第305回
パシフィックも最終回。
今回は、終戦から、帰国しての物語。
レッキーは、無事に就職し、奥さんを得ることができるのか。
スレッジは、平穏な生活に戻れるのか。
バンド・オブ・ブラザーズ以来、久しぶりにスティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスが制作を務めた戦争ドラマであるパシフィック。
原作からして、バンド・オブ・ブラザーズは、第506空挺連隊第2大隊E中隊の素晴らしい戦いを描くことがテーマだったのに対し、ザ・パシフィックは、太平洋の戦場で、三人の主人公の視点から、彼らがどんなことを目にしてきたかを描いているので、戦場の陰惨さが違う。
故に、個人的には、太平洋版バンド・オブ・ブラザーズとは呼びたくない。ちなみに、ユージン・スレッジの著書(WITH THE OLD BREED)のタイトルは、最初、「Band of Brothers」だったそうです。
戦闘シーンにおいては、言ってみれば、プライベート・ライアンのオマハ・ビーチのシーンが終始続く。痛快なシーンがあるバンド・オブ・ブラザーズ(敵中を走り抜けるスピアーズ大尉のシーンは素晴らしい)と違って、ひたすら陰惨で、泥にまみれた戦場。
劇中に、レッキーを自宅に送ったタクシーの運転手が、チップどころから、料金もいらない、と言った理由が、
「私も、ノルマンディに上陸したが、ロンドンやパリでは楽しめた。だが、海兵隊員は皮膚病やマラリアに苦しんだだけ」
と、ヨーロッパと太平洋の戦場の違いが説明されています。
海兵隊員として、戦った彼らが戦場で何を見て、何をし、そしてどんな傷を負ったか。第1話で、スレッジの父親が、
「帰還した兵士たちの肉体の傷が問題なのではなく、心の傷が問題だった」
というのが一貫したドラマのテーマでした。
しかし、ユージン・スレッジにしろ、アンソニー・スオフォードにしろ、グスタフ・ハスフォードにしろ、戦争と、戦争を起こした政府には批判的でも、「海兵隊最高」という点は変わっていないあたりは、海兵隊さすがだ、と思う。
ちなみに、ユージン・スレッジとグスタフ・ハスフォードは、同じアラバマ出身。
マック少尉に統合されたマッケンジー少尉とシャドウことラブディ中尉は、バーギン軍曹からすれば、前者は間違いは犯すが、学習できるし、前任者と違って常に前線にいてくれる士官。ラブディ中尉の評価に関しては、K中隊の隊員たちがWITH THE OLD BREEDの記載に批判するところで、ヴァーギン軍曹を含めた下士官たちも不公平だと思っているのだそう。どうも、中国で二人の間に事件があったらしく、それが批判の原因の模様。著書でも、「勇敢だった」ことだけはスレッジ自身も認めてはいます。
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ザ・パシフィック下巻で第5海兵師団を、第5海兵連隊と訳している場所発見。
1945年8月15日、ニューヨークの軍の病院に入院中のレッキーは、日本降伏の報せを受ける。
同じ頃、沖縄では終戦を祝って海兵隊員たちが騒ぐ。
少し離れた場所で、スレッジ、スナフ、そしてヴァーギンの3人は静かに見ている。マック少尉が、ジョニ赤を持ってやってくると瓶をスナフに渡す。
戦後の夢を語り合う3人。
自宅に帰るレッキー。タクシーの運転手に、おつりはいらない、と代金を渡そうとするが、運転手は受け取れない、と支払い自体を受け取ろうとしない。彼も、ノルマンディに上陸した経験を持つ復員兵で、
「私はノルマンディに上陸したが、ロンドンとパリで楽しめた。でも、海兵隊員は皮膚病とマラリアで苦しんだだけ」
だったから、と。
