京大俳句会 KYODAI HAIKU KAI

京都大学を拠点に活動している京大俳句会のオフィシャル・ブログです。

京大俳句会報の記事を公開してゆきます。

2011-05-31 20:53:14 | Weblog
京大俳句会報の記事を既刊号から順次公開してゆくことになりました。
まず、創刊号の記事をアップしました。関心のある方は、ご覧ください。

むかいのかっぱ+おいけのかっぱ

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本格川柳とは何か by 服部泰夫 (「京大俳句」復刊準備会会報 1号)

軍医野平椎霞の慟哭 by 西田もとつぐ(*) (「京大俳句」復刊準備会会報 1号)

父と飛ぶ by 有元高太 (「京大俳句」復刊準備会会報 1号)

寒 鴉 by 中島くっぱ (「京大俳句」復刊準備会会報 1号)

祖母を支え、変えた俳句 by 大石高典( 「京大俳句」復刊準句会報 1号)

『京大俳句』復刊に向けて by 大月健( 「京大俳句」復刊準句会報 1号)


(*)
関連論考1:キメラの国の俳句 ―満州国俳句史序論― by 西田もとつぐ
関連論考2:モダニズム俳句の系譜(正)―満州俳句史― by 西田もとつぐ
関連論考3: モダニズム俳句の系譜(続)―満州俳句史― by 西田もとつぐ

