https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26298360Q8A130C1000000/
コインチェックを悩ませるもうひとつの仮想通貨
匿名コイン「モネロ」にマネロン懸念
仮想通貨
2018/1/30 11:42
仮想通貨取引所コインチェック(東京・渋谷)が流出した仮想通貨「NEM(ネム)」の追跡作業に追われている。JR渋谷駅近くにある本社は夜までこうこうと電気がついており、社員も巨額資金を取り返そうと総力戦を繰り広げているようだ。その陰でコインチェックを悩ませるもう1つの仮想通貨がある。北朝鮮との関係性を疑われている匿名コイン「Monero(モネロ)」だ。
時計を4カ月前に巻き戻す。2017年9月29日、金融庁は仮想通貨の取引所としてまず11社を同4月に施行した改正資金決済法に基づいて登録した。第1陣となる登録企業リストにはビットフライヤー(東京・港)のほか、テックビューロ(大阪市)やビットバンク(東京・品川)などの名前があったが、そこにコインチェックの名前は無かった。登録されなかった企業でも「審査を続けていれば運営は続けられる」(金融庁)ため、コインチェックは「みなし業者」として営業を続けた。
なぜ規模で1、2位を争うコインチェックに登録がおりなかったのか。金融庁とコインチェックのやりとりで引っかかった要因の1つが匿名コインの取り扱いだ。匿名コインとは送り手と受け手を匿名にした形で取引をおこなうことができる仮想通貨。取引時にデータをシャッフルするなどして送受信者を追跡できなくなる特徴がある。ビットコインはブロックチェーンにアドレスが残るが、匿名コインはマネーロンダリング(資金洗浄)や税金逃れに利用されやすい問題がある。
コインチェックはモネロ、Z(ジー)キャッシュ、ダッシュという3つの匿名コインを扱っている。このうちのモネロと北朝鮮の関係性が浮かび上がってきた。発端になったのは米サイバーセキュリティー会社エイリアンボルトが1月に公表した報告書だ。モネロの採掘コードを勝手にインストールし、採掘した通貨を北朝鮮の大学のサーバーに送る悪意のあるソフト(マルウエア)が見つかったという。
経済制裁を受けている北朝鮮に外貨獲得のルートをモネロが与えているとすれば、問題になる可能性がある。国際的にはフランスとドイツが3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で仮想通貨に関する規制案を共同提案する考えを表明しているが、最大の関心事はマネロン対策とされる。財務省の浅川雅嗣財務官は29日、「(仮想通貨が)議題となる可能性が高い。日本としてもきっちり対応していきたい」と語った。
金融庁としても「どんな通貨か調べているだけでなく、監視体制などを聞いている」(関係者)。ただ、コインチェックとしてはすぐに取り扱いをやめられない事情がある。情報サイト、コインマーケットキャップによれば、モネロの価格は30日午前11時30分時点で1モネロ=310ドル強で推移する。1月上旬の高値と比べると約35%下落しているものの、2016年末と比べたら約25倍の水準。時価総額は約49億ドルでランキング13位だ。「取り扱い中止と公言した瞬間に価格が下落するため、自ら引き金を引いて顧客から批判を受ける事態は避けたいだろう」とある仮想通貨取引所の社長は指摘する。
コインチェックの取り扱い仮想通貨数は13通貨と他の取引所と比較しても多めだ。かつてコインチェックの大塚雄介取締役は多くの種類の仮想通貨を扱うことについて「国内の取引所が扱わなくても個人投資家はKraken(クラーケン)などの海外の取引所に逃げるだけだ」と話していた。国内の投資家に簡単に投資できるインフラを提供したいとの純粋な思いだったのだろう。だが、今はこれが裏目になる。本音は世界規制で禁止にしてもらうことかもしれない。(関口慶太)
コインチェックを悩ませるもうひとつの仮想通貨
匿名コイン「モネロ」にマネロン懸念
仮想通貨
2018/1/30 11:42
仮想通貨取引所コインチェック(東京・渋谷)が流出した仮想通貨「NEM(ネム)」の追跡作業に追われている。JR渋谷駅近くにある本社は夜までこうこうと電気がついており、社員も巨額資金を取り返そうと総力戦を繰り広げているようだ。その陰でコインチェックを悩ませるもう1つの仮想通貨がある。北朝鮮との関係性を疑われている匿名コイン「Monero(モネロ)」だ。
時計を4カ月前に巻き戻す。2017年9月29日、金融庁は仮想通貨の取引所としてまず11社を同4月に施行した改正資金決済法に基づいて登録した。第1陣となる登録企業リストにはビットフライヤー(東京・港)のほか、テックビューロ(大阪市)やビットバンク(東京・品川)などの名前があったが、そこにコインチェックの名前は無かった。登録されなかった企業でも「審査を続けていれば運営は続けられる」(金融庁)ため、コインチェックは「みなし業者」として営業を続けた。
なぜ規模で1、2位を争うコインチェックに登録がおりなかったのか。金融庁とコインチェックのやりとりで引っかかった要因の1つが匿名コインの取り扱いだ。匿名コインとは送り手と受け手を匿名にした形で取引をおこなうことができる仮想通貨。取引時にデータをシャッフルするなどして送受信者を追跡できなくなる特徴がある。ビットコインはブロックチェーンにアドレスが残るが、匿名コインはマネーロンダリング(資金洗浄)や税金逃れに利用されやすい問題がある。
コインチェックはモネロ、Z(ジー)キャッシュ、ダッシュという3つの匿名コインを扱っている。このうちのモネロと北朝鮮の関係性が浮かび上がってきた。発端になったのは米サイバーセキュリティー会社エイリアンボルトが1月に公表した報告書だ。モネロの採掘コードを勝手にインストールし、採掘した通貨を北朝鮮の大学のサーバーに送る悪意のあるソフト(マルウエア)が見つかったという。
経済制裁を受けている北朝鮮に外貨獲得のルートをモネロが与えているとすれば、問題になる可能性がある。国際的にはフランスとドイツが3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で仮想通貨に関する規制案を共同提案する考えを表明しているが、最大の関心事はマネロン対策とされる。財務省の浅川雅嗣財務官は29日、「(仮想通貨が)議題となる可能性が高い。日本としてもきっちり対応していきたい」と語った。
金融庁としても「どんな通貨か調べているだけでなく、監視体制などを聞いている」(関係者)。ただ、コインチェックとしてはすぐに取り扱いをやめられない事情がある。情報サイト、コインマーケットキャップによれば、モネロの価格は30日午前11時30分時点で1モネロ=310ドル強で推移する。1月上旬の高値と比べると約35%下落しているものの、2016年末と比べたら約25倍の水準。時価総額は約49億ドルでランキング13位だ。「取り扱い中止と公言した瞬間に価格が下落するため、自ら引き金を引いて顧客から批判を受ける事態は避けたいだろう」とある仮想通貨取引所の社長は指摘する。
コインチェックの取り扱い仮想通貨数は13通貨と他の取引所と比較しても多めだ。かつてコインチェックの大塚雄介取締役は多くの種類の仮想通貨を扱うことについて「国内の取引所が扱わなくても個人投資家はKraken(クラーケン)などの海外の取引所に逃げるだけだ」と話していた。国内の投資家に簡単に投資できるインフラを提供したいとの純粋な思いだったのだろう。だが、今はこれが裏目になる。本音は世界規制で禁止にしてもらうことかもしれない。(関口慶太)