愛の年代記 (新潮文庫) | |
塩野七生 | |
新潮社 |
中世末期からルネサンス期 激動のイタリアで 激しい恋に身を焦がしたさまざまな女性達の生涯を描いた短編集
男性を描くのが上手な作家さんというイメージがあったけど 女性も上手い
この本に描かれる女性達もみなひたむきで 儚いようでいて強く美しく魅力的
どんな障害があり どんな過酷な状況でも恋をすることをやめない
いつの時代も女は同じだなと思う
哀しい最期にもかかわらず
女性達はみな 愛されている間は 満たされていてとても幸せそう
自分の中が空洞のような気がして
まるでうろの空いた丸太にでもなってしまったようで
鏡を見て自分が人の形をしてることを確かめてみる
ちゃんと 目も口も頬もある 肩も腕も指も 髪もある
なのに
どうしていつも そのどれにもろくに触れてもくれないんだろう
触れるどころか 顔すらほとんど見ようともしない
見てるのはいつも背中だ
なぜ そこにいる私の目を見てくれないんだろう
私はいったい何に見えてるんだろう 人の形に映ってないんだろうか
私を見てないなら どこを見てる? 何を見てる?
目の前の私の背中の向こうに 誰を見てるんだろう