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茜空日記 goo版

映画と本をこよなく愛するラルゴです。
自然と美味しい食べ物に恵まれた福岡からあれこれ脈絡なく綴ります。

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』

2009-11-06 00:09:27 | 日本の映画
ソラリアシネマ



いやーー『だめんず』の原点ここにありってくらいのダメ男っぷりが、ここまで来るといっそ爽やかな大谷でした(苦笑) 浅野忠信が演るから「ダメ人間だけど何故か憎めないイイ男」のラインでギリギリ許されてるけど、そのへんの男だったら間違いなく後ろからバットで殴られてたりしてね~。

究極のダメ夫に振り回されてボロボロになる幸のことを、最初は「可哀想になぁ」とか「そんな亭主にはさっさと見切りをつけろよ」とか思いながら観客は物語を見守るのですが、例えどんな事件が起きても彼女には「この人でいいのだろうか」と言う揺らぎが一切ないんですよね。何だかんだ言ってお互いを愛してお互いを必要としている二人を、最後には「(自分にはゼッタイ真似できないけど)こういう愛の形もありなのかな」って気もしてきました。でも妻夫木くんだけは、あれではいくら何でも可哀想すぎる・・・。

松たか子は一見けなげな耐えるタイプ、でもその内面には外からははかり知れない複雑な情熱が渦巻いているようなヒロインに良く合っていました。彼女の魅力はあの黒目がちで表情豊かな瞳ですよね。昔、仕事場の後輩に松たか子に似た女の子がいて、決して派手なタイプではなかったけど秘かにファンが多かったことを思い出しました。


『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』公式サイト

『クヒオ大佐』

2009-10-28 00:11:10 | 日本の映画
KBCシネマ北天神



ウナギみたいに、捕まえようとする手からツルっと滑ってしまう感じのする、何とも捕らえどころののない話でした。観終わって思い浮かんだ言葉が「面白うてやがて悲しき祭りかな」(笑) 

単純に女から金を巻き上げるだけでなく、自分自身も「空軍特殊部隊エリートパイロット」の妄想に必死でしがみつこうとするようなクヒオの姿は、おかしいけどだんだん哀れ・・・。逆に彼からいいように金を騙し取られてもクヒオを愛し続けて、彼女なりの手段で愛を全うしようとするしのぶは、イタくて哀れなのにだんだん幸せそうに見えてくるから不思議。


どこかで聞きましたが、結婚詐欺の被害に遭った女って、自分がカモにされた事実をなかなか認めないそうですね。「他の女は騙したかも知れないけど、私のことは本当に愛している。だから彼は必ず私の元に戻ってくる」と考えるんですって。現実を認められずに夢にしがみつく姿は痛々しい気もするけど、騙されたのを認めた時点で夢が終わって味気に現実に戻ってしまうよりも、ずっと夢を見続けたままでいたい気持ちは何となくわからないでもないかな・・・。男でも女でも、人間って「夢」なしでは生きられないのかも知れないですね。


『クヒオ大佐』公式サイト


追記
満島ひかりは好きな女優だけど、学芸員役だから若くても20代半ばの設定なのに「博物館に実習に来た女子大生」程度にしか見えない童顔がちょっとミスキャストかなぁと思いました。それにしても『愛のむきだし』の彼女はすごかった・・・。

『空気人形』

2009-10-10 00:00:29 | 日本の映画
シネリーブル博多駅



美しくて切なくて優しいファンタジーという触れ込みなのでそのつもりで観ていたら・・・、どひーーーーーっ、こういう展開か!これを「美しくて切なくて優しい話」で括るのは私にはちょっと・・・。去年の終わりに観た『ラースと、その彼女』といろんな意味で対極の内容だったなーと、後になって思いました。

ペ・ドゥナは本当に身体を張っての熱演でした。あれだけ裸のシーンが多いのにエロさよりもむしろ清々しい美しさを感じるのは、彼女独特の透明感のある個性のおかげでしょうね。日本にも若手の女優はたくさんいるのに、わざわざ監督がペ・ドゥナを使いたがった理由がよくわかりました。部屋の中でふわふわ漂うシーンがすごく愛らしくてステキです。

細かいことだけど、バイト先のレンタルビデオ屋のポスター類が、どれも本物じゃなくて「何となくありそうだけど実際にはそんな映画はない」ニセモノだったのが、「うわ、ここまで凝るか」って感じで面白かったです。


『空気人形』公式サイト

『火天の城』

2009-10-04 17:34:47 | 日本の映画
ユナイテッドシネマ・キャナルシティ



別に城好きでも歴史好きでもないけど、絢爛豪華で巨大だったらしい幻の城・安土城には少し興味があったので観てみました。スケールの大きさは戦国版プロジェクトXって感じでなかなか見応えがありましたが、逆に正統派すぎて良くも悪くも先の展開が読めてしまうのは映画としてはちょっとマイナスかも・・・。前半の指図争いで不利に見えた又兵衛が、意表を突く方法で勝ちを納める場面は絵的に面白かったですね。あそこで彼の示した「吹き抜けは火に弱い」という建築の基本はそのまま現代にも通じるのが興味深いような怖いような・・・。

西田敏幸を始めほとんどのキャストが違和感なくしっくり来ていた中で、娘役の福田沙紀だけ目つきのキツイ現代顔がちょっと浮いてました。石田卓也はすっかりこういう苦悩の若者が当り役にになりましたね。彼とゴルフの石川遼くんは何となく顔や雰囲気が似てると思いませんか。


でも、あそこまでして築いた城がわずか数年で焼失してしまうその後の歴史を知ってて観ると、又兵衛たちの苦闘する姿に何とも言えないものを感じますね・・・。


『火天の城』公式サイト

『BALLAD~名もなき恋のうた』

2009-09-24 22:56:55 | 日本の映画
天神東宝



アニメ版の『アッパレ!戦国大合戦』がすごーーく好きだったので期待半分心配半分で観に行きましたが、同じ素材でも監督が変わると、ここまで雰囲気が違うものなんですね~。まぁどちらがタイプかは好き好きってことで・・・。でも、山崎貴監督がオリジナルをどれだけ好きで大事に思ってるかはよく伝わってきました。アニメ版で感じた、悲劇なのにどこか明るく突き抜けた独特の無常感は今回あまりなかった代わりに、わかりやすい泣かせる悲恋物として、よくまとまっていたんじゃないかと思います。

新垣結衣は一本調子な幼い喋り方が気になったけど、お姫さま姿が似合って美しかったのでまぁ合格かな。線が細くて又兵衛役にはちょっとどうかなーと思っていた草薙剛は、予想外にしっくりきていてびっくりしました。草薙くん、なかなかやりますね・・・。

本筋とは関係ないけど、アニメ版と違って、主人公がフツーに行儀の良い子供だったのに激しく違和感。アニメ版では「廉ちゃん」「おマタのおじさん」だったのに(笑) 名前も野原しんのすけじゃなくて川上シンイチだから、インスパイアは受けたけどまったく別の物語として作りましたってことか・・・。


追記
臼井儀人さんの突然の訃報には、本当に驚きました。あのはじけたパワフルな作風とは裏腹に、ご本人はあまり表に出たがらない物静かな方だったらしいですね。ご冥福をお祈りいたします。


『BALLAD~名もなき恋のうた』公式サイト