旅涯ての地―DOVE UN VIAGGIO TERMINA | |
坂東眞砂子 | |
角川書店 |
許せずにいることもある 忘れられずにいることだってたくさんある
見たくなかったものに限って 脳裏に焼きついて離れなかったりするのはホント困りもの
それでも今 笑って生きてられるのは
考えて 探して そのつど自分なりの答えを見つけてきたからだろうと思う
考えなくたって生きてはいけるだろう むしろ考えない方が楽だし
何も考えずに生きている人だって世の中にはたくさんいる
人は何のために生きているのか
地位や名声やお金を手にして 好きなだけ女を抱いて
世の男達が欲しがるすべてを手に入れても 心の底に横たわる物足りなさ
神を信じて 赦されることを信じて
教えや聖杯にしがみついても 救われない心に溜まる虚しさ
それはどうしてなのだろう
享楽的に生きる人でも
頑なに戒律を守り生きる人でも
どう生きようと 探し求めているものは たぶん同じ
同じものを求め 東の涯てへ西の涯てへと 終わらぬ旅を続けてる
いったい何を求めてるのか
この「旅涯ての地」の物語の主人公達も 何かを探し求め
生きるとはどういうことなのかを考え続ける
違う道筋をたどりながらも お互いに行き着いた答えは―
言葉を使わなくたって 物を介さなくたって
ただ会って触れるだけで 伝わるもの感じるものってのがある
私は 人との繋がりの中にそういうものを見つけていたいと思うし
私の中にあるそういうものを感じてほしいと思う
私が与えられるのはただそれだけで
わかる人には宝物でも わからない人にはきっと無用なんだろう
その価値がわからないなら どこかへ行って 自分の欲しいものを探せばいい
繋ぎとめたりはしない
顔や表情 声や言葉
そんなものは全部 じきに忘れ去られてしまうかもしれない
けれども ほんのひとときの心の安らぎは ずっと記憶の片隅に残り
くりかえし何度も何度も思い出してもらえるのだろうか
私のことはすぐに忘れても それだけは忘れないでいてほしいなと思う