レッキーの部屋は、倉庫状態になっていた。
翌年1946年。帰還する列車の中に、スレッジ、スナフ、そしてヴァーギンの3人はいた(実際には、3人ともばらばらに帰国)。
スナフは、ナンパをするが、頬をひっぱたかれて終わる。まあ、けつをみせろ、じゃ……。
去年なら、それで通じたのに、と愚痴るスナフ。第1海兵師団は、中国で日本軍の武装解除を行ったために帰国が遅れたのですが、その辺の説明は無し。
ヴァーギンは、恋人フローレンスを呼んだことを話す。返事は貰っていない、という。
「彼女が正気に戻ればいいな」
と冗談を言うスレッジ。そして、スナフは、再チャレンジを目論んでいた。
バシローンの実家を訪れるリーナ。
家に迎え入れられるが、どこか会話がぎこちない。バシローンの年金を受け取らないこと、そして、バシローンの名誉勲章を返すと、バシローンの母親はリーナを抱き締め、悲しみを分かち合う。
スレッジたちの列車は、ヴァーギンの故郷に到着する。迎えの中にフローレンスの姿は無かった。別れを告げるヴァーギンに、スナフは、「おかげで頭を撃ち抜かれずに済んだ」と礼を言う。ヴァーギンは、「お前たちは優秀だった」と言って列車を降りる。
レッキーは、戦前に務めていた新聞社に現れた。
編集長は、兵士たち、と言うのをやんわり、「海兵隊員」とただすレッキー。そして、以前の職に戻してくれるように頼み、成功する。
その夜の試合の記事をタイプしているレッキーは、向かいのヴェラが陸軍将校に送られて帰宅する姿を見る。レッキーの母親が現れ、レッキーが一度も袖を通したことのない海兵隊ブルーを着るように勧める。
スレッジたちの乗る列車は、ニューオリンズに到着する。そこはスナフが降りる場所だった。だが、不貞不貞しく新米いびりを欠かさず、嫌な仕事は部下に押しつけるが、細かな気遣いの出来る男スナフは、眠っているスレッジを起こさずに黙って列車を降り、人混みの中に消える。絶対、戦後に誰とも連絡を取らなくなりそうだと思わせる演出が示すように、その後、35年間仲間とは連絡を取らなかったそう。
レッキーは、ブルーを着て、ヴェラの家を訪ねる。ヴェラの母親は、20年間、迎えに住んでいたレッキーのことを完璧に忘れていたが、ヴェラは覚えていた。
ヴェラをデートに誘うが、陸軍少尉との約束がある、と言われる。
しかし、士官学校卒業したてで、戦場の経験の全くない上に、哀れにも陸軍少尉である彼の前で、翌日の食事を誘うレッキー。ヴェラは、レッキーの誘いを受け、哀れな陸軍少尉は振られる。
食事の席で、以前の会社に戻ったことを伝えるレッキー。戦場の泥の中で、ヴェラのことを思い続けていた、と言うレッキー。オーストラリアでの出来事は無かった。
会話が続かなくなりかけるが、何とか続く。ヴェラに手紙を沢山書いたというレッキー。受け取っていないというヴェラ。
実は、戦死すると思っていたレッキーは、手紙を一通も送らなかった。そして、手紙は、グロースター岬の雨の中で消えてなくなった、と。だが、そこに書いたのは、人生で最高の言葉だった、と言うレッキー。
スレッジの乗る列車は、スレッジの故郷に到着する。
迎えに来ていたのは親友のシド。車の中で、シドは、皆のあこがれメアリー・フィリップスと結婚することを伝える。
家に帰ったスレッジを喜んで迎える両親。第2機甲師団に所属し、先に帰国していた兄エドワード(少佐)とともに帰国を祝うスレッジ家。エドワードは、家族に拾ったハーケン・クロイツの旗を見せるが、兄ほど浮かれた気分になれないスレッジ。
夜。悪夢にスレッジはうなされる。部屋の外では、スレッジの父が座って見守っていた。
