夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆ホリエ世代 繰り返される歴史

2005年04月29日 20時52分19秒 | 日記・書評
 日経朝刊の連載記事「働くということ2005」がライブドアで働く若者を取り上げていた。「消しゴム一個,鉛筆一本まで経費は社員持ち。次々と企業買収を繰り広げながら,無駄な出費は一切許さないという経営者は「会社は人を使うためのツールにすぎない」と言い切る」のはホリエモンのことだろうが,その指揮のもとで「それでいい」と働く若者がいる。

 彼らがライブドアで働く意味を示すキーワードは,自由と焦燥感だと記事は伝えている。家業に情熱を見出せなかった若者,経験を積み重ねることより今すぐ思いを実現したいと焦りにも似た気持ちを抱く若者。今のままでは自分の思いは実現できないとの焦燥感を抱く彼らの思いは,既存の価値観への不信とその裏返しとしての自己責任の選択のように私には思えた。

 もちろん,その思いの形成は,バブル崩壊による経済不況,終身雇用の崩壊とリストラによる解雇,年功序列から成果報酬への転換といった働く環境の激変と無関係ではない。記事に登場する若者は,年齢が20代後半から30代にあるが,彼らが高校大学と10代終わりを過ごした時期にバブル崩壊に始まる環境の変化が起こっている。既存の価値観の崩壊の場に彼らは立ち会っているのである。

 記事を読むと,彼らはライブドアで働くことに充実感を抱くと同時に,このまま継続できるのかという不安を抱いていることがわかる。ライブドアを出て新しい自己実現の場を探す可能性を吐露する者もいる。記事は,そんなライブドアを「短期の利益追求を尺度とする同床異夢の集団」と評する。

 「「下積みはごめん」と先を急ぐ若者たち」の思いの底には,自分を取り巻く外部環境の激変がもたらす将来に対する不安があるように思える。そして,ライブドアの破天荒な活動の背景には,こうした不安感を抱く若者の我武者羅な生き方があるようだ。

 それにしても,歴史は繰り返すとはよく言ったものだと改めて実感する。外部環境の変化に起因する既存の価値観への不信がもたらす,既存の価値観に反する若者の生き方。考えて見れば,60年代から70年代の若者も似たようなことをやって,その時の大人と反目しあっていた。当時は「政治」という場で起こったが,今回は「経済」という場で起こっているだけとも思える。

 さて,そう考えると,今回のライブドア騒動は,光事件などと対比するより,安保闘争と対比した方がより本質が見えてくるようにも思える。

(括弧内強調部分出所:日経4月29日朝刊1面「働くということ2005 第1部 それぞれの闘い2」)


【人気blogランキングに投票】
【負担ゼロで社会貢献,クリック募金をお願いします】
【フォスターペアレントとして途上国の子供達を援助しませんか?】

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。