弁理士近藤充紀のちまちま中間手続45
拒絶理由 新規性・進歩性
引用文献1には、醤油粕を脱水処理した後、非酸化性雰囲気中で300~500℃で焼成して炭化処理し、得られた醤油粕炭化物を熱水抽出処理して食塩分を溶出せしめ、これを固液分離して高炭素含有固形物と濃厚食塩溶液とを分離回収することからなる醤油粕の処理方法が記載され、醤油粕は、脱水処理した後ペレット化すること、回収された前記高炭素含有固形物は吸着剤等として、濃厚食塩溶液は精製食塩原料として、それぞれ利用することが記載されている(特許請求の範囲、段落〔0009〕~〔0010〕、補正された段落〔0012〕~〔0 014〕,〔0018〕、段落〔0019〕~〔0021〕,〔0026〕)。
引用文献2には、醤油粕等の食品粕を400~1000℃で乾留し、得られた炭を水洗して脱塩し、ついで、800~1300℃で賦活化処理して脱塩活性炭とすることからなる有用炭を製造する方法が記載され、脱塩処理後の水は清澄、無臭で、かつ、COD値及びBOD値の低いものであることが記載されている(特許請求の範囲、段落〔0001〕,〔0011〕~〔0019〕,〔0025〕~〔0040〕)。
*請求項1について
引用文献1に記載の第2の発明(請求項3、段落〔0010〕)において、「ペレット状醤油粕を金属製円筒体に耐火レンガを内装した移動式炭化炉に装入し、無酸素雰囲気中で炭化焼成し、ペレット状炭化物とした炭化物はポーラス状となり、そのまま抽出できる。得られたペレット状炭化物を直火式和釜に装入し、該ペレット状炭化物の約1.5倍容量の水を加え、加熱して最高95℃まで昇温して熱水抽出処理することにより食塩分を溶出させた後、放冷し、清澄な上澄液を分離回収し、更に小量の残液を含むペレットをしぼり袋等により加圧脱液し、残余の食塩溶液を分離回収する。係る操作において、炭化ペレットはその組織が微細な多孔性(連続)のため、水切れが良く、易ろ過性となることは本発明の技術的特徴の一つである。」(段落〔0013〕)と説明されていることからみて、ペレットの状態のままの炭化物であっても、抽出は十分に行うことができることが看取されるから、塩分をより効率的に除くために、塩分を溶出する前にペレット状炭化物を粒径1mm以下に粉砕しておくことは必要に応じ適宜になし得る程度のことと認められる。
また、その第1の発明(請求項1、段落〔0012〕)は、ケーキ状醤油粕をロータリーキルン等の回転炉方式の炭化装置により非酸化性雰囲気中で焼成して炭化し、微粉状炭化物とする(粒径1mm以下に粉砕した状態の炭化物とすることに相当するものと認められる。)ことができるのであるから、第2の発明の場合のようにベレット化することなく、粒径1mm以下に粉砕した状態の炭化物を得ることが可能であるものと推認される。
引用文献2には、脱塩処理前の炭化物の粒径については明記されていないものの、段落〔0021〕に「用意した醤油粕を乾留炉10内に投入し、蓋12をして密閉した後、管状電気炉などの加熱体14により炉の加熱を開始し、炉全体を所定の温度で加熱する。原料26を投入し、加熱体14のスイッチを入れた後、攪拌機20を始動する。このときの攪拌速度は原料が均一に混合できればいかなる速度でもよいが、通常50rpm以下が好ましい。」と説明され、図7に示される乾留炉で強力な撹拌下に炭化されるものであることからみて、粒径1mm以下の微粉状炭化物を得ることができるものと推認される。
意見書
そこで請求項1~6を削除し、元の請求項7を新請求項1とした。また、新請求項1において、冒頭部の「一端部に粕入口」を「一端部に被炭化物入口」に補正し、「粕を撹拌下に」を「被炭化物を撹拌下に」に補正した。
上記補正の根拠は、同請求項に「他端部に炭化物出口を有する横倒円筒状の炭化炉本体」とあり、図2~7に仕込物が炭化炉に仕込まれるフローが示されていることから、該入口に仕込まれるのは被炭化物であることが自明であるからである。
拒絶理由 17条の2第3項
平成18年5月31日付け手続補正書手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、補正前の請求項7に係る発明の「醤油粕の炭化装置」の記載を「被炭化物の炭化装置」に補正をしたものと認められる。
しかし、当初明細書には、炭化装置により処理する被処理物としては醤油粕が開示されているのみで、その他の被処理物一般(被炭化物)に対しても該炭化装置を使用することができることについては記載することがなく、また明細書の記載から自明であるとも認められない。
したがって、上記補正を含む上記手続補正書は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
補正書
登録
拒絶理由の内容を鑑みて、方法のクレームを断念して、装置クレームで権利化。方法と装置の両方でクレーム作っておいたことが功を奏したかたち
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