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茜空日記 goo版

映画と本をこよなく愛するラルゴです。
自然と美味しい食べ物に恵まれた福岡からあれこれ脈絡なく綴ります。

『アメイジング・グレイス』

2011-05-29 16:16:52 | 外国の映画
ソラリアシネマ



この歌は昔から好きなので(嫌いな人はあんまりいないだろうけど)、曲にまつわる歴史ってどんなんだろう・・・程度の興味で実は観に行きました。こういう史実を知らなくても美しい曲なのに変わりはないけれど、知った上で聴くとさらに美しさと重みが増すような思いがします。この曲、作曲者は不明のままなんですね・・・。もしかして、本当に天から落ちてきた曲だったりして。

主演のヨアン・グリフィズは『ファンタスティック・フォー』を観てないのでノーマークだったけど、意思が強くて繊細そうな雰囲気が良かったです。目の辺りが少し岡田准一に似てるよなぁーと、どうでもいい事を思いました。「アメイジング・グレイス」の作詞者、ジョン・ニュートン役のアルバート・フィニーも登場シーンは少ないながら印象に残りましたね。特に晩年、盲目になっていた彼がウィルバーフォースに語る言葉が忘れがたいです。



確かにウィルバーフォースはこの運動の中心となる人だったけど、その他にも志半ばで世を去った親友のピット首相や奴隷出身の活動家エクィアノなど、大勢の仲間の支えがあっての偉業ですよね。歴史が大きく動くときには、こういう人達が出てくるものなのでしょうか。奴隷貿易の既得権を離さない古参の議員達と戦う、若くて理想に燃えたウィルバーフォース達の姿には、時代はかなり違うけどアメリカのケネディ大統領を連想してしまいました。


それにしても、病弱でしょっちゅう倒れていたウィルバーフォースより、普通に健康そうに見えたピットが早世するなんて、寿命って不思議なものだと思わされました。ウィルバーフォースが動物好きらしく、自宅の場面では筋に関係なく画面を動物がうろうろしているのも、主の人柄が見えるようで面白かったです。でも、椅子にどっかり座った兎の巨大なのにはびっくりした・・・。


『アメイジング・グレイス』公式サイト

『ヒアアフター』上映中止に

2011-03-18 18:43:48 | 外国の映画
ユナイテッドシネマ・キャナルシティ



少し前に観て、感想を書こう書こうと思っていたら、今回の東北関東大震災を受けて上映が中止になってしまいました。イーストウッド監督らしい抑制の効いた演出で、終わった後、静謐で清々しい気分にさせてくれた映画でしたが、主人公のひとりが津波に巻き込まれて臨死体験・・・というストーリーは、確かにこの時期にはちょっと上映が難しい内容かも知れません。

他にも、近々公開予定だった中国映画『唐山大地震』も公開延期になったそうです。地震の影響はこんな所にも波及するんですね。今さらながら、この震災が日本の国と国民に与えたダメージの大きさを考えさせられます。


『ヒアアフター』公式サイト



2010年度・外国映画ベストテン

2011-01-07 00:01:12 | 外国の映画
続いて外国映画はこんなラインナップです。

1位 『9<ナイン>~9番目の奇妙な人形』
2位 『ラブリーボーン』
3位 『瞳の奥の秘密』
4位 『牛の鈴音』
5位 『ザ・ロード』
6位 『息もできない』
7位 『第9地区』
8位 『ハングオーバー!/消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
9位 『月に囚われた男』
10位 『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』


1位 『9<ナイン>~9番目の奇妙な人形』
人形たちの思わず手にとってみたくなるような胴まわりのぽってりした体型や、麻布のざらっとした質感や縫い目、ジッパーの手作り感がすごくいいんですよね~。同じような素材の人形なのに9人(9体)の個性がちゃんと出ているのもさすがです。そんな人形たちの愛らしさとは裏腹に、思いがけず深くて重い内容でラストには涙が出そうになりました。人形には作った人の心が宿ると言いますよね。こういうのを子供の頃に観たら、たぶんずーーっと心のどこかに残りそう・・・。いい大人の私が観ても何となく忘れがたく、こんな順位に入れてしまいました。

