番傘川柳本社社則第三条に「本社は、川柳文学の研究、川柳の作句並びに普及を目的とし、水府理念を母胎として伝統、友愛、真実、平等及び前進を信条とする。」
次に、京都番傘川柳会会則第3条「この会は番傘川柳本社の趣旨に賛同し、本格川柳の向上発展を期すことを目的とする。」とある。
では水府理念を母胎とする本格川柳とは何か。
ここで川柳作家として、生きた父、服部孝太の遺品『川柳読本』(岸本水府著 1953年 創元社刊)を開いてみる。
水府は18~19頁に「本格川柳ということ」と題して、次のように書いている。
本格川柳―という言葉があります。これは誠に僭越ながら私の造った言葉で、必要があって昭和5年(1930)11月号の『番傘』のトビラに書いたことから始まっています。その前文は次の通りであります。
「伝統川柳―実にイヤな言葉である。誰がこんな名をつけた。伝統川柳に近代のおもいを加えた一句をモノする一党、それがどうして伝統だ。本格川柳、本格川柳、僕たちは本格川柳と呼ぼう。……私たちの川柳は伝統だけでない。伝統の―穿ち、軽味、滑稽の三要素を墨守するだけでない。その古川柳に導かれた川柳のよさをたたえながら、その上に、むしろそれ以外の近代的な感覚を自由にとり入れ、古川柳にはなかった物の感じ方、人生観を盛った一七音字の道を行くのだ。」
京番40年合同句集『東山』以来40年、今年は80年大会である。「本格川柳」の意味をいま考えている。
◎俳句と川柳の境界について
(平成21年2月31日「京大俳句」復刊準備句会より)
いまだ見ぬあなたに逢いたい春隣り 中島くっぱ
寒空のしぐれしぐれて傘の中 中村陽子
冬の虹ここにかけてよ今日は雨 大石高典
天狼は南国的な夢を見る 小嶋あきら
故郷の山そのままに父は逝き 大月健
冬空のカラスのように雇い止め 小川恭平
寒鴉俺とお前はあほの仲 中島くっぱ
特攻の勇士が残すシェリーの詩 服部泰夫
泣き止まぬ空をあやして冬景色 小嶋あきら
以上が川柳と俳句の境界にある句と感じた作品である。いずれも現代日本語の用法で簡潔に思いを表現している。
私が投句者の作品に細かく修辞句・助詞に思いを重ねたのも的確に17文字の中に表現したいという姿勢による。
番傘川柳の良き理解者である木津川計氏は常に川柳と狂句は違うということを力説しておられる。
奇をてらう作風も面白いが何を詠っているのか皆目分からない句には閉口する。作家のみ知る。これでは鑑賞の仕様がないと言わざるを得ない。
番傘川柳が目指す「水府理念を母胎にした本格川柳」とは誰にでも理解でき、しかも人生を詠い切る現代川柳であるに違いない。日本語の快い表現により、明確な作品を大いに期待したい。
最後に番傘川柳の岸本水府の代表作を挙げておきたい。
恋せよと薄桃色の花がさく
千日前肩を叩くと連れになり
口紅をすぼめて嘘をいったあと
友達はよいものと知る戎ばし
正面をむいてうれしい太郎冠者
頬かむりの中に日本一の顔
東京の中から江戸をみつけ出し
ぬぎすててうちが一番よいという
(毎日新聞京都柳壇選者)
「京大俳句」復刊準備会会報 1号(2009.11)所収
次に、京都番傘川柳会会則第3条「この会は番傘川柳本社の趣旨に賛同し、本格川柳の向上発展を期すことを目的とする。」とある。
では水府理念を母胎とする本格川柳とは何か。
ここで川柳作家として、生きた父、服部孝太の遺品『川柳読本』(岸本水府著 1953年 創元社刊)を開いてみる。
水府は18~19頁に「本格川柳ということ」と題して、次のように書いている。
本格川柳―という言葉があります。これは誠に僭越ながら私の造った言葉で、必要があって昭和5年(1930)11月号の『番傘』のトビラに書いたことから始まっています。その前文は次の通りであります。
「伝統川柳―実にイヤな言葉である。誰がこんな名をつけた。伝統川柳に近代のおもいを加えた一句をモノする一党、それがどうして伝統だ。本格川柳、本格川柳、僕たちは本格川柳と呼ぼう。……私たちの川柳は伝統だけでない。伝統の―穿ち、軽味、滑稽の三要素を墨守するだけでない。その古川柳に導かれた川柳のよさをたたえながら、その上に、むしろそれ以外の近代的な感覚を自由にとり入れ、古川柳にはなかった物の感じ方、人生観を盛った一七音字の道を行くのだ。」
京番40年合同句集『東山』以来40年、今年は80年大会である。「本格川柳」の意味をいま考えている。
◎俳句と川柳の境界について
(平成21年2月31日「京大俳句」復刊準備句会より)
いまだ見ぬあなたに逢いたい春隣り 中島くっぱ
寒空のしぐれしぐれて傘の中 中村陽子
冬の虹ここにかけてよ今日は雨 大石高典
天狼は南国的な夢を見る 小嶋あきら
故郷の山そのままに父は逝き 大月健
冬空のカラスのように雇い止め 小川恭平
寒鴉俺とお前はあほの仲 中島くっぱ
特攻の勇士が残すシェリーの詩 服部泰夫
泣き止まぬ空をあやして冬景色 小嶋あきら
以上が川柳と俳句の境界にある句と感じた作品である。いずれも現代日本語の用法で簡潔に思いを表現している。
私が投句者の作品に細かく修辞句・助詞に思いを重ねたのも的確に17文字の中に表現したいという姿勢による。
番傘川柳の良き理解者である木津川計氏は常に川柳と狂句は違うということを力説しておられる。
奇をてらう作風も面白いが何を詠っているのか皆目分からない句には閉口する。作家のみ知る。これでは鑑賞の仕様がないと言わざるを得ない。
番傘川柳が目指す「水府理念を母胎にした本格川柳」とは誰にでも理解でき、しかも人生を詠い切る現代川柳であるに違いない。日本語の快い表現により、明確な作品を大いに期待したい。
最後に番傘川柳の岸本水府の代表作を挙げておきたい。
恋せよと薄桃色の花がさく
千日前肩を叩くと連れになり
口紅をすぼめて嘘をいったあと
友達はよいものと知る戎ばし
正面をむいてうれしい太郎冠者
頬かむりの中に日本一の顔
東京の中から江戸をみつけ出し
ぬぎすててうちが一番よいという
(毎日新聞京都柳壇選者)
「京大俳句」復刊準備会会報 1号(2009.11)所収
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