俳句甲子園 by きったん

2011-05-26 20:59:21 | Weblog
 大月さんより「俳句甲子園ってどんなの、一度皆に紹介してよ」とのことなので、喜んで説明させて頂きます。
 甲子園という名前が付いている以上、俳句で試合をするのですが、ルールは柔道の団体戦を思って貰うと分かり易い。一チーム五人が柔道のように先鋒・次鋒……と対戦します。まず先鋒どうしが、それまでは伏せていた句を互いに披講します。この時初めて相手チームの句を知ります。披講の後ただちに、一方のチームが相手チームの句に対して三分または五分の質疑を行ない、時間が来れば攻守を交代します。
 質疑は相手の句について、「この句はこういうことを詠もうとしているはずである、ならばここは不適である」「付きすぎている」「離れすぎている」「景がぶれる、定まらない」「季語が主役になっていない」「季語が合っていない」「このアイデアについては口語の方が良い、文語の方が良い」「リズムが悪い」「発想が古い」「発想が類型である」等々と批評するのが普通です。これに対して守備側は、「そうではない、こうこうだから、これで良い」とか「こうこうこうだから、その読みは浅い」とか、上手く理由を付けて、簡潔に返さねばなりません。答えるのは当の俳句の作者だけでなく、チームの誰が答えても構いません。したがって提出する句については、「ああ言われたら、こう言う」というのを、前もってチーム全体で研究しているのですが、それでも予想も付かない方向から、突っ込まれます。
 この質疑がディベートになって、選手を緊張させますし、突き方・返し方や、その際のパフォーマンスを見るのが観戦者の楽しみになります。
 全く相手の句の良さを認めず、あら探しばかりするような攻め方や、逆にここぞとばかり長々と自句解説をするような受け方は、審判にも聴衆にも嫌われ、そういうチームは良い成績を残すことはできません。
 例外はありますが、始めて出場した選手は前もって練習していても、喋る機会を捉えられず、先輩達が戦っているのを、呆然と見ているだけになります。
 さて勝敗の付け方ですが、柔道のように主審というのはありません。もちろん審判はいます。三名以上で奇数人数です。質疑終了後に審判は両チームにポイントします。このとき、作品ポイントといって作品の良さについて各チームに一〇点以下を与え、鑑賞ポイントといって批評や答の適切さについて、優れていたチームに三点以下を与え、合計点で勝敗を決めます。合計点が同じなら作品ポイントを優先するなどして、必ずどちらかが勝つようにします。質疑終了後に審判の採点表が集められ、行事(議事進行係りをそう呼んでいます)の合図で審判団が一斉に旗を上げ、勝敗を決っします。緊張の一瞬です。勝敗が決った後、緊張の緩むなか審判団の講評が続きます。この講評を聞くのも、聴衆の楽しみです。とりわけ松山で行われる全国大会の準決勝以上では、一五名ないしは一七名の著名な俳句作家達が審判となって講評するのですから、中々聞きごたえがあり、松山大会の楽しみの一つになっています。一昨年は金子兜太さんの評が聞けましたし、私個人は正木ゆうこさんの評を聞くのが楽しみです。
 得点の付け方で最も重要なのは、作品ポイントを付けるのが質疑の前ではなく、質疑の後でも良いという所です。解説を聞いていて、「なんや、そんな事を詠んでいたんか、それは聞かん方が良かったな」とか、逆に「良く分からんかったけど、そういう事を詠んだ句か、なるほどな」とか、質疑を聞いていて「最初読んだときは、そこまで考えて作った作品とは思わんかった」などが起ります。これは質疑の内容が作品の評価に影響を与えるということで、質疑は鑑賞ポイント三点以上の働きをしているのです。
 さて、こんな俳句甲子園について、「作品のケチの付け合いをしているだけやないか」と言う人がいます。確かに見た目には、「悪い」「いや良い」と言ってるだけです。しかし試合の前には、「良い作品とはどんなものか」「良い作品をどうしたら作れるのか」という、長時間にわたる高校生なりの研究活動があります。その背骨から出て来る「良い」「悪い」の言い合いだからこそ、「ケチの付け合いの質疑」が選手達、審判達、聴衆達の感動を生むのです。その真剣さが、次々に俳句甲子園に加わる若者を増やすのです。
 単なる揚げ足取りなど、見ていても一つも面白くない。国会中継で揚げ足取りをしているのを見ていて、どちらにも冷やかになるのと同じです。
 私は俳句よりも五行歌を専門にしている者ですが、俳句甲子園に提出する作品を作る一ヶ月前の句会ほど、「良い作品とはどんなか」という点に徹して議論しあう、そんな歌会はやったことが無い。一度、そんな歌会をやってみたい、うらやましい限りです。
 試合には公式戦もあれば楽しみの草試合もあります。京大俳句会でも、俳句甲子園タイプの試合をやってみて、俳句の試合が楽しいことを実感してみてはいかがですか。
 最後にこの俳句甲子園を産み出すにあたって、夏井いつき氏、松山青年会議所、松山市役所が甚大な働きをしたこと、大会を維持するにあたって上記三者とともに、俳句甲子園出場OBとOGが決定的な働きをしていること、そのOBとOG達が実際に日本の俳句会を担う存在になりつつあることを、お伝えしておきます。

「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収

俳句と色 (2) by 有元高太

2011-05-26 20:58:54 | Weblog
 日本人の自然に対する感性のすばらしさ、その一つを表すものが季語だったり色名なのでしょうね。
 今回は春をテーマに少しお話してみようと思います。
 春というと花の季節、俳句の世界では「花」と表すのは「桜」のことなのだとか、その桜の色「桜色」は江戸時代になってからの呼び名で、同じ色目でも平安時代には「桜」とだけ称していたようです。紅花の赤色色素だけで薄く染めたほんのりと赤い色をさしています。
 もう少し赤みが強くなると「なでしこいろ撫子色」と呼ばれる色になります。
 ほかにも春の花を表した色で「はねず朱華」という色があります。
 これは庭梅の花の色で、もともとは堅牢度の弱い色だったのではかない花の命を表す色の代表だったようです。
 そのため、少女たちの色とも言われていました。
 梅の花の色は「こうばい紅梅」「こきこうばい濃紅梅」「うすきこうばい薄紅梅」などがあります。これらは蕾みの頃が「薄紅梅」咲き始めが「紅梅」盛りの頃が「濃紅梅」と分けられていました。
 桃の花の色は「つきぞめ桃染」「桃色」などがあります。この二つの色は時代の違いからで「桃染」は飛鳥時代の頃よりある色で読みも古い読みがそのまま使われています。語源としては、桃の花の色は朱鷺の頬羽の色とよく似ているところから朱鷺の古名「つき」が使われるようになったといわれています。
 これらの色はすべて紅花を使い染め分けられています。
 たった一つの染料で染め分けていくにはそれだけしっかりと観察しその色を知っていないとできることではありません。
 