2位『ラブリーボーン』
主人公を囲む天国の美しい風景が、彼女の心を映して刻々と変化していく様子が素晴らしかったです。やっぱりこういう映像を作らせるとピーター・ジャクソン監督はダントツですね。スージーの見守る前でボトルシップが次々と難破していく場面は、あまりの美しさと悲しさで涙が出ました。 もうこの世にいないはずの人を、気配を感じたり夢に出てきたりする感覚は、肉親を亡くした人なら覚えのある経験ではないでしょうか。 主人公の魂が死後も成長を続けるというコンセプトも、ユニークだけど共感できますね。ラストで2つほど「え、これでいいの?」と思うことがありましたが、ひとつの方は宗教感からくる死生観の違いもあるんでしょうね。日本人の感覚だと、あれはちょっと受け入れられない人が多いかな・・・と、思うけどどうだろう。

3位 『瞳の奥の秘密』
アルゼンチンの映画(タンゴ物を除く)を意識してちゃんと観たのは初めてな気がするけど、独特な雰囲気があるもんですね。ヨーロッパ風の秩序を感じさせる石造りの古い街並みに、「無理が通れば道理が引っ込む」的な軍事政権下の歪んだ政情、さらには厳然と存在する階級社会。そんな中で、亡き妻への愛と復讐の思いを一時も忘れないモラレスの姿は胸に迫りました。つらい思い出はいっそ忘れて新しい人生を踏み出せれば、その方がよほど楽だったのだろうけど、人にはどうしても変わらない、変えられないものがあるんですね・・・。彼に限らず、主人公ベンハミンに友人のパブロ、さらには犯人も、この映画の登場人物はだれもそれぞれ変えられないものを持っているのかも知れません。

4位 『牛の鈴音』
うっかりすると現代の話なのを忘れそうなくらい、何十年も続けてきた昔ながらのやり方で黙々と働くチェ爺さんと牛の姿に「ゆっくりでは何故いけない?効率が悪くては何故いけない?」と無言の問いかけをされているようでした。韓国のハルモニの典型のような、口は悪いけどカラッと明るくて愛情深いお婆さんもすごく良いです。お爺さんに大事にされる牛に明らかにジェラシーを感じている様子が可愛くて笑える・・・。

5位 『ザ・ロード』
文明の終焉した後の荒廃と、それにともなう人心の荒廃がリアルに描かれる中で、何があっても「善き者」であろうとする父と息子の姿は胸に迫りました。お互いが世界のすべてだという絆が痛いほど伝わるだけに、後半で近づいてくる別れの予感は辛かったです。よく考えると、二人とも父・息子と呼ばれるだけで、最後まで名前が出ないままだったなぁ・・・と気がついたのは、観終わった後でした。

6位 『息もできない』
初めから終わりまであきれるほど殴る蹴るの暴力シーンのオンパレードなのに、その手が苦手な私でもそう抵抗なく観られたのは、全編に漂うそこはかとないユーモアと深い悲哀のせいでしょうか・・・。ラブシーンらしいラブシーンなどほとんどなかったけど、サンフンとヨニは出会うべくして出会った運命の二人なんだろうな。夜更けの漢江でのシーンは美しくて涙が出ました。主演+脚本+監督のヤン・イクチュンは短気で粗暴な中にも子供のような目が印象的。ヨニ役のキム・コッピもごく普通の顔立ちなのに、独特の強い存在感がありました。

7位 『第9地区』
何が怖かったって、感染したヴィカスに対して同胞のはずの人間たちが行った仕打ちに、身の毛がよだつほどゾッとしました。彼らとエイリアン達を見比べていると、「HUMAN」っていったい何だろうと深く考え込まされますね。『トランスフォーマー』的アクションはなくてもいいんじゃない(笑)?と思ったけど、人間とエイリアンの対立に図式を借りて、社会的な風刺を痛烈に効かせたユニークな作りは新鮮でした。予想を裏切るラストにも衝撃を受けながらも、ああ、そういうことか・・・とじーんとしました。

8位『ハングオーバー!/消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
バチェラー・パーティ物はアメリカ映画では良くあるテーマだけど、ここまでハメをはずす奴らには今までお目にかかったことがない(笑) でも何だかんだ言ってやっぱり彼らにとっては人生最高の夜だったのかも知れませんね。男だったら、一生に一度こんな大バカをやれたら楽しいだろうなぁーと思う反面、自分の彼氏や夫(どちらもいないけど)がこんな大バカをやっても、広い心で笑って許せる女になりたいような、ゼッタイなれないような・・・。