翌朝、兄が自分も同じように夜に眠れなかったと言う。エドワードが隠して持ってきた酒を飲み交わす兄弟。太平洋には女がいなかったので、する機会が無かった、とスレッジが言うと驚くエドワード。今夜のパーティに出ればよりどりみどりだと言うが、乗り気でないスレッジは、二度と軍服を着ないことを伝える。
アラバマ工科大学の入学受付に行くスレッジ。受付の女性の無遠慮な問い掛けに腹を立てて、海兵隊で学んだのは、
「ジャップの殺し方を習った。それなら、得意だ」
と言って会場を去る。
パーティ会場で、抜け出すスレッジを見つけたシドは後を追う。無傷で帰国したことを疑問に思うスレッジ。やはり、同じことを思っているシド。シドは、生きていくしかない、と語るが、そうすれば忘れられることもある、と付け加えた。
レッキー家では、ヴェラを招いての食事で、テレビ談義と、スト談義。
食事の祈りを捧げる中、(パブブでスレッジに、神に祈るのを止めたと語った)レッキーは、祈らずにヴェラの手を握りしめる。祈りの後、皆がアーメンと言う中、最後にヴェラを見つめながら、レッキーも、アーメンと言った。
父親と狩猟に出かけるスレッジ。
だが、歩いて間もなく、不意に泣き崩れる。息子の心の傷を理解しているスレッジの父親は、優しく抱き締め、慰めた。
日がな一日、無為に過ごすスレッジを心配する母親。銀行に就職したエドワードの誘いがあると告げられても断る。
咎める母親を、スレッジの父親が、そっとしておくようにと告げる。
野原で、寝そべり、花を太陽にかざすスレッジ。
その後、アラバマ州モンテヴァロ大学で生物学の教授となったスレッジは、1981年、「WITH THE OLD BREED」を執筆(これを基にそれまで、出席しなかった戦友会にやっと出席するが、著作が有名になったことで、戦友会に出席することがしづらくなる)。1952年に結婚。2001年死去。
ロバート・レッキーは、1946年にヴェラと結婚。AP通信の特派員として活躍。40作近い著作を残し、1957年の、ドラマの原作の一つでもある「Helmet For Pillow」は、1958年、海兵隊戦闘報道員協会賞を受けた。スレッジと同じ、2001年に死去。
ジョン・バシローンは、硫黄島の戦功により海軍十字章を死後授与(及び戦死によるパープルハートも)。故郷では、彼を記念したパレードが毎年開催されている。
リーナ・バシローンは、夫の死を32歳の誕生日に知る。調理中にフライパンをひっくり返して大やけどを負って入院していた彼女は、戦死の報を聞いて気を失い、気がついた時、10日間の休暇が与えられていた。結婚期間は僅か7ヶ月。1999年に死去。再婚はせず、彼女はジョン・バシローンとの結婚指輪をはめたまま埋葬された。
メリエル・"スナフ"シェルトンは、ルイジアナ州で材木業に就いた。スレッジの著作を読むまでの35年間、海兵隊仲間との交流を絶っていた。1993年死去。葬儀の際、スナフの棺に付き従ったのはスレッジだった。
ルイス・"チェスティ"プラーは、1955年まで海兵隊に存在し続け、戦歴は第1次世界大戦から朝鮮戦争までに及ぶ(しかも、その間、事務屋仕事をしなかった、と誇らしげに語っている徹底した前線指揮官)。1955年、中将で退役。海軍十字章を5度に渡って授与された海兵隊員は、その後も、海兵隊員の象徴として語られ、1971年に死去。
ロムス・ヴァルトン・バーギンは、1947年にオーストラリアから来てくれたフローレンスと結婚。郵便局に勤め、現在もテキサス州在住。
スレッジの親友シドニー・フィリップスは、38年間を医師として過ごした。スレッジが2001年に亡くなるまで親友であったシドは、今もアラバマ州で暮らしている。
最後の戦後の彼らについては、ドラマでの彼らと実際の彼らの写真を用いて語られています。なお、何人かは省きました。