 そんな観察眼の色としての代表は「若苗色」「苗色」「若葉色」「萌黄」などではないでしょうか?
 二月の別名を「雪消月」「木芽月」「梅見月」「おぐさおいづき小草生月」などといいますが、これらは色の名前とも密接に関連しています。
 「雪消月」山の雪が徐々に解け始める時期を表していて立春の前、だんだんと木の芽が芽吹きはじめる「木芽月」立春の頃。この頃から田の準備を始めます。
 山の木々にひこばえ蘖が出はじめた時の若芽の色が「若苗色」、この色は元は稲の苗が出始めた頃の色という意味なのだそうです。
 この苗が田に植えられるようになる頃には「苗色」となります。その頃には山々には若葉が出揃い始め「若葉色」が目立ち始め、田の作業が始まる(水張りの頃)には「萌黄」となります。
 少しずつ変化する時間の経過を色は表しています。

 こんな色の季節を司る女神が季語となっています。
 「佐保姫」という女神さま。きっとこの女神の衣装は「桜」の春霞と「苗色」「萌黄」などで彩られた打掛などの重ねの衣装だったのでしょうね。

  佐保姫の萌葱の襲山薫る

「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収

「ゴジラの嘆き」 by 大石高典

2011-05-26 20:58:21 | Weblog
 カメルーンでの海外調査のために三月九日に出国し、十日夜にヤウンデ市に着いた翌朝、ホテルの従業員から十一日の東北・東日本大震災を知った。

 前兆は捉え難しよゆりかもめ 花谷希葦

 すぐに気になったのは、東北にいる友人や後輩の安否と、この地震が東海大地震につながるのではないかということであった。津波と、福島第一原発での爆発事故は、インターネットで知った。すぐに、自分の実家のある静岡県中部の浜岡原発を想起した。小学校五年の時に、母親の勤務する高校の新聞部の取材に相伴して、施設見学をさせてもらったことがある。

 爆弾処理にカフカさん産廃さん 高田銀次

 小学生の質問に、必死に原発の安全性を主張する青年職員の受け答えが印象的だった。「日本の原発は、安全です。東海地震が起こっても、戦闘機が原子炉に突っ込んでも大丈夫です。」と言っていたのを覚えている。

 空焦がすゴジラの嘆き熱帯夜 うらたじゅん

 東海地震が想定されたのと程ない時期に映画化された怪獣ゴジラ。そのゴジラが首都・東京を破壊するパワーを得るのは静岡県にある原子力発電所という筋書きになっている。どう見ても、浜岡原発のことであろう。

 百匹のザムザ目醒めて五月闇 田中浩一

 地震の後、後ろ髪を惹かれるような思いでカメルーンの調査地のドンゴ村に入った。みな、地震の事を知っていた。ラジオで聞いていたのである。ケロシン・ランプの灯りで、サルの肉をご馳走になりながら、日本はヤバいのではないか、帰らない方がいいのではないか、家族を森に呼び寄せた方がいいのではないか、と口々に言われた。

