目的からも,敵対的買収への防衛策を構築していく必要性があります。
 以下に敵対的買収への防衛策をまとめました。

1 事前の防衛策

 敵対的買収への事前防御策として考えられるものには,ポイズン・ピル(Poison pill),スタッガード・ボード(Staggered board),コントロール・クローズ(Control clause),ゴールデン・パラシュート(Golden Parachute)などがあります。定款変更等により,これらの策を準備しておくことが事前の防衛策の中心になります。

 ポイズン・ピル(毒薬条項 Poison pill)とは,他の会社が買収を仕掛けてきた場合に買収者以外の既存株主に安価で新株を割り当てることで,買収者による株式の買い占めを困難にする方法です。

 スタッガード・ボード(ねじれ任期型取締役会 Staggered boards)とは、例えば,取締役の任期が2年の場合,半数の取締役を一年毎に選任し任期をずらしておくことで,買収された場合に買収側役員ばかりにできないようにする方法です。

 コントロール・クローズ(買収抑制条項 Control clauses)とは,経営権の変更があった場合,会社にとり重大な不利益が発生する契約を第三者と結んでおく方法です。

 ゴールデン・パラシュート(退職金条項 Golden Parachutes)とは,現経営陣が巨額な退職金をもらえるようにしておいて,敵対的買収の際には,それを取得して退任する方法です。どちらかというと,現経営陣の個人的利益を優先した防衛策なので,既存株主への説明が難しいという欠点があります。

2 事後の防衛策

 敵対的買収への事後防御策として考えられるものには,リティゲイション(Litigation),パックマン・デフェンス(Pac-Man defense),ホワイト・ナイト(White knight),スコーチド・アース・ディフェンス(scorched earth defense)があります。

 リティゲイション(訴訟戦術 Litigation)とは,買収側が法令違反をしてないか,情報開示準則に適合しているか,などを問題として訴訟を提起する方法です。

 パックマン・デフェンス(逆買収 Pac-Man defense)とは,買収を仕掛けてきた会社を逆に買収してしまう方法です。

 ホワイト・ナイト(白馬の騎士 White knight)とは,自社に友好的な他の買収相手を探してくることで敵対的買収者に対峙する方法です。

 スコーチド・アース・ディフェンス(焦土作戦 scorched earth defense)とは,自社におけるクラウン・ジュエル(重要財産 Crown Jewels)を,他社に売却するなどして,自社の魅力をなくしてしまう方法です。買収によるメリットを少なくすることで敵対的買収を断念させることを狙います。

3 注意点

 これらの防衛策を行うときに注意すべきなのは,あくまでこれらの防衛策は,株主のためになるから行われるという論理武装をしなければならないことです。これを怠ると取締役の経営責任を追及されかねません。

 論理武装の基本は,事前の防衛策においては,敵対的買収者が躊躇するような条項を定款に規定しておくなどして安易な買収を抑制すること,事後の防衛策においては,交渉に際して株主にとってより有利な条件を引き出せるようにするものであること,です。


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