碧空の果てに (カドカワ銀のさじシリーズ) | |
濱野 京子 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
のどかな小国ユイ自治領の領主の娘メイリンは 幼い頃から聡明闊達で 民たちにも慕われていた
ところが 「嫁して夫に従い子をなすのが女の幸せ」と父から強く縁談を勧められ反発するメイリンは 自分らしく生きられる場所を求めてユイ国を飛び出す
辿りついたのは 賢者の国シーハン
シーハンでは他国と異なり 民たち自らが選んだ議員と首長とが政を行い 町や人々は豊かで活気にあふれている
だが一見豊かに思えるシーハンでも 女性にはまだ政治や仕事に携わるような力がなかったり 大国アインスの武力による圧力が陰を落としていたり…
そこで暮らすメイリンはやがて 明晰な頭脳で国を治める若き首長ターリと出会う
姫君としての身分を捨てたメイリンは 足の不自由なターリの“足”となり従者として仕えることを決意
共に国を守り そして 男も女も小さな子も皆が自由に生きられる理想の国へと変えていく
はじめは頑なだったターリが どんなときも毅然とまっすぐ前を見つめるメイリンに惹かれ 徐々に心通わせあう
けれども 互いに想い合うようになったふたりが選ぶ道は―
美しい姫君として生きれば何不自由ない暮らしが約束されていたはずなのに それを捨て自分の道を探すメイリン
いろいろな迷いや戸惑いはある でもそれを心の内に秘め自分の思いに忠実に突き進む
まっすぐに前を見続ける彼女の姿はまぶしいくらいだ
知力や武力 美しさといった才は それを誇示して自己満足するために与えられたものじゃない
誰かのために使ってこそ光るもの
ドレスや宝飾で身を飾る女よりも 質素な従者服を着るメイリンの方が輝いて見えるのは 至極当然のことかもしれない
好きだなぁ メイリン
ただ単純に好きというよりも こうありたいって感じ
無理だけど(苦笑)
だからこそ まぶしいくらいに魅力的に思えるのかもしれない
『互いをじっと見つめるのも愛かもしれない。しかし、遥か遠くを見つめる目線を重ねていく、そんな愛もあっていいのではないかな』
そんなふうに同じ想いで繋がったふたりには きっとなにものも敵わないんだなと羨ましく思う
『あなたはあなたでいればよいのです』
敵わないけど 私には私の在りようがあるならそれでいい
それなのに そう思う自分の在りようのあまりの軽さに時々言いようもなく悲しくなる
メイリンのようにはなれない それでも探すのをやめられないんだ