 秋刀魚食ひ真の自由を問ひ返す 大石まさこ

 「放射能汚染よりかは、貧困のほうがずっとマシ」とつぶやいた女の子の一言が頭にこびりついている。

「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収

選句と批評(第11~20回句会より選句) by 宮田源二

2011-05-26 20:57:38 | Weblog
木の葉舞う師走の昼に大ジョッキ  服部泰夫
 ◎師走はいそがしい。昼のビールはききますね。
幼き子が寝返りをうつ冬日向    うらたじゅん
 ◎かわいくて目をはなせないかわいさかな?
みな帰り宴の後の独り酒      坂本悠一
 ◎さみしー
冬星座一人の世界ほしいまま    辻本康博
 ◎ゆうえつ感ありますね
ウグイスの声にひかれて途中下車  山下おるふぇ
 ◎ウグイス鳴くと、聞き入ってしまいます。
木枯らしの通るを見たり酔いの果て 梶原竹明庵
 ◎歩き続けてバタンキュー
初日の出まだかまだかと寒さたえ  片山淳
 ◎寒くて待ちどしいでしょうね
春を待つ新芽の若き光みて  片山淳
 ◎春間近
梅咲きて暖き日に気は和む  平身亭腰折
 ◎きもちいいー
妻だけが飾る都の雛まつり  服部泰夫
 ◎夫は手伝えない
三月の風蹴っ飛ばし逆上がり  新谷亜紀
 ◎いきおいがありますね
木蓮のわずかに開き友が逝く  大月健
 ◎冬の終わり春の訪れ
夜桜やかなわぬ恋の独り酒  辻本康博
 ◎ものにできないかなー
ほっと咲きはっと零れる椿かな  梶原竹明庵
 ◎はっとする一瞬
待ちぼうけ梅雨もしたたるいい女  桝村美里
 ◎濡れるのいやーん。早くきて。
この猛暑自然発火してしまいそう  安藤栄司
 ◎暑くってボーウッ
子らがいぬ地蔵盆なりそこかしこ  安藤栄司
 ◎少子化
雲一つ無き朝入道雲の昼  藤田貞子
 ◎夏ですね
旅の果てコオロギ鳴くよ無人駅  山下おるふぇ
 ◎コオロギの出迎え
天高し書を売り払い旅に出る  うらたじゅん
 ◎日常からの脱出

だれにでもわかりやすい句が好きです。
私の好きな春の句。

 さまざまな事思い出す桜かな 松尾芭蕉


「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収

再生力。 by 新谷亜紀

2011-05-26 20:56:50 | Weblog
等号の上へ波線冬ぬくし        花谷希葦
メール読む「明日バラ園で逢いましょう」西田もとつぐ
黄泉からの初音はなやぐ老の坂     佐々木峻
薔薇咲いてふり向きざまのピカソの目  石動けいこ
ハンモックまだ約束もしてゐない    野田くみこ
夏空に僕の高度を上げてみよう     山口陽子
落し蓋とれ洛中の涼新た        石動けいこ
待ち合はす時間の中へ木の実降る    野田くみこ
林檎剥く私の指はリズミカル      宮本託志
凌霄花気鬱なる時天に咲く       大月健
初つばめ床屋の鏡を横切れり      中島くっぱ
たけのこにゲバラの帽子かぶせてみる  大石かっぱ
鞭のごと出でし真昼の青蜥蜴      四宮陽一
夏帽子有刺鉄線くぐり抜け       うらたじゅん
京大や日傘たたんで時計台       森てる
蓮の海泳いでゆくよローカル線     山下おるふぇ
糸底を綺麗にあらふ初秋かな      福田由美
病葉の音なく積もる無縁仏       辻本康博
手の上の目と髭笑ふだるま市      大石まさこ
吉田寮造反有理の落書あり       大石かっぱ


   再生力    

 「あんたは避難所生活を送ったことないやろ?」
 最近ほとんど臥せったままで、口を開くのも億劫がる九十歳の母が、ふと話し始めました。連日報じられている東日本大震災の惨状から、戦後旧満州で体験した地獄のような避難所生活を思い出したようです。
 当時母は、零下の収容所生活の中で、ほとんど飲まず食わずの着た切雀だったようですが、人々の並々ならぬ忍耐力と協力、そして俳句によって「生きる力」を得たと言います。当時の母の句を少しご紹介します。

