花宵道中 (新潮文庫) | |
宮木 あや子 | |
新潮社 |
江戸末期の吉原遊郭 そこで生きる女たちの儚い恋物語
恋物語とは言っても遊女の話
本気で男に惚れてしまったら仕事に気が入らなくなるから恋はご法度という吉原の中で 描かれるのは当然“忍ぶ恋”
市井の女性達のように好きな男と所帯を持つことはおろか 一緒に街中を歩くことすらままならない
決して結ばれることなんかない恋は 楽しいことよりも辛いことの方が多いくらいだろう
それでも 彼女達は恋をする
描かれるいくつもの恋は 読み進むうちに繋がり そこに至るまでの長く遠い道のりも明らかになっていく
3章の「青花牡丹」まで読むと 1章の「花宵道中」の背景が鮮やかに浮かび上がり さらに切なさが込み上げる
3章のラストは 母や姉 そして愛しいと思った女 誰一人守ることができなかった男の哀しみや辛さがあふれる
『柔らかな手のひらも、小さな身体も、花の咲くような笑顔も、何もかも今度こそ守ってやらなければならない。待っといてな。』
一番好きなのは「十六夜時雨」
絶対に男を好きになんかならないと固く心に決めていた八津と 髪結いの三弥吉の話
他の男に抱かれるための髪結いを 好いてる男にしてもらわなければならない
そして翌朝名残のある乱れた髪をまた結い上げてもらわなければならない
逢うたびに強くなっていく想いに抗えなかった八津 踏みとどまれなかった三弥吉
ふたりの心の葛藤と痛みはどれほどだろうと思う
人をひとり好きになり 相手もそれに応えてくれる
本来ならそれはとても幸せなことのはずなのに どうしてこうも切ないんだろうか
一番怖いのは 失うこと
たまらなく愛しい人と そして自分自身
そのどちらも失わないよう 懸命に生きる彼女達の姿に 心揺さぶられるのだろうと思う
◇◇◇
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