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恐怖日和 ~ホラー小説書いてます~

見よう見まねでホラー小説書いてます。
たまにグロ等閲覧注意あり

掌中恐怖 第十七話『花火の夜』

2019-04-12 12:18:29 | 掌中恐怖

花火の夜

 花火のできる空き地を求めて歩き回っていた僕たちはやっといい感じの原っぱを見つけた。
 近くに住居はなく、騒いでも見咎められることがなさそうな場所だ。ただ街灯もないので真っ暗闇だった。
 買い集めた花火セットの袋をスマホの明かりを照らしながら開け、各自思い思いの花火を取り出して火を点ける。
 色とりどりの火が噴き出し始めると辺りも仄かに明るくなった。
 うおぉぉと叫びながら花火を振り回す奴、残像を楽しむように円を描く奴、音と色の変化を座ってじっと見つめている奴とそれぞれの性格が出るような遊び方をしている。
 僕も大好きなねずみ花火を点け、足を跳ね上げてはしゃいでいた。
 ふと、漂う煙の向こうに白っぽい人影が見えたような気がして足を止めた。大人が注意しに来たのかとじっと目を凝らしたが、僕ら四人の他に誰もいない。次々と点けられていく花火の光で何度も確認したが、やっぱりいないのでほっと胸を撫で下ろし、形を変えて流れる煙がそう見えたんだと思った。
 だが、風に棚引く煙の中にまた人影が映った。
 それも一人や二人じゃない――
「噴水花火をつけるぞっ!」
「おうっ!」
 しゅうううと豪快に火が吹き上がる。
 みんな歓声を上げているが、周りを大勢の白い人影に囲まれていることに気付いていない。
 噴水花火が小さくなって消え、真っ暗闇になる。
「誰だよ。引っ張るなよぉ」
 という一人の声に続いて、みんなの凄まじい絶叫が闇を裂いた。


掌中恐怖 第十六話『隙間指』

2019-04-11 12:43:03 | 掌中恐怖

隙間指

 ふっと照明が消えた。リビングのソファで繕い物をしている時だ。
 暗くて何も見えなくなったが三十センチ先に襖が開く様に細い縦の光の筋が入った。もちろんそんなところに襖などない。
 その隙間から親指以外四本の指先が出て来た。何かを確かめるように上から下へ下から上へと移動させた後、わたしの目の高さで止まった。
 そう言えば母も隙間指を見たと聞いたことがある。
 怖くて持っていた針で人差し指を思い切り突いてやった。
 驚いたように指が引っ込み隙間が閉じると照明が点いた。

 あれが何だったのかわからないまま今の今まで忘れていたが、また目の前に隙間が開いた。
 だが今度はこっちの照明は消えず隙間の向こうが真っ暗だ。
 ああそういうことだったのね。
 指を揃えて隙間に刺し入れ上下に動かす。向こうのわたしはさぞ恐怖していることだろう。もうすぐ刺される針の痛さに構えようとしたが、指を挟む刃の感触に母の話の続きを思い出した。
 母は裁ちばさみでその指を切り取ったという。

掌中恐怖 第十五話『鳩』

2019-04-10 11:31:53 | 掌中恐怖



 ベランダにつがいの鳩が入ってきたので追い払った。姿は見なくなったが毎日フンは落ちている。
 おちょくられてるのかと頭に来ていた矢先、洗濯物にフンを落とされ怒りが頂点に達した。
 隠れて待ち伏せし、入って来たところを箒で思い切り振り払ってやった。急な脅しをかければもう来ないだろう。
 だが、まともに箒を当ててしまい一羽が死んだ。
 殺すつもりはなかったのに。
 残った一羽が丸い目で一部始終を見ていた。
 それからも鳩は来た。一羽が二羽になり三羽になり、今やベランダは鳩で埋め尽くされていた。
 大量のフンと抜けた羽毛で洗濯物や布団が干せず、臭いと鳴き声にも悩まされた。
 どこに行くにも付きまとわれるようになり外出もできない。
 近頃は家の中にまで入り込んで家具の上からわたしを見下ろしている。
 鳩の呪いだ。

 確かに妻は鳩を誤って殺してしまいました。ですがその後、鳩は来なくなり、ベランダには何もいません。
 いったい妻は何を見ているのか。
 罪の意識なのか、それとも本当に鳩の呪いなのか。

掌中恐怖 第十四話『渡り廊下』

2019-04-09 10:16:36 | 掌中恐怖

渡り廊下

 渡り廊下に幽霊が出る。
 とある温泉旅館の話だ。
 豪奢な新館の裏には旧館があり、現在そこは倉庫代わりになっている。
 渡り廊下は新館の裏手からその旧館に伸びていた。出入り口には従業員以外立ち入り禁止の張り紙をし、鍵までかけてあるのに、なぜか渡り廊下に出てしまう客がいるのだという。
 仲居頭の話では、幽霊は二十数年前、不倫の別れ話がもつれて首を吊った女なのだそうだ。
 お祓いしても除霊できなかったため新館まで建て直したが、今度は渡り廊下に出るようになったらしい。

 夫は到着した時からおかしかったとその熟年夫婦の妻は語った。
 サプライズしようとせっかく連れて来たのに、夫はすぐ帰りたがったという。
 説得して何とか押し留め、浴場に向かうまではよかったが、気付くと二人、暗い渡り廊下に立っていた。
 何もいないのに暗がりを指さし怯え泣き喚く夫は妻が止める間もなく引きずられるように旧館の闇に消えた。
 従業員総出で探すもどこにも見つからず、妻は今も途方に暮れているらしい。
 ただ、それ以降、渡り廊下に幽霊は出ない。

掌中恐怖 第十三話『古墓』

2019-04-08 11:36:08 | 掌中恐怖

古墓

 道路脇に木々の密集した一画があった。いつからあるのか、なぜそこだけ残っているのか、誰も知るものはなかった。
 祠も石碑もないため祀られた土地ではないと判断した役所は道路拡張の施工を建設会社に依頼した。
 作業員たちが木を伐採して土をほじくり返す。
 ショベルの先に硬いものが触れ、土中から古い墓が六基見つかった。
 その際、作業員の中に黒い煙が立ち上ったのを見たという者が数名いた。
 数日後、その者たちも含めた作業員全員が原因不明の高熱を出し、わけのわからないうわ言を言い続けた。
 建設会社の社長はすぐさま会社が氏子である神社に相談し、除霊、浄霊を行い、作業員たちを救った。
 その後、墓をきちんと祀ったその土地は忌み地として残されることが決定する。
 無事治まったかのように誰もが思った。
 だが、長い間そこに立っていた十数本の木々が製材され売りに出されていることは、騒ぎに紛れて誰一人気付いていない。