  帝国が唯のにほんに暑き日に
  酷寒や男装しても子を負ふて
  月が出て死んでも胸に俘虜の文字
  友を焼き子を埋めし土鬼薊

 このように母を再生させた俳句を理解しようと私も句作を始めたわけですが、まだまだ奥深くて計り知れません。
 私は『京大俳句会』には「準備句会」の頃から参加してきましたが、句友の皆さんの「自由奔放」で瑞々しい俳句に刺激を受けています。前半十句は、そういった「京大俳句会」ならではの刺激的・感覚的、またユニークな表現の句を選びました。そして後半は、私の所属する『雉』の根幹とする「即物具象」「客観写生」に近い十句を選びました。
 自然の姿を清らかな心で凝視することで見えて来るものはやはり「生きる力」なのかもしれません。

「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収



気鬱な日が続く。 by 大月健

2011-05-26 20:55:58 | Weblog
核の冬天知る地知る海ぞ知る   高屋窓秋

 気鬱な日が続く。
 三月十一日の東日本大地震と津波は甚大な被害を東北地方の太平洋沿岸にもたらした。宮古栽培漁業センターで働く友人は無事だったが、職場は津波で消失したという。
 その想定外の地震と津波は福島第一原発を襲った。原子炉は停止したものの外部電源を失い冷却装置が作動しない。制御できなくなった原子炉は迷走する。一号機と三号機と四号機の水素爆発は建屋を破壊し「安心安全な原発」の幻想を微塵もなく砕いた。
 現在、放射線物質の濃度が高い福島第一原発から半径二〇キロ圏内は「警戒区域」に指定されている。原発事故直前までそこには二万七千世帯七万八千人の暮らしがあった。いまでも町の様子は変わらない。ただ人がいないだけだ。放射線物質は見えないだけに厄介だ。線量を示すシーベルトの数字を示されても現地の人は納得がいかないだろう。理不尽としかいいようがない。
 人の暮らしは人だけで成立しているわけではない。畜産農家にとって牛は生活源であり、一般家庭でもペットとして犬がいるし猫がいる。セキセイインコを飼っている人もいるかもしれない。人の暮らしはそういう動物と緊密な関係の中で成り立っている。人が避難すればいい、という問題ではない。人の暮らしはその場で成り立っている。出入りを遮断する「警戒区域」指定は僭越だと考える。
 「安心安全な原発」神話は崩れた。東海地震の震源域にある中部電力の浜岡原発は政府の意向で停止を余儀なくされた。エネルギー基本計画だった二〇三〇年に総発電量に占める原発の割合を五割(現在約三割)に高める計画も白紙状態になった。
 原発に対する警鐘を鳴らしてきた小出裕章氏(京大原子炉実験所)の「福島原発で何が起こっているのか」(森の映画社制作・二〇一一年三月二五日)を見た。チェルノブイリ原発事故は地球全域に何らかの影響を与え、「地球被爆」という言葉ができたという。福島第一原発はまだ原子炉格納容器の破壊にまでは至っていない。格納容器の破壊まで進むと放射線物質が大量に放出され被害の範囲はもっと拡大する。それだけは避けなければならない、と彼はいう。「チェルノブイリの悲劇は防ぎたいと警告を発してきたが、現実に日本で原発事故が起きるとは思わなかった。油断があったようです。悲しいです。」と小出氏はインタビューを結んでいた。
 福島第一原発の事故が発生してから二ヶ月が経過する。第一~三号機で早い時期にメルトダウン(炉心溶融)が生じていた、と東京電力が発表した。小出氏が憂慮した事態ではないか。建屋の地下は高濃度の汚染水で充満し、復旧作業の大きな障害になっているという。時間が経過すればするだけ不安が募り、放射能汚染は拡がっていく。
 気鬱な日はこれからも続く。 (大月健)


