桜宵 (講談社文庫)北森 鴻講談社このアイテムの詳細を見る |
「花の下にて春死なむ」に続く 香菜里屋シリーズ2作目
前作と同じく 香菜里屋というビアバーのマスター工藤が 客が持ち込む謎を解いていく
5つの話からなる連作ミステリー
そこにあるのは さまざまな人の強い思い
子を思う親の気持ち
年に一度だけ会える女性への思い
夫を思う妻の本心
そして 嫉妬や執着や悪意 歪んだ思い
いろんなもんを抱えて 危うい均衡を保ちながら生きてて
ときに 思いの強さにバランスを崩して転がり落ちることがある
そうして残り増幅された悪意は 人を蝕んでく
でも
歪みきってる人の心を目の当たりにしても
それでも工藤は人間ってもんを信じてる
心の中全部が悪意で満ちてて真っ黒なわけがない
『人の悪意をそこまで認めたくはない』
と そう穏やかに信じてる
裏切られたり失くしたりしても大丈夫なように 普通はどこか逃げ道を作ってしまうもんだと思うけど
人を心底信じられるというのもひとつの才能だなと思う
印象に残るのは表題作の「桜宵」
御衣黄という薄緑色の桜の樹がある
年に一度満開の頃にやってくる女性に心惹かれ 同時期に訪れて 逢って話をするようになった神崎
その後しばらくして彼は病死した妻の遺品から手紙を見つける
『香菜里屋というバーをたずねてみてください。最後のプレゼントを用意しておきました』
最後のプレゼントだという手紙や桜飯など手の込んだ妻の演出
すべてが繋がって 手紙の意味と妻の真意が見えてくると 切ないような温かいような不思議な気持ちになる
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http://www.bk1.jp/review/0000479026
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