夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆やりすぎたライブドア M&Aの不幸

2005年03月19日 02時57分46秒 | 日記・書評
 一昨日来,ライブドアがLBOで3000億円超を調達し,敵対的TOBをフジテレビにしかけるのではないかとの憶測があちこちで飛び交っている。ライブドア支持派は,やはり堀江社長はすごいと称え,批判派は,フジまで金にモノを言わせて乗っ取る不道徳さを責め,傍観者を気取る人たちは,今後のワイドショー的展開を予想して楽しんでいる。

 それにしても,あの時点で朝日がすっぱ抜いたことは,ライブドアにとっては誤算だっただろう。フジ買収に取り掛かると報道されたことで,フジテレビ株は急騰した。買収費用は桁違いに高くなったわけだ。フジが増配を発表した時点で,高等は予想されたが,LBO報道で拍車がかかった。

 また,LBOという手法が報道された点も不利に働く。マスメディアで解説されているように,LBOは80年代のアメリカで流行したが,相手の財産を担保にして金を借り乗っ取りを図るというマネーゲームそのものの手法が社会的にも大きな批判を受け,90年代には下火になっている。90年代以降のLBO事例は,友好的買収の事例が多い。以後,フジへの同情とライブドア批判は高まるだろう。

 さらに,新株予約権の問題が高裁でひっくり返る可能性は低いが,LBO問題が裁判官に何らかの影響を与えないとは言い切れない。報道当初,堀江社長は,明確には否定しなかったが,翌日あたりから「妄想」などと,堀江社長独自の用語で否定し始めている。影響の大きさを考慮しての軌道修正であろう。

 私が思うに,LBO手法の活用が事実かどうかは別にして,一連のライブドアの敵対的買収手法が過激に過ぎるので,敵対的買収に対する不安が過度に広がりかねないことが問題だ。すでに改正会社法案ではM&A関連条項の1年凍結が決定されているし,今後,かなり経営陣に有利な(その意味で過剰防衛的な)企業防衛策が上場企業を中心に導入される可能性が高い。結局,今回の騒動がかえって株主の利益に反する動きを助長しかねなくなっているのだ。

 今回の騒動で,ライブドア支持派・批判派・傍観者関係なく,敵対的買収の影響力の大きさを実感した。攻撃する側にとってはスピーディでいいけれど,される側になったらやだなあというのが実感ではないだろうか。その意味で,M&Aに対する恐怖感や不安感が印象づけられたといってよいと思う。これは,すなわち,正当なM&Aと不正なM&Aを冷静に計算するという発想が遠のいたことを意味する。本格的M&A時代を前にして,今回の騒動がおきたことは,日本経済にとって不幸なことではないだろうか。

 堀江社長もあの若さであれだけの会社を築いたのだから,焦らず,地道に本業を固めていただきたいものである。いくらM&Aが優秀でも,本業のポータルがあの状況ではどうしようもない。

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2 コメント

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拝見しました。 (devoe)
2005-03-19 03:20:28
Trackback感謝致します。

非常に冷静に分析をされていて感服致します。

おっしゃるように朝日の報道はやっきになって

ライブドア側が否定していましたので、

当然そうだと思います。

仮にLBOをやるにしても<世論>という

不可解なモノを抱えてなかなか大変だと思います。

よく揶揄されるように、一般のメディアの

ライブドアの呼称は、IT関連企業となっていますが、

この会社は実質は投資会社と言うべきですね。

堀江氏がどう本当に考えてるかはわかりませんが、

今までも事実を重ねるとそういうことになります。

また、何卒よろしくお願いを申し上げます。

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TBさせていただきました (hbiki)
2005-04-01 03:00:30
ライブドアがM&Aで成長したことについて別の視点から考えて見ましたのでTBさせて頂きました。
返信する

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