 高屋窓秋 一九一〇~一九九九。八八才。水原秋桜子に師事して『馬酔木』同人。新興俳句の先駆的存在。戦後は『天狼』『俳句評論』等の同人。一九九一年現代俳句協会大賞を受賞。句集に『白い夏野』『高屋窓秋俳句集成』』『高屋窓秋全句集』など。

「京大俳句会会報」 4号(2011.5)所収

京大俳句会会報 第4号(2011.5)

2011-05-26 09:31:23 | Weblog
京大俳句会会報 第4号 2011年5月

 核の冬天知る地知る海ぞ知る 高屋窓秋 (大月健)

 秀句館(第11~20回句会より選句)
  新谷亜紀 再生力
  宮田源二
  大石高典 放射能汚染よりかは、貧困のほうがずっとマシ

 俳句と色(2) 有元高太
 俳句甲子園 きったん

 茅花(俳句) 中島夜汽車


606-8501
京都市左京区吉田本町 
 京大人文研図書室大月気付 京大俳句会
メール kadu@bgarden.mbox.media.kyoto-u.ac.jp(中島)

         

第28回「京大俳句会」句会(2011.5.21)

2011-05-24 13:20:08 | Weblog
第28回京大俳句会句会 2011年5月21日 

6点句
げんげ田を一枚残し田水張る   和田悠 

4点句
旨酒の四条裏寺走り梅雨     中島夜汽車 

3点句
神震と塵の尊厳(おもたさ)や「能」舞台 熊村きしりん 
立夏にてワイン飲みほし夢語る  宮田源二 
おしろいの三つの笑顔地蔵尊   大月健 
空豆をむきつ身の上話しかな   福田由美 

2点句
E=mc(2)の方程式を恨む鮎   清水光雄 
山藤や追分あたり雨模様     福田由美 
少年の戻らぬ夜や椎の花     和田悠 
なんぢゃもんぢゃや白き花着け五月来る 福田由美 
遠き日の君の住む街若葉風    梅田郁子 
西サハラアッラーの眼(まなこ)は大きかり オイケノカッパ 
若葉こそ我が生誕の記憶なり   服部泰夫 

1点句
青大将帝都の子らは振り回し   服部泰夫 
未だ暮れぬ碧き天空春の月    藤田貞子 
青葉蔭バイロン抱きて眠りけり  服部泰夫 
何迷ふ道はここなり春曙 辻文江 
ほととぎす啼くや平城(ならやま)雨催ひ 中島夜汽車 
山笑ふ声天に満つ日もありぬ   藤田貞子 
春耕や岩で大の字小休止     藤田貞子 
好奇心騒ぎまぎれもない五月   西本真理 
有難や藤散る夕を涙(なんだ)せり 中島夜汽車 

無得点句
五月くるサラダに盛ろうかいっしょに泣こか 宮本武士 
母の日はいいなと思う父の愚痴  梶原竹明庵
しゃぼん玉虹色になり風に乗り  秋葉真紀子
バラが咲いたを口ずさむ大輪の薔薇 大月健 
葉桜の影淡くして踏みかねし   西本真理
葉桜やランチタイムはフレンチで 秋葉真紀子
遠足の前夜のごとし旅支度    安藤栄司
舌吸えば離別の青やリトマス紙  宮本武士
五月雨を聴くのも悪くない    宮本託志
花びらはやさしいハート万人に  大石まさこ
葉桜やもの皆全て輝けり     秋葉真紀子
うれしやな金のウロコの鯉幟   西本真理 
幼な子のつたなき歩み山笑ふ   大月健
行列をはつはつに見し祭かな   和田悠
ラ・メール海は少年青い性    宮本武士 
ベクレルの壁の向こうへ青嵐   西村元一