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茜空日記 goo版

映画と本をこよなく愛するラルゴです。
自然と美味しい食べ物に恵まれた福岡からあれこれ脈絡なく綴ります。

『寒椿ゆれる』 近藤史恵

2009-06-05 23:08:26 | 
『巴ノ丞鹿の子』『ほおずき地獄』『にわか大根』に続く「猿若町捕物帳」シリーズの最新刊。



お馴染みの千蔭の見合い騒動と、年若い義母・お駒の懐妊、それに平行して起こる事件が相変わらずテンポ良く進んでいきます。主人公・千蔭に輪をかけて堅物で口の悪い大石の、見かけに寄らない歯がゆくなるような純情ぶりにぐっと来ました。

このシリーズは作者が時代物の書き手にしては若いのもあるのか、全体を通してあまりじめっとしてなくて歯切れ良く、それでいて濃やかな雰囲気があります。どの作品にも出てくる、封建的で生きにくい不自由な時代を、それでも自分に正直に生きる女性の姿がすごくいいんですよね。今回のおろくも時代劇にしてはちょっと変わったキャラクターだけど魅力的です。

近藤史恵さんは歌舞伎に造詣が深いらしく、この「猿若町捕物帳」の他に現代物の歌舞伎のシリーズもありますが、こちらの方が話の展開やキャラクターの設定が、現代物にはない自由でのびのびした感じで、物語として楽しいので好きです。

栗本薫さん死去

2009-05-28 21:21:36 | 
昨日の夕刊に訃報が載っていて驚きました。闘病中なのは『ガン病棟のピーター・ラビット』を読んで知っていたけど、ファンの欲目というか思い込みで、何となくこの人だけは死なないような気がしていたので・・・って、変な言い方? 
享年56歳、できればもう10年くらいはお元気で書き続けてもらいたかったです。

代表作『グイン・サーガ』(読んでないけど)は、とうとう未完のままでしたね。ご本人の中で忘れ去られているらしい?『魔界水滸伝』はともかく、残り1巻で完結予定だった『六堂が辻シリーズ』は最後まで読ませて欲しかったな・・・。でも、未完だからこそ逆に人の心に残り続けるということもあるかも知れません。

あまりの多作ぶり、またマルチな活躍ぶりにファンも多い反面、バッシングを受けることも多かったけど、この人を超える人も、この人に匹敵する人も、もう二度と出てこないレベルの作家だったことは確かでしょう。この人と同じ時代に生きられて、リアルタイムで作品を読めた私たちの世代は幸せでした。ご冥福をお祈りいたします。


でも、この人だったら「読みたかったらアンタ達がこっちに来なさいよー!」とか言いながら、あの世でシリーズの続きをバリバリ書いてそう(笑) てゆーか、ぜひ書いててくださいね・・・。

追記/単発モノでは私は、お芝居にもなった『魔都』がいちばん好きです。
久しぶりに読んでみようかな~。

『ザ・万歩計』 万城目学

2009-05-13 12:09:23 | 


小説を読んで「とらえどころのない人だなぁ」と思ったのでエッセイを読んでみましたが、ますますわからなくなりました。小説の雰囲気からはバリバリのインドア派を想像させるのに、ご本人はフットサル、ロッククライミング等いろいろスポーツをたしなまれて、しかも決してヘタではないらしい(笑) 学生時代には、相当あちこちの国をほっつき歩いて旅してらっしゃるみたいだし。

あの『鹿男あをによし』のアイディアの発端が、遠くモンゴルで生まれた事実はちょっと小説より奇だなと思いました(いや、小説も充分「奇」だったか・・・)。
自作のユニークなタイトルにまつわるあれこれを綴った「吐息でホルモー」には大笑いでしたね。


Gに出会ったときの対処法3種のうち、ヘタレの私が取る方法は「3.なかったことにする」です。スミマセン。



『つむじ風食堂の夜』 吉田篤広

2009-04-09 00:30:38 | 
ちくま文庫



「青山ブックセンターで3年連続売上NO1」と帯にありました。へえぇ、こういう本を面白いと思って買う人がそんなにいるんだ・・・・・、と言いながら自分も買ってるんだけども(笑)

オチも起承転結もあるようなないような不思議な話だけど、生き物のように辻に巻きあがる風や、オレンジに反射する灯の柔らかさ、地下の古い喫茶店に満ちるエスプレッソの香り・・・と、情景が行間から立ち上ってくるような独特の雰囲気がありました。大人の童話って感じの、声に出して読みたくなる短編集です。

それにしても、こんな食堂が近所にあったら私も毎日でも行きたいな・・・。主人公の好物コロッケ、じゃなくてクロケット定食(温野菜添え、ライス付)を1度、注文してみたいです。


おまけ
先週土曜の夕食。



料理の得意な私が作った義弟が作ってくれた激ウマ煮込ハンバーグ(スパゲティと粉ふきいも添え)

美味しかった~。また作ってねぇぇ~~~(*^∇゜)b

『愚か者、中国をゆく』 星野博美

2009-04-02 12:13:53 | 


『中国てなもんや商社』の谷崎光(『北京の愉しみ』も好きだ)のような爆笑系かと思ったら、少し・・・いや、かなり雰囲気が違いました。旅仲間との心のズレで最初は楽しかった旅がだんだん重たいものへと変質していく様子や、ぶち壊された「ここではない何処か」への幻想など、かなりほろ苦い旅行記でしたね。

実際の旅から本を書くに至っては20年近い歳月がたっているそうですが、それだけ時間がたてばいくらでも美化できるものを、あえて起こった通りほろ苦いままに残そうとする率直さには逆に好感が持てます。

自分達の経験を踏まえた「無茶な冒険にのめり込むバックパッカー」と「ブランド品を身につけたがる人たち」に共通する心理の分析は、なるほどーって感じで興味深かったです(笑)


この人の他の著作『謝々!チャイニーズ』『転がる香港に苔は生えない』も読んでみたくなりましたね~。