9位 『月に囚われた男』
映画が始まって2/3くらいまで、何が起きているのか訳がわからない神経症的な怖さがひたすら続いて疲れて、それが残り1/3でようやく何が起きたのか悟ったら、もっと異質の深い底から湧きあがってくるような恐怖を覚えました。でも、こういういっけん不条理系の話にしては、ラストできっちりとオチがついていたのは意外ですね。真っ暗な中に一面の星が輝く月世界が、怖くて悲しくなるくらいに美しかったです。でも、こんな話つくられたら宇宙飛行士のなり手が減りそうだー(苦笑)

10位 『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』
あふれる画才と引き換えるように波乱も敵も多い人生を送って、若くしてロクでもない死に方を遂げてしまうとこらへん、私のいちばん愛する江戸時代の絵師・長沢芦雪を思い出します。洋の東西を問わず、天才って得てしてこういう生涯を送りがちなんでしょうね。凡人には良くも悪くもぜったいに送れない人生だ・・・。

惜しくも次点・『ゾンビランド』『オーケストラ!』『ブルーノ』

『約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語』(少しネタバレ)

2010-12-07 00:22:37 | 外国の映画
ソラリアシネマ



フランスが舞台なのにまたしても全編英語・・・というのは、もはや文句を言ってはいけないお約束なのか。監督のニキ・カーロもニュージーランド人だしね。でもフランスロケ(一部ニュージーランド)の映像は情緒的でとても美しいです。主人公ソブラン(ジェレミー・レニエ)は普通っぽい顔立ちだけど、場面によって繊細に見えたり傲慢そうに見えたりするのが不思議で、妙に目が離せませんでした(^^ゞ 彼の人生は妻セレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)に天使ザス(ギャスパー・ウリエル)、男爵夫人オーロラ(ヴェラ・ファーミガ)の3人に愛されてモテモテ?だけど、愛しすぎて心を病んでしまったセレストを思うと、そこまで愛したり愛されたりするのが幸せかどうかはまた別のような。結局ソブランは妻もそれなりに愛してはいたけど、ワイン醸造のパートナーとしてオーロラの方により深い絆を感じていたようにも見えますしね。今際の際に付き添っていたのも天使とオーロラの二人だったし・・・。

それにしても、あんな風にワインをひとくち味わって土壌とか造った人の人となりまでわかったりしたら素敵だろうなぁ・・・。そういうものをすべてひっくるめてフランスでは「テロワール」と呼ぶらしいです。ソブランの造った最後のワインを口に含んだ天使がひとこと「ソブラン・ジョドーの味がする」と言ったのが印象に残りました。

ひとつ気になったのが、セレストが意味ありげに作っていたクリームらしきもの。悪意を持ってオーロラに届けたように思えたけど、その後の顛末がなかったあれはいったい何だったんだろう。


『約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語』公式サイト


それにしても、皆ワインを水みたいに飲んでビクともしないのがうらやましい・・・。
私が同じ飲み方をしたらもれなくゲーゲー吐いてのたうちまわる事請け合いですけん(涙)

『リトル・ランボーズ』

2010-12-06 20:54:28 | 外国の映画
ソラリアシネマ



ストレートな感動一直線!ではないけど、心の片隅を何気にくすぐるタイプの映画でしたね。主人公の少年が二人してビミョーにひねこびていて、一筋縄で行かないのがいかにもイギリスっぽくてイイ感じ(笑) 筋肉ムキムキになって父親(なぜかランボー)を救いに行ったりする、ウィルの内面の豊かな想像力がちゃんと映像化されている所が面白いし、リー・カーターの教師も手を焼く悪ガキぶりと、兄にはべったりのブラコンぶりがアンバランスな性格も魅力的でした。

留学生ディディエは私には、どうひいき目に見てもただのスカした胡散臭いガキにしか見えないけれど、周りの生徒たちのあの熱狂的な崇拝ぶりは『17歳の肖像』と通じるような、当時のイギリスの若者のフランスに対する強い憧れがベースにあったんでしょうか・・・。案外あの子も本国フランスに帰ったらただのいじめられっ子だったりして?

ずっと気になっていた『RANBOW』のスペルの間違いを、ラストでやっと突っ込んでくれたのが嬉しかったですw


『リトル・ランボーズ』公式サイト