乾坤

Win書道による書と雑感を書いています。書と雑感を併せて一つの作品となればと思います。

墨を磨る

2004-06-23 06:52:28 | 
私は墨を磨るのが好きだ。幽かな墨と硯の触れ合う音が快い。墨の濃さが墨を磨る手から伝わってくる感覚も楽しい。そして仄かな墨の香が心を落ち着かせる。
葉書を書くぐらいであれば直ぐに磨り終えるが、展覧会用の大きな物の時には一日がかりの作業となる。普通の人からすれば只の退屈な時間に違いない。
私は墨を磨りながら、本を読み、作品の構成を考え、色々な事を思う。この時間が作品を作成しているような気がする。九分九厘磨り上がった所で一晩寝かせる。墨の粒子が安定するようにというよりも気持ちの昂ぶりを抑える為のようだ。
私にとって墨を磨るという時間は単に墨を濃くするという作業ではない。作品を作成する大事な過程だ。そしてその時間が私の心を研ぎ澄ませていく。