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茜空日記 goo版

映画と本をこよなく愛するラルゴです。
自然と美味しい食べ物に恵まれた福岡からあれこれ脈絡なく綴ります。

『いいかげんに片付けて美しく暮らす』 岩里祐穂

2010-01-17 15:45:23 | 
集英社文庫



タイトルに釣られて読んでみたら、想像していたのとちょっと違う内容。著者が作詞家なせいもありましょうが、文章がやたらと詩的で心地良くて、でもよく読んでみたら実際の自分の家や部屋の整理整頓のヒントになるような実のある記述はそれほどないような(笑) そもそも片付け上手と言いながら、3人家族(夫婦+息子1人)の生活の割にはモノが多すぎに見えるし。

合間合間に挿入された、リフォームに手間ひま(とお金)をかけたご自宅のインテリアの写真は、とても美しくてセンスが良いです。ただ、「素敵だわ!ウチもこういう雰囲気で建てましょう」と、そのまま参考にできる人はそう多くはないでしょうけど・・・。

でも、物置きの壁ををまるごと棚にしたCDや本のストックルームは、本好き音楽好きなら「いつか、こういうのやってみたいな」と思わせる憧れコーナーですね~。

『クロスファイア』宮部みゆき

2009-12-18 00:14:35 | 
   

別に最近出た本でも何でもないけど、12月に入ってクリスマスが近付くと無性にこれが読みたくなるので、今、通勤のバッグに入ってます。たぶん手元にある宮部みゆき作品の中で、これがいちばん何度も読み返してます。あらすじがすっかり頭に入ってるのに続きが早く読みたくてページをどんどんめくってしまうテンポの良さは、何度読んでもまったく色褪せないからすごいです。

全編に漂う緊迫感とうらはらに怖くて寂しーーい話だけど、その寂しさ加減が何とも心を打つんですよね。 解説の「胸が痛くなるような終わり方だけど、これはハッピーエンドだ」には強く同意です。


未読の方は短編集『鳩笛草』と合わせて読まれることをお勧めします。


それにしても、映画版は「よくもまぁここまで」と、びっくりするほどひどかったなぁ_| ̄|○ 宮部みゆき作品は、原作は面白いのに映画化でハズれる率が妙に高いから不思議・・・。でもちか子役の桃井かおりと、ヒロイン淳子役の矢田亜希子は良かったです。

『阪急電車』 有川浩

2009-08-13 22:44:13 | 


ライトノベルから一般小説への進化を思わせる1作・・・なーんて思うは読む側の勝手な感想で、この人にとっては「単純に書きたいものを書いたら今回はこうなりました」って感じなんだろうなー。男性が主役の回もあるにはあるけど、全体としてたぶん女性が読んだ方がより共感できる作りだと思います。『海の底』『空の中』あたりから流れてきた男性ファンはちょっと戸惑うかも知れないけど、私はけっこう気に入りました。関西舞台だけどあえて登場人物全員に関西弁は喋らせず、要所要所での入れ方もうまいですね。

いちばん印象に残ったのは「討ち入り」を果たす翔子だけど、辛口で歯に衣を着せない老婦人・時江に、DV彼氏との別れを決意するミサも、翔子同様に共感の湧くキャラクターでした。彼女らの姿には作者の思う「同性から見てカッコいい女」が反映されているんでしょうね。ただ、悦子と漢字の読めない彼氏(笑)のナイスカップルがすでにいるから、電車内で恋の芽生えるカップルはバランス的に2組もいらなくない?とも思いましたが・・・。

「こんな年(小学校の1・2年)でも女は相手のランクを見抜いて接してくる」というのも、同性として理屈抜きでわかる気がします。・・・てゆーか作者、観察眼するど過ぎ(苦笑) 自宅近くに小学校があるので通勤時に大量の小学生とすれ違うのですが、あきらかに値踏みの視線を無遠慮に投げかけてくる女の子って実際にいますからねーー。嘘じゃないですよ。ホントにいるんですよ。女はこわいんですよ。


そうそうそう。
「結婚式の白いドレスは頭の弱い子」で思い出したけど、昔の同僚にその「弱い子」が実在したんですよ!嫌がらせのために非常識を承知の上であえて白いドレスを着た翔子と違って、その彼女は本当に何も知らずに考えずに白いドレスでお出かけして、他の出席者に「まぁー、アナタが花嫁さんかと思ったわ」と嫌みを言われてもまだ自分の失態に気付いていない、私の知る限り至上最強のKYでした。今頃どうしてるかな。相変わらず強力KYなことは容易に想像つきますが・・・。

『海の底』有川浩

2009-08-07 00:12:41 | 


4月。桜祭りで解放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧噪は悲鳴にかわっていた。巨大な赤い甲殻類の大軍が基地を闊歩し、次々に人を「食べている」!自衛艦は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか「歪んでいた」。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく──ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント!!(裏表紙紹介より)

いやー、ホント面白くて寝る間も惜しんで一気に読んでしまいました!こういうパニックサスペンス?は襲ってくる敵の設定が単純なほど怖くてワクワクさせられるもんですね。そういう意味ではこれは王道行ってます。でもしばらく海老は食べたくないかな・・・(S・キングの『IT』を読んだ後、ピエロを見ると「げっ!」と目を背けたくなるのと同じ理屈)。子供たちのいびつな力関係と望・翔姉弟の戦いぶりの描写も緊迫感がありました。食堂の息子・茂久いいですね。ここの一家、茂久+両親まとめて好きですが、お父さん、レガリス丼はちょっと嫌です・・・。
レガリスを相手取る、警察や機動隊その他のステキなおっさん達の活躍も光ってました。さすが作者がおっさん萌えを公言するだけのことはあるなぁと(笑)


短編集『クジラの彼』収録の、夏木と冬原のそれぞれのコイバナ(笑)を描いたサイドストーリーも「ふーん、あの前後に冬原ってこんな私生活送ってたんだね」と面白かったです。

『空の中』有川浩

2009-06-14 00:48:22 | 


ライトノベルを読み慣れていない世代には独特の文体はビミョーに居心地が悪いんですけど、それを差し引いてもこれは読み応えがあって面白かったです!新井素子の解説がベタベタの褒め褒めでこれもまた居心地が悪かったけど(今思えばこの人は、ラノベの先駆けかも知れませんね~)内容にはほぼ同意です。一見へらへらと軽いノリと、頭の回転の早さにギャップの大きい高巳のキャラクターが独特で魅力的です。彼とディックの会話なんか深いけど笑えるし、笑えるけど深いんだなぁ。よくこんな話を思い付けるもんです・・・。

朴訥な土佐弁で語る宮じいの存在が、下手したら絵空事になりそうな物語全体をよく引き締めていますね。巻末の後日譚『仁淀の神様』には泣きました。電車の中でこみあげる涙(と洟)でぐすぐすの私に、周囲の人の目がビミョーに痛かったけど「誤解しないでください!新型インフルエンザじゃありません!本を読んで泣いてるだけなんです!」と訴えるわけにもいかないし・・・。紛らわしいことしてゴメンナサイよ。

『図書館戦争』はいまだ図書館の貸し出し予約が多いみたいだから、先にこの『空の中』を含めた自衛隊三部作を読破してしまおうかな・・・?